第28話 真実ヲ探シテ➂
ここからは仮定の話。だが、おそらく正しい話だ。
死者と生者のバランスが崩れたことによって始まった厄災。そのうちの1つは「場所」の呪いだったのかもしれない。「安土姫ノ神」の話は全てが実話であり、当時の争いで理不尽な蘇生を繰り返された姫の怨念が詰まった遺体の場所がたまたま安土第一高等学校の2年3組の教室の中央だったとなる。
そして。
供養されすに放置され続けた姫の遺体により、生者と死者のバランスが崩れたというわけだ。
ここで疑問にあがったのは第一の犠牲者が秋という遅い時期についてである。「安土姫ノ神」の遺体は何十年も前からここに埋められてあったはず……。なぜ厄災の1つが始まったのが春ではなく、秋だったのか。
「ごめん、不謹慎なこと聞いて、」
「いや。それは俺も今気になっていた。あとでほたるに聞いてみるか」
……。……。
外が明るくなり始めた。
時計を見ると、朝の会まで既に2時間を切っていた。
「そろそろ教室を元に戻さないとまずいかもだよ! みんな!」
俺はそう呼びかけたものの、こんだけ散らかしてしまった教室を元に戻すのは残り2時間やそこらでは不可能だと悟っていた。
「そろそろだぞ」
「え? 何が?」
「散らばった土は穴に戻して、棺桶は丸ごと神社に持っていって供養してもらおう。ここにいるみんなは机と椅子を元に戻してくれ。そして、」
「おらおらおら! 何ちんたらしてんだ! コレ急ピッチで作ってきたぞみんなで」
窓から現れたのは碇くんだった。未来くんたちやここにいなかったみんながぞろぞろとやってきた。手には黒くて大きなボードや布を大量に持っていた。
「そ、それは??」
「学園祭の準備だ。これで穴は隠すって美和と白馬から頼まれてたんだ。なあ未来?」
「ああ。俺たちも美和に言われてその場所が怪しいって思ってな。決して彼方くん、君だけを疑ってたわけじゃないってこと。わかってくれると助かるね。それに
未来くんは俺に、委員長と副委員長が考えていたという学園祭企画提案書を見せてくれた。そこには何度も消しゴムで直して跡があり、真ん中には「メルヘンお化け屋敷」と書かれていた。
「あいつらがやりたかったことだ、彼方。みんなコレを成功させるために後ろ向きでも前を歩こうとしてる」
「そうだね……!」
俺の疑いは晴れたわけじゃない。が、こんなにクラスが1つになったのは初めてだ。最後の最後で委員長と副委員長が2年3組を1つにしてくれたのだと、そんな気がした。
◇
俺たちのクラスはなんとか先生たbちから教室の床をぶち抜いて大穴を作ってしまったことを隠すことができ、真ん中には学園祭の装飾などを置いて誰もそこには座らないようにした。
放課後になり、俺と美和くん、さくらさんで神社に「安土姫ノ神」を持っていくことにした。
「持てるか? さくらが案内してくれる」
「うん。大丈夫だよ」
学園祭準備期間だったため、特に怪しまれることもなくソレを持ち出すことができた。
「これで厄災も終わり……ってこと?」
「半分は終わりだ。委員長と副委員長。死んだのが……何故か2人に増えたって問題がまだ残ってる」
「……そうだね。まだ死体が埋まってるとか?」
「んなわけあるか! 埋まってたとしても安土姫ノ神レベルの怨念が詰まってなきゃ、厄災は発動しねえだろ」
「じゃあ……今度こそほたるさんが言ってた。死者が混ざってるってヤツ……」
「そうだ。未来はまだ彼方を疑ってるっぽいぞ?」
なんとかして無実を証明しなければ、せっかく俺を信じてくれている人たちだっているんだから……。
「俺は絶対違うって証拠……何かあるかな?」
「う~ん、それなんだけど。やっぱりあの「安土姫ノ神」の本の絵。アレがカギになってくると思うんだとね」
「……解読できる人でもいればいいんだけどね」
神社にはいつものように誰も居なかった。安土さんの姿も今日は見えない。きっとあの儀式の縛りは必要なくなったからだろう。
さくらさんの指示で、なるべく神様に近くて他の人の迷惑にならない場所へと埋めることにした。
「じゃあ、ここら辺掘ってくぞ。今度は棺桶が埋まる程度の穴でいいだろ」
「わかった。湿った土で柔らかいから楽だね」
境内の裏。俺たちはシャベルで深く考えずに土を掘っていった。
ただ、「安土姫ノ神」の遺体を奉納するように土に還す。それだけのつもりだった。
――しかし。
厄災はまだ終わらないと自らがそう語るようにソレラは土から顔を出した。
「―――――っ!」
「……なん……で」
何らかの引力によって、姫の遺体を埋めるつもりが、とんでもないものを掘り起こしてしまった……。
ソレは、ほたるさんが遣っていたモノと同じ、「大量の儀式人形」だった。
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