ショッピング

「それであっき〜の服を買うのはど〜するし?」

「そう言えばそうね。晶はどんな服が着たい?それに予算は?」

「えっと、スカートは勘弁してもらえると嬉しいかな」

「あ、晶ちゃんのお母さんから最低1つはスカートでコーディネートするように頼まれてるよ!」

「マジで⁉︎」

「うん!ほら、これ」

朝倉さんはそう言ってスマホのメッセージアプリ『ニャイン』を起動してみんなに見せる

「本当だ……」

「えっと日常使いが4セット、よそ行き用に1セット。肌着やブラ、ショーツも4、5枚ずつ。最低1組は晶自身で選ぶ事と、これは大変ね……」

「あ〜しらが手伝ってあげないと無理っぽいし」

「まあ元々はそのために朝倉さんに買い物に付き合ってもらった訳だしね。予算はこれだけ」

取り出した封筒を見て3人の動きが止まる

「あっき〜の家ってお金持ちだったりするし?」

「この額って高校生の使う金額じゃ無いわね」

「けっこういい物で揃えても余りそうだよ〜」

「いや、研究協力金で一時的なものだから」

「それってTS病の?」

「そう。あれこれ調べたり薬の治験とかもあったから」

「な〜る。納得したし」

「まあ、それは置いといて買い物の話に戻りましょう。まずは晶の好みを聞きたいんだけど、何かある?」

「うーん、正直良くわからないんだよね。元々そこまで興味があったわけでもないし」

「そうなると困ったわね」

「とりあえずサイズさえ合ってればなんとでもなる肌着や下着から買おっか?その後なら多少時間かけても大丈夫だと思うし」

「そうね。晶もそれでいい?」

「あ、うん。お願いします」

「ならさっそく行こ〜」



3人に連れられショッピングモール内の婦人服売り場に向かう。

「さてまずは下着ね。サイズを測ってもらいましょう」

店員さんに話しかけて採寸してもらうと1サイズ大きくなっていた

「半月ほどなのにサイズが上がってる?」

「測り方のせいじゃないかしら?ワンサイズくらいなら変わる事多いわよ。晶が測ってもらったのって病院でしょ?そもそも測る目的が違うわ」

「なるほど。ちなみにどれ位変わるもの?」

「個人差はあるけど大体2〜5センチぐらい上がる事が多いらしいわね」

「そうなんだ……」

「あ、あと聞き忘れてたけど生理用品とかサニタリーショーツとかは大丈夫?」

「それは大丈夫。それは今月の初めに揃えたから」

「なら次は服ね。晶はどんなタイプにしたい?」

「私あんまりオシャレには詳しくないけど、動きやすい方がいいかな。可愛い系はまだ抵抗が……」

「わかった。動きやすさ重視で探そうか」

「晶ちゃん可愛い系も似合うと思うけどな。あ、スカートのコーディネートは可愛いのにしようよ!」

「あ〜しも賛成だし」

「あ、はい……」

結局、俺の意見はあまり取り入れられず朝倉さんの趣味の服装に寄る事になった。




「これで3組に他所行き用のも決まったわね。それじゃあ最後、晶が1人で選ぶのはどうする?」

「えっと、みんなに任せちゃダメ?」

「それはダメだよおばさまの言いつけだし。あ、ミニスカでフリフリのだったら選んであげる❤️」

「朝倉さん、それは流石に……」

「だったら頑張って選んで」

「はぁ……頑張ります」

こうして俺は1人で自分の為の服を選ぶ事となった。

とは言えこれといってこだわりがある訳じゃない。

今着ている服だって女体化した後に母さんが買ってきた物だ。

あてどもなく店内をうろついてると1着のサマーパーカーに目が留まった。

夏らしく淡い色合いの生地で作られたそのパーカーは、少し丈が短めだが今の自分なら問題なく着れるだろう。

手に取って広げてみると袖口や裾にレースがあしらわれていて、可愛らしさの中に上品さが感じられるデザインになっていた。

「これ、良いかも……」

身体に合わせて鏡を見る。

「うん、悪く無いかな?」

その時背後から声をかけられた。

「お客様何かお探しですか?宜しければご案内しますが」

振り返るとそこには先程の店員さんが立っていた。

「えっと、これに合わせたいのですが」

そう言って手に持っていたサマーパーカーを見せる。

「こちらですね!とても良くお似合いだと思います。それでしたらこちらは如何でしょうか?」

店員さんのおすすめの中から最終的に選んだのは、デニムのショートパンツにボーダーのキャミソールだった。

試着室を借りて着替えてカーテンを開けると3人が待ち構えていた。

「お〜いい感じだし」

「うん、すごくいいよ晶ちゃん!」

「これはちょっと反則ね。予想以上よ」

「ありがとうございます。ならこれで」

会計を済ませて店を出る。

時刻はもうすぐ18時になろうかとしていて空はオレンジ色に染まっていた。

「さて、それじゃあそろそろ帰りましょうか」

「そうね。ところで晶、それ持って帰れるの?」

「あっ……」

「あ〜、そう言えばそうだったし」

そうなのだ服が5組に肌着や下着などを買い込んだおかげで大量の荷物になっていた、ここまでは皆んなが手分けして持ってくれていたのだが1人でとなると厳しそうだった。

「何処かでダンボールの箱を貰って送った方がいいかな」

「あ、それなら私が晶ちゃんの家まで一緒に行くよ。2人なら持って行けるし」

「大丈夫?結構重いけど」

「平気だよ。それにおばさまにも今日の顛末を報告しなきゃだし」

「顛末って朝の事?母さんも知ってたの⁉︎」

「それはそうだよ。晶ちゃんの為にと思っても傷つけるような事勝手にやっちゃうわけにはいかないよ」

そう言われればもっともな話だ

「そう言えばいつの間に母さんとニャイン交換してたんだ?」

「初めて会った日だよ。晶ちゃんが倒れた日に送って行ったじゃない?その後でおばさまが駅まで送ってくれたんだけど、その時に。学校で何か有ったら教えてほしいって」

「あ〜、そういう事ね」

確かにあの時の母さんは少し様子がおかしかった気がしないでもない。

生理の辛さで気にしてられなかったが

「あっき〜、あ〜しらともニャイン交換するし」

「え?良いの?」

「もちろんよ、それとも晶に何か問題ある?」

「ううん、そんな事は全然無いよ。むしろ嬉しいくらい」

「やったし♪」

「ふぅ、これで連絡も取りやすくなるわね」

「うん、ありがとう」

「次は始業式の日かしら?」

「楽しみにしてるよ」

「あ〜しもだし」

「私もです!」

「はい!」

こうして俺は新しい友達を得て、女性として生きる不安は少し薄くなった

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