私の嫌いな人
私は彼女が嫌いだ。何故かと問われれば、彼女の手が、あまりにも美しすぎるからだった。
たとえば彼女がピアノを奏でるとき、力強くも柔らかく、その指が盤上を踊る。真っ白の骨だけのような指が、折れることも恐れず、打ち続けている。たとえば食卓に上がった調味料に手を伸ばすとき、彼女の細い指を、小指から順に容器に絡ませてゆく。知らない生物かのような動きに息を飲んでしまう。たとえばスマートフォンを見ているとき、繊細なものでも触るようにつうっと画面をなぞる。日常生活の一部であるはずなのにいやに官能的で、目が逸らせない。
だから私は、彼女の指に絡め取られてしまわぬように、彼女のことが嫌いなのだと言い聞かせ続けている。
お題:指 300字
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