day16:レプリカ


 息子の堯之たかゆきの目から見ても、母みことは器用だと思う。

 料理については、あまり熱意が向かない性質のようではあるが、縫物全般に手芸工作といった――学業で言うところの技術家庭科に類する分野は、得意であるらしい。それこそ、学生時代の授業で習った以外は独学だというが、堯之から見て母方の祖母、父方の曾祖母が服飾関係を職にしていたらしき話を聞いていれば、そちらの方面の勘働きに長けているのだろう。


「どうかな?」

 めずらしく、おずおず…と控えめに――居間である十畳間のテーブルに並べて差し出されたのは、手のひらに乗るほどのフェルト仕立ての二体のマスコット。

「俺たち?」

 津々な興味を隠しもせずにみことの手元を見守っていた少年達は目を丸くし――次いで一度、堯之の顔を振り仰いでから、みことと彼女の手元の人形とを交互に見比べる。


 驚いているのだ――。


 実際のところ、堯之もかなり驚いていた。

 今、みことと堯之の前にいるこがねとしろがねは、ふたりながらに現代の少年らしい姿を現している。

 その姿は、彼らが人に見られることを想定して取る姿であるらしく――黄金と白銀の髪をした彼らの姿は、堯之とはるきにしか見えていないのだという。

 つまりは、みことは彼らふたりの本来の姿を目にしたことはないはずで、堯之とて、そこまで微に入り細に入り彼らの特徴を説明した憶えはない……というか、堯之としては言葉だけで他人の容姿を充分に伝え切れる自信もない。

 にもかかわらず……。

「こんなかな?…って、想像して作ったんだけど――どうかな?」


 一体は、毛先に癖のある黄色いポニーテールに、山吹色の装束を――。

 もう一体は、長いしっぽのような白い髪を備え、薄灰色の装束を纏っている。



 みことお手製のそれらは、彼らにとても良く似ていた。


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