サウナを愛でる
中途半端に寒い我が町。
土地柄のせいばかりではないが、私は物心ついた頃から『しもやけ』に悩まされてきた。足の指という指が『ぶんず色』に変色し、まるで壊死しているかのようになる。この『ぶんず色』とは何ぞや?ということでございますが、なんとなくこんな色だろうとこの辺りの人々が普通に使っているのですが、実際のところ私にもよくわかりません。もしかしたら藤井風が言うところの『どどめ色』と同じ色かもしれませんな。
寒い日は感覚がなくなり、少し温まってくると痒く、そしてまた度を超してくるとメッツェンで足の指を削ぎ落としたいと思うほどの憎きしもやけ。マイカーのタイヤ交換を考え始める「勤労感謝の日」前後に発症し、今まさに現在進行形で私を苦しめている『しもやけ野郎』は、来月の「春分の日」位にようやく退散していく。いけ好かねぇしもやけ野郎に好まれてもねぇ…なんとも…トホホでござる。
小学生だったあの頃に遡ってみるとしよう。そうです。『すかんぽ』を引っこ抜いて振り回したり桑の実を食べて口を真っ赤にしたりと、昭和の子供らしくダラダラと家路についていた純粋無垢な幼き頃のこと。
ど田舎というわけでもないし県内ではソコソコの中心地。しかも最初の東京オリンピックよりも10年ほど経っているというのに、私が通っていた学校は入学当初石炭ストーブを使用していた。
石炭小屋に石炭を取りに行くのも、アルミのデカいやかんに水を汲んでくるのも、給食前にはクソ重い瓶の牛乳を運んできてストーブの側に並べるのも全部子供の仕事だった。
おそらくロクに殺菌もしていないであろう牛乳瓶の臭さといったらマジキモかったな。それを1年生であっても容赦なくやらされていたのだから、今になって思うとかなり過酷な思い出である。
その間、担任や用務員(もっと前だと小使いさんと呼ばれていた時代もあったそうな?もはや差別的名称じゃないか!)は何をしていたのか。職員室でバカバカとタバコでも吸っていたのか。コピー機のない時代でせっせとプリント用のガリ版でも刷っていたのだろうか。今さらどうでもいいが後者であったと無理矢理信じるとしよう。
そういえば、児童の机は3人ひとセットでパカッとフタを持ち上げ学習道具を収納するタイプのものだった気がする。元々の色なのか手垢なのか黒くテカった小汚ない机だったな。もしも『東京ラブストーリー』のようにあの机にカンチ&リカと相合い傘を刻んだ とて、きっと誰も気づかないだろう。
小学生時代のことをこうして改めて振り返ってみるて「読み書きソロバン」まるで寺子屋の話をしているようである。恐るべし高度経済成長期に生まれた私。
あっ、しもやけの話に戻ります。
寒い日に石炭ストーブをガンガンと焚かれてしまうと、足の指ばかりではなく当時は手の指や耳にまでできていた『しもやけ野郎』が、痛さから痒さに変身し私の学習意欲を奪ってゆくのですよ。ここは強調すべきところであるのですがADHDのはしりだったわけではありません、集中力を吸い取られ授業内容が全く入ってこなくなってしまうという、当時のしもやけ児童あるあるです。
しもやけは、患部を熱いお湯と冷たい水に交互に浸けることで治りを早めるらしい(先人曰く)。見かねた先生が、ストーブの上でチンチンに沸いていたお湯をタライにあけ水でうすめたものと、水呑場から汲んできたバケツの水を、私の机の下に置いてくれるという光景が日常となっていったのです。
あの時既におばあちゃん先生だったK先生は、もうこの世の人ではなくなっているかもしれない。この先もしもあの世でお目にかかれたなら、必ずやあの頃の“特別扱い”のお礼を申し上げたいと思う。
ただ…
お湯も水も養命酒も命の母さえも、何ひとつ効かなかったことは敢えて言わないでおこうと思う。
【エピソードタイトル解説】
いまやサウナブームですな。
ブームに乗っかっているわけではないけれど、サウナには私もよく行っている。
もちろん熱波師もいなければ2時間ワンコインの市民いこいのサウナである。お暇なご年配主婦族がいない土日の夜間がオススメ。
ラーメンを食べて鼻以外の部位に汗をかいたことなど生まれてこのかた一度もなく、新陳代謝がまったくもって良くないG.Gの私。肝心の足先に熱伝導されることもなけれぱ、サウナでととのったことも尚更ないのである。
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