Code.『U』

rarudo95

第1話

何故君はここへ来た?


「…………え?」


何故来てしまったんだ。


「一体……何を……」


今すぐここから離れるんだ。離れなければ……君は……



『戦い』に、巻き込まれることになる……。






『間もなく、羽座間(はざま)〜、羽座間〜。お出口は右側です。』


 アナウンスの声と共に、黒髪ショートカットにパーカーを着た少女……天宮 カナは目を覚ます。


 ここは電車の車内。


 車両が駅のホームに停車すると、強い横揺れが起こる。


「やっと着いた……。」


 カナはリュックサックとボストンバッグを手に取ると、電車から降りた。


 ここは『羽座間市(はざまし)』、首都圏から離れたところにある小さな街。


 この春から高校に進学するカナは、地元からかなり離れたところである、この羽座間市の高校に入学することになっている。


 財布から切符を取り出し、改札口を出る。


「ここが……羽座間……」


 駅の外に出たカナは、街の景色を観て静かにそう呟いた。


「えっと、確か……鷹目医院は……」


 カナはポケットからメモを取り出すと、そこに書かれている地図に目を落とす。


 地図のすぐ下には『迎えに行けなくて、悪い』と一言添えてあった。


「こっちかな……。」


 カナは地図を頼りに歩き出す。


 3月終わりの、まだ少し積もった雪が残った道。


 その雪が、陽の光を反射してキラキラと輝いている。


 しばらく歩道を歩いていると、ふと路地裏にあるゴミ箱の上で寛ぐ一匹の野良猫に遭遇した。


「猫だ……。」


 カナは野良猫に少し近づくと、声音を変えて手招きをする。


「にゃー……?」


 野良猫はゴミ箱の上から立ち上がると、飛び降りどこかへ行ってしまった。


「行っちゃった……。」


 少し寂しそうに、カナはため息をつく。


 はぁ……、とため息をついた、その時だった。


 カシャーン……。


 先ほどまで野良猫が寛いでたゴミ箱の上から、何かが地面に落ちた。


「何か落ちた……?」


 カナはゆっくりとゴミ箱の傍に近づく。


「何……これ……」


 カナが何かを手に取った。


 真っ黒な、カセットテープくらいの大きさの、謎の物体。


 真ん中には何かの模様が描かれていた。


「昔のゲームカセットか何かかな……。」


 カナがその物体をよく観ようと、天にそれを掲げるように腕を伸ばした瞬間だった。


「えっ…………?」


 何かの違和感を感じて、カナは思わず振り向く。


 そこに広がっていたのは、先程までいた場所ではなかった。


 電子機器の基盤で形作られた街が、そこに広がっていた。


「ここ……どこ……?」


 周囲を見回すカナ。


 すると、どこからか獣の雄叫びのような声が聞こえた。


「キシャァァァァッ!!!!」


「なっ……!!」


 その雄叫びの主の姿を観て、カナは目を丸くする。


 そこにいたのは、翼竜の姿をしたモンスターの姿だった。


「な……なにこれ……!?」


 カナがそう言うと、モンスターは彼女に向かって口から火の玉を放つ。


「うわぁっ……!!」


 カナは間一髪で回避するも、バランスを崩してその場に倒れてしまう。


「ガァァァァァッ!!」


 転倒したカナ目掛けて、モンスターは飛んでくる。


「こ……来ないで……!!」


 カナが顔を青ざめた、その時



「チェンジ!!」


《Change Sparna》


「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


 カナとは違う、別の少女が謎のスーツを纏いモンスターに向かって飛び蹴りを食らわせた。


「ギャァァァッ!?」


 モンスターは地上に叩きつけられる。


「あ……貴女は……」


 カナが少女に問いかけると、彼女はカナに向かって言った。


「何してるのよ!早くカートリッジを挿入して戦いなさいよ!!」


「え……?」


 何を言ってるのかわからない。そんな表情を見せたカナに、少女は言う。


「もしかして貴女、ファイターじゃない……?」


 少女がそう言うと、カナは問いかける。


「ファイターって……なに……」


「じゃあ、なんで貴女カートリッジ持ってるのよ!」


  少女がカナがずっと手に持っていたもの……カートリッジを指さして言った。


「カートリッジ……?」


「ああ、もう!!」


 痺れを切らしたように彼女がそう言うと、モンスターはゆっくりと起き上がり、翼を大きく広げて雄叫びを上げた。


「ギャォォォォォッ!!!!」


 2人を威嚇するように雄叫びを上げるモンスター。


「そのカートリッジを腰に巻かれたベルトに挿入しなさい!!そうすれば、私みたいになれるから!!」


「ベルト……?」


 少女の言葉を聞いたカナは、腰元に視線を落とす。


 そこには、いつの間にか奇妙なベルトが巻かれていた。


「何……これ……」


「いいから早く挿入しなさい!!!!」


 少女が怒鳴る。


 カナは言われるがまま、カートリッジをベルトのバックル部分に挿入した。


《Change》


 ベルトから眩い光が放たれる。


「うわっ……!!」


 カナは光に包まれてしまった。


 光の中で、彼女の衣服は消滅し一糸まとわぬ姿となる。


 腕、そして脚にそれぞれプロテクターが装着されると、胸元、下半身と次々にプロテクターがカナの身体に纏われる。


 プロテクターの間と間から特殊スーツの生地が生成されカナの身を包むと、頭にヘルメットが装着された。


《Demifiend》


「ぷはっ……!!」


 光の中から、黒緑色のプロテクターとスーツを纏ったカナが姿を現す。


「これって……」


 カナは自分の姿を確認する。


「私……?」


「ボケっとしてんじゃないわよ!!」


 少女がそう怒鳴ると、モンスターは咆哮を上げながらこちらへ向かってきた。


「来るわよ!!迎撃の準備しときなさい!!」


 少女がそう叫ぶ。


  迫り来るモンスター。


 どうすればいい、どうすれば……。


「キシャァァァァッ!!!!」


「う……うわああああああっ!!!!」


 カナは恐怖で自身の身を守るように庇いながら、悲鳴を上げた。

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