第13話

「オラァ!!!!」


 カリンが放った鋭い蹴りを、カナは両腕でガードし受け止める。


「ヒャハハハハ!!!!さぁ、楽しもうぜ!!命をやり取りをよぉ!!」


 カリンは狂気じみた笑みを浮かべると、もう1発蹴りを入れる。


「くっ……!!」


 カリンの蹴りの力に押されて後ろにカナは引き下がる。


「ヒャーハハハハハッ!!!!」


 カリンは地面に拳を叩きつけると、そこから地割れを発生させた。


「ヤバい……!!」


 カナは何とかジャンプして地割れに巻き込まれないように回避すると、カリンはニヤリと笑う。


「甘えんだよ、バーカ!!」


 カリンがそう言うと、地割れの中から氷の刃が姿を現すとカナに襲いかかってきた。


「がはっ……!!」


 腹部を氷の刃で貫かれ、その場に倒れるカナ。


「クククッ……!なんだぁ?もう終わりかよ?」


 カリンはそう言うとカナに近づいてくる。


「全然歯ごたえねぇなぁ……?ユウもレナの野郎も大袈裟なんだよなぁ?」


 カリンはそう言うと、拳を握りしめて言った。


「雑魚は死んどけよ!!ヒャハハハハ!!!!」


 カリンがカナに向かって拳を振り下ろした時


ガシッ!!


