第5話

「やぁっ!!!!」


 フタバが気合いの掛け声を上げながら剣を振るう。


「グォォォンッ!!」


 ゴリラ型エネミーは鎧を纏った腕でそれを受け止めた。


「硬いっ!!何なのこいつ!!」


 フタバが思わず舌打ちをすると、エネミーは彼女に向かって腕を振り上げる。


「ウォォォォンッ!!!!」


 ゴスッ!!


 鈍い音が周囲に響く。


「ゲホッ…………!!」


 エネミーの大きな腕から放たれた拳がフタバの腹部に命中し、思わず口から息を吐き出してしまう。


「がぁっ……!!」


 吹っ飛ばはれ、フタバは地面に転がる。


「ガォォォォォンッ!!!」


 エネミーはフタバにもう一撃パンチを喰らわせようと飛びかかってくる。


「けほっ……!!やばっ…………!!」


 何とか起き上がろうとするフタバだが、すぐそこまで迫ってきているエネミーから避けられそうにない。


「グォォォォンッ!!!!」


 エネミーがフタバに向かって拳を振り下ろそうとした、その時


 冷気がエネミーを包み込んだ。


 エネミーが冷気が放たれた方向を振り向くと、そこにはカナが立っていた。


「ふぅぅ……。」


 冷たい冷気の吐息を吐くカナ。


「ガォォォォンッ!!!!」


 エネミーがカナに向かって威嚇するように咆哮を上げると、カナは息を大きく吸い込み……


「ガァァッ!!!!!!」


 エネミーに威嚇するように咆哮を上げた。


「…………っ!?」


 フタバの身体に寒気が走る。


(な……なによ今の……!!)


 小柄な身体から放たれた、怪物のような雄叫び。


 フタバの身体は微かに震えていた。


(この私が……震えている!?)


 フタバだけではなかった。


 エネミーもまた、一歩後退るようにカナと距離をとる。


「隙が出来た……!」


 カナはそう呟くと、身軽に跳躍し、鎧を纏っていないエネミーの顔面に向かって飛び蹴りを喰らわせた。


「ギャォンッ!?!?」


 エネミーは吹っ飛び地面に転がる。


「大丈夫……?」


 カナはフタバに手を差し出す。


「え、ええ……」


 フタバはカナの手を取り立ち上がった。


(今の……一体……)


 フタバがそう思っていると、カナが何かに気づく。


「来る……!!」


 その言葉にフタバが振り向くと、エネミーがこちらに向かって弾丸のようなタックルを仕掛けてきた。


「危ない……!!」


 カナはそう言うと、フタバを突き飛ばす。


「きゃっ……!!ちょっと!!何するのよ!!」


 フタバがカナに向かってそう叫んだ直後


「ぐあっ!!」


 エネミーの弾丸タックルを喰らってカナが空高く吹っ飛んでしまった。


「ガォォォォッ!!!!」


 エネミーは力強く跳躍すると、吹っ飛ぶカナを追撃し拳で思い切り彼女の鳩尾を殴る。


「かはぁっ……!!」


 胃液を吐くカナを、エネミーは彼女の顔を手で押さえつけ、地面に叩きつけた。


「カナ!!!!」


 フタバが思わず叫ぶ。


「あの子……!私を庇って……!!」


 そう呟き、エネミーの方を見る。


「ギャォオォオン!!」


 エネミーはトドメを刺そうと、両腕で胸を強く叩きドラミングをする。


「うぅ……!」


 エネミーの攻撃をくらい地面に転がるカナ。


「こ……このまま……じゃ……!!」


 何とか起き上がろうとするものの、腹部の激痛で起き上がることができない。


「グォォォンッ!!!!」


 エネミーの鎧を纏った大きな拳がカナに向かって振り下ろされた。


「くっ……!!」


 カナが目を瞑った、その時


「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」


 フタバが翼を大きく羽ばたかせ、剣を構えながら飛んでくる。


「エネミー・アナライズ!!」


 フタバはバイザーのセンサーを起動し、エネミーをスキャンする。


〖エネミー:アーマードコング 弱点:首〗


「見えた……!!」


 フタバはそう言うと、ベルトの右端にあるボタンを押し、剣にエネルギーを充填した。


《Over Charge》


「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!!」


 フタバのエネルギーを纏った剣が、エネミー……アーマードコングの首元を捉える。


ザンッ!!


 フタバの剣がアーマードコングの首を吹き飛ばした。


 敵は崩れ落ち、粒子となって消滅した。


「借りは返したわよ。」


 フタバはカナを見てそう言うと、腹部を抑えてそのまま膝をつく。


「フタバ…………!!」


 カナが痛みを堪えながらそう語りかけると、フタバは苦笑いを浮かべて言った。


「えへへ……無理しちゃったみたい。」


 苦しそうに笑みを浮かべるフタバ。


 2人はそのまま横たわり、傷口を抑える。


「帰れる……かな……」


 カナがそう呟いた時


 巨大な黒い影が2人の前に姿を現した。


「あ……『UNKNOWN』……!!」


 フタバはそう呟く。


 エネミー『Code.『U』』、通称『UNKNOWN』が2人の前に姿を現した。


「こんな……時に……!!」


 フタバがそう言いながら立ち上がろうとすると、『UNKNOWN』は2人の身体を持ち上げる。


「な……なにを……」


 カナがそう言うと、『UNKNOWN』はその場から飛び立った。


 凄いスピードで仮想空間を飛行し、2人が落ちないようにしっかりと抱える。


『UNKNOWN』がしばらく仮想空間内を飛行する と、やがて現実世界へと繋がる光が現れた。


『UNKNOWN』は2人をゆっくりと地上に下ろした。


「もしかして……助けてくれたの……?」


 カナがそう問いかけると、『UNKNOWN』はそのままどこかへと飛び去ってしまった。


「あいつがあんな事するなんて……。」


 フタバも驚いたようだった。


「とりあえず、今は戻ろう……。」


 カナはそう言うと、フタバと共に現実世界へと戻る光の中へと消えていったのだった。





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