day14:お下がり


「俺、それ着たい――」

 取り込んで仕訳けられた洗濯物――日向の熱の覚める頃を見計らってたたみ始めると、興味深げに手元を覗き込んでいたこがねが顔をあげた。

 それ…とは、堯之たかゆきの手にするところの……ティーシャツのことであるらしい。

 昨秋以来、堯之に認識されたことでかなり自由が利くようになったという彼らは、都合に合わせて折り折り、日本ではさすがに珍しい色の長い髪と古めかしい装束を隠して、ごく普通の小学生然とした容姿をとるようになった。確かに、毛先に癖のある黄金の髪の面影を残した明るめの茶色い髪の襟足を綺麗に刈り込んだ、いかにも快活そうなこがねの姿であれば、洗い晒したティーシャツもよく似合うだろう。

 とはいえ、どういう理屈か――要は、見せかけの姿ということなのだろうか――着ているものの方も、なにやら勝手に変化するようではあるので、わざわざ断ることもないのではないかという気もするのだが……?

「そうじゃなくて、タカユキの持ってるのが着たい…ってこと」

 問えば、丁寧な訂正が返されるも――しかし。

「俺のじゃ、大きすぎるだろ……?」

 成人男性としても長身の部類に入る堯之であれば、自慢できるほどのガタイでなくともそれなりの肩幅くらいはなくはない。

 掲げて身にあててみてやれば、当然ながら幅も丈もぶかぶかに余りまくっていて。

「大きいのがいいんじゃん。借りていい?」

 それでもなお、前のめりにねだられるなら――強く拒否することでもない。

「いいよ――」

「やったね。ありがと、タカユキ」

 了解してやれば、ティーシャツを抱え込んで喜ぶ。


 古着とか……そういうセンスなのかな?


 改めて知る彼の一面に――ほのほの胸を温めていると、くいっ…脇から小さく袖を引かれた。

「ん? しろがねも、なにか?」


「おれも借りたい……」



「へ?」


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