 カナがその拳を受け止めた。


「私は……負けない……!!」


 カナがそう言うと、空の彼方から一筋の光が飛んでくる。


 カナがカリンを蹴り飛ばすと、飛んできた光を掴み取った。


 その光の中から、カートリッジが姿を現す。


「…………チェンジ。」


《Change》


 カナがカートリッジを差し替えると、ベルトから暗黒のオーラが放たれ、カナを包み込む。


「へぇ。」


 カリンが興味深げにその様子を見つめると、暗黒のオーラから化け猫のエネミーと化したカナが姿を現した。


《Enemy:Type-Another『Yomi』》


「シャッ!!!!」


 カナの鋭い爪がカリンに向かって放たれる。


 カリンはそれを受け止めると、ニヤリと笑った。


「楽しくなってきたじゃねぇか……よぉ!!」


 カリンが嬉しそうにそう言うと、カナは拳を何発もカリンに向かって放つ。


「シャッ!!ハッ!!」


 掛け声と共に放たれる拳を、カリンは軽々と避けていく。


「ヒャハハハハ!!!!いいぜぇ……!その感じ!!あたしをぶっ殺してみろよぉ!?」


 カリンはそう言いながらカナに向かって蹴りを放った。


「ぐっ……!!」


 腹部を蹴られて吹っ飛ぶカナ。


「言っとくがあたしゃぁ……他の連中みてぇに甘くねぇからな!!!!」


 カリンはそう言うと、カナの顔を押さえつけると、そのまま地面に叩きつけた。


「ぐぁぁ!!!!」


「ヒャハハハハ!!!!!!!こんなもんかよ!?もっと楽しませてくれよ!?」


 カリンがそう笑みを浮かべると、カナの身体は動かなくなった。





「…………ぅ……」


 カナが目を覚ますと、そこは真っ白な空間が広がっていた。


「残念ね……カナ……。」


 カナの目の前に現れた、カナそっくりな少女『ヨミ』が悲しそうな表情を浮かべながらそう言う。


「このままでは……脱落してしまうわ?貴女を見込んで力を貸したというのに……貴女は結局、私の力を扱うことができなかった……。残念ね……。」


 そう言うヨミに対して、カナは言う。


「貴女の本当の力ってなんなの……!?どうすれば扱えるの……!?」


 カナの問いに、ヨミは口を開いた。


「そうねぇ……。本当なら貴女を見捨てたいところだけど、他ならぬ『U』の頼みだからね……?」


 ヨミはそう言うと、カートリッジを手にしてカナの前に構える。


「言葉で言っても……恐らく貴女には伝わらない。だから……身体で教えてあげる……。


 チェンジ。」


《Change》


 ヨミがベルトにカートリッジを挿入すると、彼女の身体は暗黒のオーラに包まれ……


《Enemy:Type-Another『Yomi』》


 化け猫のエネミーと化したヨミが姿を現した。


「さぁ……、貴女もファイターに変身しなさい……?そして教えてあげる……。貴女に何が足りないのかを……。」


 ヨミに言われるがまま、カナはカートリッジを構える。


「チェンジ……!」


《Change》


 カナの身体は光に包まれ、バトルスーツを装着していく。


《Demifiend》


 光の中から姿を現すと、カナはヨミと対峙する。


「さぁ……、行くわよ……?」


 ヨミはそう言うと、カナに向かって勢いよく踏み込む。


「シャッ!!!!」


 ヨミが放った鋭い拳を、カナが両腕でガードし受け止めるも、ヨミはそのまま体勢を変えてカナの頭部に蹴りを入れる。


「がはっ……!!」


 よろめくカナに対して、ヨミは鳩尾目がけて拳を喰らわせた。


「ぐはぁっ……!!」


 鳩尾を殴られて膝をつくカナ。


「つ……強い……」


 カナがヨミを見上げてそう言うと、ヨミは言う。


「私が強いんじゃないわ……?貴女が弱いのよ、カナ。」


 ヨミはそう言うと、言葉を続ける。


「貴女の持ってる『デミフィーンド』のカートリッジはね……、恐らく全てのファイターが持つカートリッジの中で一番弱い。

 武器も持たないし……これといった特別な力もない……。」


「そ……そんなこと……そんなこと……ない……!!」


 カナはベルトの右端のボタンを押して、右足に稲妻を宿す。


《Over Charge》


「私は……!!弱くなんか……ない!!!!」


 カナはそう叫びながら、ヨミに向かって回し蹴りを放つ。


 ヨミはカナが放った回し蹴りを、片腕で受け止めた。


「なっ……!!」


「弱いわよ……?だって、そういう風に作られているんだから……。」


そのままヨミはカナを薙ぎ払う。


「『デミフィーンド』のカートリッジは、少し特殊でね……?

 装着者の心によって……その強さが決まるの。」


ヨミはそう言うと、カナに向かって言った。


「今の貴女じゃ……全然ダメ。そのカートリッジの力を最大限に発揮できていないわ……?

