第18話

 仮想空間内。


 ユウとカリンが激しく争っていた。


「シッ!!」


 ユウの鉤爪がカリンに向かって放たれる。


「あめぇんだよ!!!!」


 カリンはそれを避けると、ユウの腹部に拳を放った。


「かはっ……!!」


 吹っ飛ばされ、地面に倒れるユウ。


 そのままカリンはユウに近づくと、彼女の首を掴んで持ち上げた。


「ヒャハハハハ!!!!ケンカ売ってきた割には、大したことねぇなぁ!?」


 そう言うと、カリンは手に力を込めてユウの首を締め始めた。


「か……はぁ……っ……!!」


 ジタバタともがきながら、ユウは必死に抵抗する。


「ヒャハハハハ!!!!そのまま首の骨へし折って死ね!!!!!」


「くっ………………!!」


 ユウは足をバタバタと動かすと、カリンに向かって蹴りを放つ。


「ごはぁっ!!」


 鳩尾にユウの足が当たり、思わず首にかけてた手を離してしまい悶える。


「シッ!!!!」


 そのままユウはボクシングのジャブのように鉤爪を放つ。


「チッ!!」


 カリンは何とか避けるも、鉤爪が彼女の頬を掠めて一筋の切り傷を作った。


「てんめぇ!!!!」


 カリンがこちらへ迫ってくる。


 ユウはそれを迎え撃つようにベルトの右端にあるボタンを押した。


《Over Charge》


「あんただけは……生かしちゃおけない……!!」


 ユウがそう言うと、両腕の鉤爪にエネルギーが集中する。


「シャッ!!!!」


 ユウが鉤爪を凄まじいスピードでカリンに向かって放った。


「テメェもぶっ殺す……!!あぁぁぁぁ!!!!」


 カリンがそう叫ぶと、ベルトのボタンを押した。


《Over Charge》


 カリンの拳にエネルギーが集まってくる。


「ヒャハハハハ!!!!!死ねやァァァァ!!!!」


 ユウの鉤爪とカリンの拳がぶつかる。


「くっ…………!!」


「ヒャハハハハ!!!!そのまま死ねェ!!!!」


 カリンの拳のエネルギーが強くなると、ユウの鉤爪に少しずつヒビが入る。


「あっ…………」


 ユウがそう声を漏らした瞬間、鉤爪が砕け散るとカリンの拳がユウの顔面を捉えた。


「がはぁっ…………!!」


 カリンに吹っ飛ばされてユウは地面に転がる。


「クククッ……!!トドメと行こうか……!!」


 カリンはもう一度拳にエネルギーを貯める。


 喰らったダメージが大きすぎて、ユウは起き上がることができない。


(あぁ……やっぱり……)


 薄れゆく意識のなか、ユウはカリンの方を見る。


「ヒャハハハハ!!!!!!」


 カリンは地面に拳を打ち付けると、地割れを発生させる。


(やっぱ……ダメだったか……)


 ユウが目を閉じると、地面から氷の刃が出現し、彼女の身体を貫いた。


(結局……私はこうなるんだ……責任も……果たせなか……った……)


 ユウの身体がだらんと脱力すると、氷の刃が真っ赤に染まる。


《Dropout》


 ユウの身体からアーマーが落ちる。


 そして、全裸になった後、粒子となって消滅した。


「ヒャーハハハハ!!!!これであと一人……!!テメェをぶっ殺せば、あたしの勝ちだァ!!!!」


 カリンはそう言うと、声高々に笑った。





 翌日。


 カナはスマホをずっと眺めていた。


「連絡が来ない……」


 カナはリビングで寛ぐ麻衣に向かって言った。


「麻衣さん、昨日来た友だち、今日ここに来た?」


 カナが麻衣にそう問いかけると、麻衣は首を傾げた。


「昨日来た友だち?さて……なんの事だろうねぇ?」


 その言葉を聞いたカナは、飛び出すようにして診療所を飛び出した。


「そんな……!そんな……!」


 嫌な予感が脳裏に過ぎる。


 死んだファイターは人々の記憶から消され、この世に存在しなかった扱いになる。


 麻衣はユウの事を覚えていなかった。


 ということは……


「ユウが……殺された……!?」


 カナがいつもユウが出入りしているゲーセンへと向かう。


 ゲーセンの中に入り、ユウの姿を探すも何処にもいない。


「やっぱり……あの人、一人で……」


 カナがそう呟きながらゲーセンを出ると……


「よォ、来ると思ってたぜぇ……?クククッ……!!」


 聞き覚えのある声がした。


 カナが振り向くと、そこにはカリンが立っていた。


「テメェをぶっ殺せば、あたしは勝者になるんだよ……!!さぁ、大人しく死んでくれや……!!」


 カリンはそう言うと、カナを挑発するように手に持っていた帽子を踏みつける。


「…………ッ!?」


 カナはその帽子に見覚えがあった。


「それは……ユウの……!!」


「あいつがあたしにケンカ売ってきたからよォ……?ぶっ殺しといてやったぜ……!!クククッ……!!」


 カリンがそう言うと、カナは言った。


「そこまでするってことは、貴女にも叶えたい願いがあるの……?」


 カナの問いを聞いたカリンは、ゲラゲラと笑う。


「ヒャハハハハ!!!!願い?あるわけねぇだろんなもん!!!!

 あたしは暴れられればそれでいいんだよ!!!!」


「こいつ……!!」


 カナはカートリッジを構える。周囲の景色が仮想空間へと変わっていった。


「お前だけは……必ず倒す……!!私が……この手で……!!

 チェンジ!!」


《Change》


 カナがカートリッジをベルトに装着すると、光に包まれバトルスーツを身に纏う。


「ヒャハハハハ!!!!返り討ちににしてやるよ!!!!チェンジ!!!!」


《Change》


 カリンもまた、カートリッジをベルトに挿入しバトルスーツを纏った。


《Demifiend》


《Maelific》


 カナとカリンはお互いに向かい合う。


「最後の勝負だ……!!生き残るのはどっちか、白黒つけようぜ!!ヒャハハハハ!!!!!!」


「お前だけには……絶対負けない……!!」


 そして、お互いが距離を詰めると、互いの顔面に拳を放ったのだった。

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