第7話
フタバが帰ってすぐに、カナはシャワーを浴びていた。
温かいお湯が身体全体を包み込んで心地いい。
カナは自身の腹部のアザに触れる。
内出血を起こしてはいるものの、バトルスーツのおかげなのか、そこまで大した傷ではない。
身体を一通り洗い終わると、カナは湯船に浸かった。
「はぁ…………。」
感嘆のため息が思わず漏れる。
水面に浮かぶ自身の顔を眺めながら、カナは呟いた。
「友だち……できたんだよね……。」
カナはそう言うと嬉しそうに微笑んだ。
「こっちでも、上手くやっていけそう……。」
そう呟くと、背伸びをひとつする。
お風呂に浸かりながら、カナは友だちができた喜びを噛み締めていた。
それから1週間後。放課後、仮想空間内。
「これで決める……!!」
バトルスーツを纏ったカナがベルトの右端のボタンを押す。
《Over Charge》
カナは右足に電流を宿した。
「ギィィィィッ!!!!!!」
蜂型エネミーが羽音を立てながら両腕の毒針を突き刺そうとカナの元へと向かってくる。
「たぁっ……!!」
カナはそれを迎え撃つようにエネミーに向かって回し蹴りを放った。
「ギィッ!?!?」
カナの電撃を纏った右足がエネミーに命中すると、エネミーは吹っ飛びそのまま消滅した。
「やるじゃない!」
フタバがそう声をかけてくる。
「だいぶ戦いに慣れてきたんじゃない?」
フタバがそう言うと、カナは自らの手を見つめて言った。
「多分……前よりは慣れてきたと思う。」
「これなら、あいつ倒しに行ってもいいかもしれないわねぇ?」
フタバがそう言うと、カナは首を傾げた。
「あいつ……?」
カナがそう問いかけると、フタバは答える。
「エネミー:ゴーレム。強いけど経験値稼ぎには持ってこいの敵ね。あいつがよく出る出現場所知ってるからさ、今度行ってみようか。」
「うん。」
カナが頷くと、2人は現実世界へと戻った。
「フタバ……これから時間ある……?」
現実世界に戻ると、カナはフタバにそう問いかける。
「時間?別にあるけど、どうしたのよ?」
フタバがそう答えると、カナは言った。
「駅前に、クレープ屋さんが来てるって聞いたから……行ってみない……?」
「クレープ?別にいいけど。」
「やった……!じゃあ行こ……!」
カナはフタバの腕を引っ張る。
「ちょっ……!!引っ張らないでよカナ!!」
フタバはカナに腕を引っ張られながら、2人は駅前へと向かった。
*
羽座間駅前。
クレープ屋の屋台でカナとフタバはクレープを購入し、近くにあったベンチに座って食べていた。
「うまっ!!このクレープなかなかイけるじゃない!!」
フタバがそう言いながらクレープを食べている。
「ねぇ……フタバ。」
「ん?」
「その……ゴーレムって、どんなやつなの……?」
カナがそう問いかけると、フタバは答える。
「石で出来た怪物っていえば、わかるかしら?」
「動く石像……みたいな感じ……?」
「そゆこと。」
フタバはそう言うと、言葉を続ける。
「今まで戦ってきたエネミーよりもかなり強いけど、その分経験値は桁違いよ。あたしとあんたなら倒せると思う。」
フタバの言葉を聞いたカナは「ふーん」と反応する。
「クレープ……食べ終わったらさ……」
カナがそう言うと、フタバはカナの方を見る。
「付き合って欲しいところがあるんだけど……いい……?」
「別にいいけど、どこ行くの?」
フタバがそう問いかけると、カナは言った。
「ちょっと……ね。」
*
クレープを食べ終えたカナとフタバは、駅前にあるゲームセンターに来ていた。
「ゲーセン?こんなとこに何の用よ。」
フタバがそう問いかけると、人混みの中、カナはフタバに手招きをした。
「こっちこっち」
2人が人混みをかき分けて向かった先は……
「これって……プリクラじゃないの!」
フタバがそう声を上げる。
「一緒に撮りたいなって……。」
カナがそう言うと、フタバの方を見る。
「ダメ……かな……。」
上目遣いでそう訴えかけてくるカナを見て、フタバがため息をついた。
「はぁ……、仕方ないわね……。」
「やった……!!」
カナは笑みを浮かべると、フタバと一緒にプリクラの筐体の中へと入っていった。
「撮るよ……?」
「え、ええ……」
2人は密着してカメラを見つめる。
カシャッ
シャッター音が鳴ると、タッチパネルモニターに2人の写真が映り出される。
2人はパネルを操作して、写真に色んなデコレーションを施す。
「ねぇフタバ……これ……」
「いいじゃない!じゃあさ、これをこうして……」
「…………かわいい。」
「でしょでしょ!?」
プリクラを編集している2人は無意識に笑みを浮かべていた。
プリクラがプリントされて出てくる。
「出来た……!」
カナは嬉しそうにそれを受け取った。
「ねぇ、どうしてプリクラなんて撮ろうと思ったのよ。」
フタバがそう問いかけると、カナは言った。
「撮りたかったんだ……ずっと。初めてできた友だちと……。」
カナのその言葉を聞いたフタバの動きが止まる。
『あの子も殺るんでしょう……?仲良くなったフリして、油断してる所をサクッとね……?』
ふと、頭を過ぎるレナの言葉。
「友……だち……」
フタバがそう呟くと、カナは声をかける。
「どうしたの……?」
カナの言葉に我に返ったフタバは、アハハと笑う。
「なんでもない!ちょっと考え事してただけ……」
「ならいいけど……」
カナがそう言うと、フタバと共にプリクラの筐体から出る。
そして、人混みをかき分けてゲームセンターを後にしようとした、その時
「あれ、フタバじゃん。」
声をかけられた。
カナとフタバは振り返る。
そこにいたのは……
「あんた……!!」
フタバは目を丸くする。
2人の目の前にいたのは、スタジャンとベースボールキャップを被った、緑髪の少女だった。
「知り合い……?」
カナがそう問いかけると、フタバは答える。
「こいつは、神山 ユウ……。この間話した、入学式に来なかった、あたし達と同じ学年の奴よ。そして……」
フタバは目を細めて言った。
「こいつも、ファイターよ……!!」
フタバがそう言うと、少女……ユウは噛んでいたフーセンガムをぷくぅ……と膨らませる。
「へぇ、その隣のちっこいのがレナが言ってた新人?」
ユウはそう言うと、くちゃくちゃとガムを噛みながらカナに近づいた。
「面白そうじゃん。」
ユウがそう言うと、フタバは問いかける。
「あんた、何でこんなとこにいるのよ。」
フタバの問いに、ユウは答える。
「だってここ、私の行きつけのゲーセンだもん。」
ユウはそう言うと、再びガムを風船のように膨らませた。
「新入りちゃんさぁ」
ユウはカナに向かってそう声をかける。
「気をつけた方がいいよ。ファイターならね。ファイターの真の敵は、ファイターなんだからさ。」
ユウはそう言うと、アーケードゲームの筐体の元へと戻って行った。
「ファイターの真の敵は……ファイター……」
カナがそう呟くと、フタバは俯く。
「……帰ろっか!」
フタバはそう言うと、カナは頷き2人は帰路に着いた。
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