 無限の可能性を秘めた、そのカートリッジをね……?」


 ヨミはそう言うと、カナに向かって問いかける。


「貴女は何のために戦っているの……?」


 その言葉を聞いて、カナは言葉を詰まらせる。


「他のファイターは、みんな願いを叶えるために戦っている……。貴女の願いは……?」


「私の……願い……」


「本当はあるはずよ。貴女の戦う理由……貴女の願い……。それに貴女自身が気づいていないだけ……。」


 ヨミはそう言うと、ベルトの右端のボタンを押す。


《Over Charge》


「思い出しなさい、カナ。貴女が戦う理由……貴女が叶えたい願い……貴女の信念……。思い出せないのなら……ここで死になさい。」


 ヨミは右腕を構え、手のひらにエネルギーを集中させると、左手で右腕を支えカナに狙いを定める。


「はぁっ!!!!」


 ヨミの手のひらからエネルギー光弾が放たれた。


「くっ……!!」


 カナは必死で思い出そうとする。


 戦う理由を


 叶えたい願いを


 カナの信念を。



私が……戦う理由…………それは…………













「ぼさっとしてんじゃないわよ!!」


 その声と共に、ヨミが放った光弾を誰かがはじき飛ばした。


 カナは顔を上げ、目を丸くする。


 そこにいたのは……


「ふ……フタバ……!?」


 レナに殺されたはずのフタバだった。


「なんで……フタバがここに……」


 カナがそう問いかけると、フタバは言った。


「覚えていてくれたから。あんたが、あたしのことを。」


 フタバはそう言うと言葉を続けた。


「あんたは、こんなとこで死んじゃいけない。あたしと違ってね。」


 フタバはそう言うと、カナの方を観る。


「あたしと違って、あんたは生きてるの。あたしは願いを叶えられなかったけど、あんたなら叶えられる。

 そして、カナ……あんたの願いは、あたしの願いでもあるの。

 あたしが死んだ時、何か思ったはずよ?思い出してみなさい?」


 フタバにそう言われて、カナは思い出す。


 フタバが目の前で死んだ、あの時。


 カナは確かに思った。


 それは確かに、カナとって戦うべき理由。叶えなくてはならない願いだった。


「私は……!!」


 カナがそう言うと、ヨミは攻撃をやめて嬉しそうに微笑む。


「やっと気づいてくれたのね、カナ。これで……ようやく貴女は、私の真の力を使いこなすことができる。

『U』は間違ってなかったのね……?」


 ヨミはそう言うと、カナに向かって言った。


「さぁ……戻りなさい?貴女がいるべき場所へ。貴女は決して……一人じゃないから。」


 ヨミがそう言うと、周囲が眩い光に包まれる。


「フタバ……」


 空間が消えていく中、カナは親友の名前を呼ぶ。


「カナ、あんたなら大丈夫。あたしがいつでも、傍についているから……!」


 フタバはそう言うと、ニッと笑った。





「さぁ、とっとと死ねやァ!!!!」


 カリンがトドメの一撃をカナに放とうとした、その時


 ベルトから凄まじいオーラが放たれ、カリンを吹き飛ばした。


「な、なんだ!?」


 カリンが目を丸くすると、エネミーの姿をしたカナが、ゆっくりとベルトからカートリッジを引き抜く。


 そして、カートリッジを前に構えると、カートリッジに金色の模様が浮かび上がった。


「…………『変身』。」


《Change》


 カナがカートリッジを挿入すると、眩い光に包まれる。


 カナの身体は元の肌色に戻ると、黒と金色のアーマーとスーツを纏った。


《Demifiend『Unite』》


 光の中から姿を現した、黒と金色のバトルスーツを身につけた一人のファイターが、そこに立っていた。


「な……なんじゃこりゃぁ!?」


 カリンがそう声を上げると、カナは腕につけられたスイッチを押す。


《Suparna Soad》


 カナの手に、1本の剣が姿を現した。


「たぁっ!!!!」


 カナは剣をカリンに向かって振り下ろす。


「ぐぁぁっ!!」


 斬撃を食らったカリンは吹っ飛んだ。


「クククッ……!!やっと本気になったってわけか!!おもしれぇ!!!!」


 カリンはそう言うと、地面に拳を打ち付ける。


 そこから地割れが発生すると、カナに氷の刃が襲いかかった。


「ヒャハハハハ!!!!!そのまま死ね!!!!」


 カリンがそう言うも、カナは再び腕のスイッチを押す。


《Sparna Wing》


 すると、彼女の背中に鳥のような翼が生えると、空中に浮かび上がり氷の刃を回避した。


「はぁ!?飛ぶとか聞いてねぇぞクソが!!!!!」


 カリンが苛立つようにそう叫ぶと、カナはベルトの右端のボタンを押す。


《Unite Charge》


 カナのベルトから光が放たれると、彼女の隣にフタバの姿が浮かび上がった。


「なっ……!?」


 カリンが目を丸くすると、カナはフタバと共に剣を構え、翼を広げてカリンに突っ込んでいった。


「「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」」


 2人の雄叫びと共に、必殺の一撃がカリンに命中した。


「ぐぁぁぁぁっ!!!!」


 地面に転がるカリン。


 カナは着地すると、カリンに向かって言った。


「今日はここで見逃してあげる。今度は相手を選ぶことね。」


 カナはそう言い残し、カリンの元を去っていった。


「くっそぉ!!!!!!」


 屈辱的な敗北を味わったカリンは、憎悪に満ちた表情を浮かべる。


「あの野郎……!!次会った時は、殺す……!!!!」


 カリンはそう言うと悔しそうに雄叫びを上げた。





 現実世界に戻ったカナは、スマホケースに貼られているプリクラを眺める。


 フタバと撮った、プリクラ。


 それを見つめながら、麻衣に言われた言葉を思い出した。



『お前さんがその子を覚えている限り、お前さんの心の中で、その子は生き続ける。だから、忘れちゃダメだよ。』



「フタバ……、絶対忘れない。だから……これからも……一緒に……。」


 カナはフタバにそう誓った。


 親友のために、カナが叶えたい願いのために。

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