第6話 サヨナラ
「ふぁ~……ん~! 良く寝たぁ」
「大丈夫?」
ナタリに膝枕されていた。マシュマロ的な太股。今までに感じたことのない柔らかさと良い匂いが、首から脳へと伝播する。この状況に軽く眩暈がした。
「ふぁ~~~」
「そのイケない手を股の間からどけないとひっぱたくよ?」
「………………」
「今は、ダメ」
まだ夢の続きを見ているのか。
それともーーーーー。
また急に眠くなり、目を開けていられなくなった。
ナタリが、両手を叩く。
「ハクシのこと、大好き。………本当に好き。だからね、サヨナラしなくちゃいけないの。お姉ちゃんと取引したから。これで幸せになれるよ」
両目から、涙を流すナタリ。
この小さな手だけは絶対に離しちゃいけない。だけど力が抜け、何も考えられなくなった。
『今まで、ごめんね』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
天国に戻って、ちょうど三ヶ月が経った。死神の仕事は相変わらず忙しくて、でもその忙しさのお陰で余計なことを考えずに済んだ。
「ねぇ、ナタリ。アナタが戻ってくれて本当に嬉しいわ。………下界に追放なんかしてごめんね。命令違反したアナタが、許せなかったの」
「いえ、謝らないで下さい。全部、私が悪いので」
「うんうん。まぁ、そうね。あっ! あの人間も結構イジメちゃったからさ、彼には特別に彼女をプレゼントしたから。人間の中で一番彼と相性の良い女をね」
「ありがとうございます」
「約束通り、もう二度と彼には手出ししないから大丈夫よ。それにさぁ、アナタにはあんな人間よりもっと素敵で優秀な者を私が選んであげるって。だから、寂しくないよ。心配しないで」
お姉ちゃんの汚れのない白い手で優しく頭を撫でられた。
でもーーーー。
彼とは、違う。
全然………違う…よ。ポロポロと目から何かがこぼれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます