兄弟W婚☆

最近の結婚式というものはどんなだろう。全く見当がつかないが、できることならやり直したいぜ結婚披露宴。

まさか、この歳でというわけではありませんよ。あの日あの時に戻っての話です。おや?そうなると別れた夫とやり直したいみたいにならないか?ややややや違う。それは絶対にない。やり直したいわけがない。

あの男が元夫だの元旦那などと私の「元」になるなど絶対に許さない。私はあの男を記憶から抹消して生きているのだから。なので当然私があの男の元妻でも元嫁であるはずもない。

自分の写真がほとんど残っていないわけで、間違ってもあの男の写真がないのは当たり前なのだが、もしかしたら向こうは大切に持っているやもしれない…そう考えると背筋がゾッとする。私があの世へ行く前には、お式の最後に撮った親戚一同の集合写真やら、友人宅の思い出アルバムに紛れ込んでいるであろうおマヌケ面の披露宴写真を、一枚残らず回収してから死にたいと願う。

キャンドルサービスの入場曲が実は別れの曲だったこと。新婚旅行でバスタブにつかったら指輪が真っぷたつに割れたこと。一年後には式場が潰れていたこと。そんなコントみたいなことが実際に我が身に降りかかるとは考えもしなかったけれど、今となってみれば全てが笑い話である。

思い起こせば、実母から逃げ出したい一心で家を出ては連れ戻される日々を繰り返していた中学時代。卒業文集で「医者」だの「野球選手」だの「学校の先生」などとクラスのみんなが普通に将来の夢を綴っている中『優しいお母さんになる』と、ある意味実母への復讐ともとれる決意表明を書き残した14歳の私。限りなく阿呆といえるだろう。

もはや高校にすら行く気がなくくすぶっていた私を、担任どころか3学年の全ての教師が代わるがわる説得しにやってきた頃のことを、まるでドラマのような話だと我ながら思うことがある。

根負けしたというかなんというか、娘でもない私にそこまで必死になってくれたことが素直に嬉しかった。受験勉強もしないまま倍率1.75倍の県立高校にすんなり合格した私を、担任たちは今度は泣きながら喜んでくれた。

教師という立場上のことだとはわかっていても、愛着障害だった私にとっては、初めて愛情というものに触れた気がしていた。だから今でもそれを指針として頑張れているのかもとしれないと思う今日この頃。

はて、結婚式の話からどうして中学時代の話になってしまったのか。

ついでに言うと、実母は“できて当たり前”という考えの持ち主であり、受験も資格も免許も無事通過し就職できたことを喜ぶわけもなく、それどころか終いには親に感謝しろとまで言ってくる有り様である。そんなわけで実母の口から「おめでとう」と言われたことなど一度たりともない。ほらみろ、言った通りだ、予知夢だなどと銀歯を光らせたデカい口で大口を叩いてきた実母。アンタは宜保愛子か。

結論からいって、私の最大の失敗は『親ガチャ』であろう。

幼い頃に三つ編みを編んでもらったり、大丈夫!大丈夫!と抱きしめてもらっていたなら、私はどんな人生を送れたのだろう。結婚相手のガチャもうまく引き当てられたのだろうか。いやいやそれはまた別の話だな。

【エピソードタイトル解説】

JACのアクションさながらの波乱な人生を送られたお父様も、さぞかし喜んでおられることでしょう。

ああ…他人の幸せを素直に受け止められる人間で良かった。

結婚…いい響きです。

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