第2話

「ギャァッ!!」


 翼竜型モンスターの鋭い爪がカナを襲う。


 カナは反射的に腕をクロスさせ身を守ったが、モンスターの力は予想以上に強く吹っ飛ばされてしまった。


「あぁっ……!!」


 地面に転がるカナ。


「何やってんのよ!戦いなさい!!」


 少女がカナに向かってそう怒鳴ると、カナは彼女に向かって言う。


「ど……どうすれば……」


「あぁもう!!じれったいわね!!」


 少女はそう言うと、手のひらに剣を召喚する。


「こうやるのよ!!」


 少女はそう言うと、剣を構える。


 そして、背中の翼を羽ばたかせると、空中に浮かび上がりモンスターのところへ一直線で飛んでいった。


「こんのぉ!!!!」


 少女が気合いの雄叫びを上げながら、モンスターに突っ込む。


ブシュッ!!


 少女の剣がモンスターの胴体に突き刺さった。


「ギャァァァァッ!!!!」


 傷口から血を流しながら、モンスターは悶える。


「ちょっ……!!」


 少女は目を丸くした。


 モンスターは少女の予想を遥かに超える勢いで暴れ始め、彼女を吹き飛ばしてしまったのだ。


「がはぁっ!!」


 基板で出来た建物に激突する少女。


「キシャァァァァッ!!!!」


 モンスターは怒りに身を任せて少女に向かって火の玉を吐こうとする。


「やばっ……!!」


 少女の顔が青ざめる。


「あのままだと……あの人が……!!」


 カナは思考を巡らせていた。


 どうすればいい。


 どうすれば……。



『思い切り、息を吐くんだ。』




 何処からか、そんな声が聞こえた。


「息……?」


 カナはその声に聞き返すように呟くと、意を決してモンスターに向かって思い切り息を吐いた。


「はぁぁぁっ……!!!!」


 すると、カナの吐息は凍てつく冷気へと変わり、モンスターを包み込んだ。


「ギャァァァッ!?」


 突然の出来事に戸惑うモンスター。


「な、なんか出た……!!」


 カナが驚いたような表情を見せると、モンスターはカナの方へと迫ってくる。


「キシャァァァァッ!!!!」


「今度はどうすれば……!!」


 カナがそう言うと、少女が叫ぶ。


「ベルトの右端にあるボタンを押して!!!!」


「ボタン……」


 少女に言われた通り、カナはベルトに備え付けられたボタンを押す。


《Over Charge》


 すると、カナの右足にエネルギーを纏った稲妻が宿り始めた。


「こ……これって……!!」


「あのモンスターをそのまま蹴って!!!!」


 少女がそう叫ぶと、カナは無我夢中で回し蹴りを放った。


「なるように……なれェェェェ!!!!」


 カナの回し蹴りは、モンスターの首元をしっかりと捉えた。


 モンスターはカナの蹴りにより吹っ飛ぶと、そのまま建物に激突し、爆発を起こして消滅した。


「はぁっ……!はぁっ……!!」


 カナは膝をつき、呼吸を整えようとする。


 彼女の額から、汗が吹き出ていた。


「やるじゃない……!」


 少女がカナを見つめてそう呟いた時


「……この感じ……!」


 少女は気配のする方向を振り向いた。


 そこにいたのは……


「ギャォォォォンッ!!!!!」


 先程と同型タイプの翼竜モンスターだった。


 しかし、明らかに先程の個体よりも遥かに大きい。


「ボスエネミー!?こんな時に……!!」


 少女が舌打ちをする。


「あ……あれって……!!」


 カナが困惑した表情で、巨大モンスターを見つめていた。


「ギャォォォォォッ!!!」


 モンスターは口の中に炎を溜め込み始める。


「逃げるわよ!!今のあんたじゃ、勝ち目はない!!!!」


 少女がカナにそう叫ぶ。


 カナはモンスターがこちらを睨みつけたのを確認すると、逃走しようと走り出す。


 ……が


「ぐぁっ……!!」


 カナの足がもつれ、転んでしまった。


「何やってんのよ!!このバカ!!」


 少女が叫ぶ。


 モンスターの口から、激しい炎がカナに向かって吹かれようとした。


「し…………死ぬ…………!!」


 カナが自らの死を覚悟した、その時……




 真っ黒な閃光が、モンスターに向かって放たれた。


「ギャォォォォッ!?!?」


 モンスターは倒れ、悲鳴を上げる。


「え……?」


 カナは見上げた。


 目の前に現れた、真っ黒な巨人の姿を。


「こ……これも……敵……?」


 カナがそう呟くと、少女は言った。


「『UNKNOWN』……!!」


「アンノウン……?」


 カナが問いかけると、少女は彼女の手を掴んだ。


「とにかく逃げるわよ……!巻き込まれたら、ひとたまりも無いわ!!!!」


 少女はそう言うと、カナの手を引っ張り走り出す。


「キシャァァァァッ!!!!」


 モンスターが漆黒の巨人……『UNKNOWN』に向かって咆哮を上げる。


 『UNKNOWN』は右腕を突き出すと、手のひらをゆっくりと開く。


 すると、そこから強力な光線が放たれた。


「ギィヤァァァァッ!!!!!!」


 モンスターは光線に包まれ、大爆発を起こす。


「あぁっ!!」


 激しい揺れが起こり、少女とカナはバランスを崩しそうになった。


「早く出ないと……!!」


 少女がそう言うと、カナは一筋の光を見つけ、指を指した。


「あれって……!!」


「出口ね!!でかしたわ……!!」


 少女とカナは光に向かって走る。


「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!」


 2人は必死で走り、光の中に飛び込んだ。







「…………ん……?」


 カナが目を覚ますと、そこはカートリッジを拾った路地裏だった。


「帰って……これた……?」


 カナは辺りをキョロキョロと見回す。


「よかった…………」


 カナは安堵のため息を吐いた。


「そういえば……あの人はどこに……」


 カナは少女がここにいない事に気づく。


「何だったんだろう……あの世界は……。モンスターみたいなのもいたし……変身したし……それに……」


 カナははぁ……とため息をついた。


「何がなんだか……よくわからない……」


 カナは地面に置いていたカバンを手に取ると、居候先に向かって歩き出した。

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