その女、陶酔にて

 もう終わった、俺の人生はここまで。確かにあのでけえ海賊から酒は盗んだが、こんなにキレられるとは思ってなかった。眉間に突きつけられた酒くせえ銃口に、吸われるようにより目になる。冷や汗が首を伝う。こんな人生でも、幕を閉じるのはイヤだった。

 そのとき酒場の窓が割れ、誰かが突っ込んできた。そいつは身につけた布をひらひらと舞わせながら、海賊の顔面を蹴り上げた。ふわっと香るのは海。衣服の赤と黒が遅れて踊る。

「お前さんたち、どっちも弱っちいねぇ」女はスカートを直しながら、うっとりとした顔を浮かべる。「助けてやったんだ、感謝しな」

 女は俺に手を差し伸べながら、ナルシズムすら感じる笑みを向けた。

「一緒に来るか?」


お題:酔う 299文字

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