第19話

「はぁぁぁぁぁっ!!!!!」


「ヒャーハハハハ!!!!」


 2人の拳が、それぞれの顔面にめり込んだ。


 その衝撃で、お互いが吹っ飛ぶ。


 カナが地面に着地し、口の中を切った際に出た血を手で拭うと、空中で回し蹴りを放った。


「真空刃……!!」


 カナの放った回し蹴りからカマイタチが出現し、カリンに向かって放たれる。


「ヒャハハハハ!!!!効くかよ!!んなもん!!!!」


 カリンは手のひらに炎の玉を出現させると、カナに向かって放つ。


 炎の玉はカナのカマイタチを打ち破り、彼女の身体に命中した。


 カナが悲鳴を上げながら倒れる。


 焼けるような痛みだ。


「ヒャハハハハ!!!!!!ファイター2人ぶっ殺したからなぁ!?テメェなんかアウトオブ眼中なんだよ!!バーカ!!!!」


 高笑いを浮かべながら、カリンはカナに近づくと、彼女の腹部に向かって拳を放った。


 カナの口から息が漏れる。


「かはっ……!!」


「ヒャハハハハ!!!!死ね!!そのまま死ね!!!」


 何度も何度もカリンはカナの腹部を殴った。


 殴られる度にカナは胃液を吐く。


 胃液はだんだんと赤く染まっていき、ついには血を吐き始めた。


「オラァ!!さっさと死ね!!!!」


 カリンに何度も殴られ、意識が遠のく。


(ダメだ……私……)


 カナが自らの敗北を察した、その時


 一筋の光が、カナに向かって飛んできた。


 光はカリンをカナから離すように妨害すると、カナの手の中に収まる。


「チッ!!またあのカートリッジかよ!!」


 カリンが不機嫌そうにそう言う。


 カナがカートリッジを握りしめた時、声が聞こえてきた。


「あんたはまだ、死んじゃダメだ。」


 それは、ユウの声だった。


「あんたの願いは、フタバや先パイの願いでもある。

 願いも何も無い、ただ暴れるだけのあいつに、負けちゃダメだ。


 私は、前へ進む力が欲しかった。興味が無いからと言って逃げたりしないで、前へ、前へと……進む力。外の世界に出る勇気が欲しかった。

 でも、ファイターになって、色んな人に出会えて……いつしか私の願いは叶っていた。


 今度は……あんたが叶える番。私が……私だけじゃない。フタバも、先パイも着いているから……。」


「ユウ…………。」


 カナはカートリッジを構える。


「私は……みんなのためにも……勝つ……!!『変身!!』」


《Change》


 カナのバトルスーツに金色のアーマーが装着されていく。


《Demifiend Unite》


「変わりやがったか……!!」


 カリンは不機嫌そうに舌打ちをすると、カナに向かって飛びかかっていった。


「こっちはファイター2人殺ってんだ!!!!テメェなんかお呼びじゃねぇ!!!!!!」


 飛びかかってくるカリンに対して、カナは腕のボタンを押した。


《Dark Elf Gun》


 すると、カナの手の中に拳銃が出現すると、カリンに向かって引き金を引く。


「ガァァッ!!!!」


 弾丸を食らって仰け反るカリン。


「ハッ!!舐めんじゃねぇ!!!!!!」


 カリンが拳を放とうと、カナに向かって構える。


 カナはそれを迎え撃つようにベルトのボタンを押した。


「お願いします……会長……。」


《Unite Charge》


 カナが拳銃を構えると、隣にレナの幻影が浮かび上がる。


「れ……レナ……!?」


 カリンがそう反応した直後、カナはレナと共に引き金を引いた。


「「はぁっ!!!!」」


 銃声と共にエネルギーを纏った2つの弾丸がカリンを貫く。


「ギャァァァァッ!?!?て、テメェ!!!!!


 弾丸に貫かれたカリンが、傷口を抑えながら再びカナに突っ込んできた。


「絶対ぶっ殺す!!!!!!」


 カナは再び腕のボタンを押す。


《Vampire Claw》


 カナの両手に鉤爪が装着されると、ベルトのボタンを押した。


「行くよ……ユウ……」


《Unite Charge》


 カナの鉤爪にエネルギーが集中すると、ユウの幻影が浮かび上がる。


「亡霊があたしに勝てると思ってんのかァ!?」


 カリンがそう叫ぶなか、カナが瞬時にカリンとの間合いを詰め……


「「シャァッ!!!!」」


 2人の鉤爪が、カリンを斬り裂いた。


「アァァァァァッ!?!?!?」


 カリンは断末魔の悲鳴を上げて吹っ飛ぶ。


 カナは三度、腕のボタンを押す。


《Sparna Sword》


「トドメ……決めるよ、フタバ……!」


《Unite Charge》


 カナは剣を構える。


 フタバの幻影が浮かび上がり、剣先をカリンに向けた。


「何で……何でだチクショウ……!!なんであたしが……!!こんな奴に!!!!!」


 フラフラと立ち上がりながらそう叫ぶカリンに対して、カナは言った。


「私は……みんなの思いを背負ってる……!!お前とは違う!!!!」


 カナは背中の翼を広げて、カリンに突っ込んだ。


「みんなの思いを乗せたこの一撃を……喰らえェェェェ!!!!!!!!」


 カナとフタバの必殺の一撃がカリンに命中した。


 カリンは宙高く吹っ飛ぶ。


(負けた……負けた……!!!!)


 悔しそうに顔を歪ませながら、カリンは思う。



 カリンは友だちが1人もいなかった。


 勉強も苦手、運動も苦手。


 休み時間は、いつも一人。


 友だちと遊ぶ光景を見て、カリンはいつも羨ましく思った。


 そんな中、手に入れたカートリッジ。


 仮想空間でエネミーを初めて倒した時、自分は何にでもなれると思った。


 ただ、彼女は飲まれてしまった。カートリッジの力に。


 彼女の中にあった本当の願いも、いつしか忘れてしまっていた。


 カリンが本当は叶えたいと思っていた願い。


 それは……『友だちが欲しい』という願い。


 しかし、カリンは力に溺れ、最終的には身近にいたレナとユウを手にかけた。


 歳は離れていたとはいえ、友だちになれたかもしれない2人。


 それを、自らの手で離してしまった。


(何でだよ……!!何で……今更こんなこと……!!)


 全てが遅かった。思い出したのも、後悔も、何もかも。


「チク……ショォ…………!」


 その言葉を残して、カリンは倒れた。


《Dropout》


 カリンの身体からバトルスーツが外れ、全裸になる。


 そして、粒子となってカリンは消滅した。



「はぁ……はぁ……」


 カナが膝をつく。


 エネルギーを使いすぎたようだ。



「おめでとう、カナ。」


 誰かが声をかけてくる。


 カナが振り向くと、そこにはヨミが立っていた。


「貴女は勝ったの。バトルロイヤルに。」


 ヨミはそう言うと、カナに向かってこう言った。


「貴女は真実を知る権利を得た。私はずっと……貴女を待っていたの。『U』も、それを望んでいた。」


「真実……」


 カナがそう呟くと、ヨミは言った。


「そう……真実。この世界のこと、バトルロイヤルの真の意味。そして……『U』のこと。」


 ヨミはそう言うと、カナに向かってゆっくりと語り出したのだった。

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