第21話 無藤真白➁
廊下から壁、天井、そして家具すらも全てが白色で統一されていた。
2階奥の部屋の前で待ってるようにとメイド服のようなエプロンを着けた女性に言われた。
「私のことはレイと気軽にお呼びください」
「ここに雇われているんですか?」
「はい。私の母が真白様のご両親と古くからのご関係で、小さい頃から真白様に仕えております」
見た目からの推測だが、年齢は大学生といったところ。蒼いメッシュが入った髪に耳の数え切れないほどのピアスが特徴的だった。都会の大学でバンドをやっているような見た目だが、言葉遣いや歩き方は丁寧さと可憐さを持ち合わせており、無藤真白を大事に思っていることがよく分かる。
「真白様の準備が整いましたので、どうぞ中にお入りください。私は部屋の外におりますので、何かありましたらお声がけください」
「ありがとうございます」
部屋におそるおそる入った。
すぐ正面に彼女は立っていた。
「無藤真白。よろしく」
艶やかな純黒の腰までかかる長い髪にまず目が行った。シャワーを浴びると言っていたので、乾ききっていない髪からポツポツと水滴が垂れている。そして、この部屋も全てが白色だったため、より一層目立っていた。
「髪、まだ濡れてるよ? 俺は、出雲彼方。よろしく」
心配になるほどに細い手足がラフな服を着ていたためはっきりと分かってしまった。顔に掛かった髪の毛の間から見えた薄蒼い目には少しのクマができており、彼女の生活習慣が垣間見える。
「中村くんのこと、知ってるよね?」
「……」
「どうしたの?」
「ゲームやらないの……? 帰る?」
「帰らない! 帰らない! ゲームやらせてください」
テレビ画面に映し出されていたのは、どうやらFPSゲームのようだ。操作方法を聞いていく中で、このゲームは世界中からランダムに集まる50人のオンラインプレイヤーが1つのフィールドで銃撃戦を繰り広げ、最後の3人になった者が勝ちという内容だった。
「はい、君はこっちの画面。音量は自分で調整して」
コントローラーとヘッドホンを無造作に渡され、俺たちはデュアルモニターの前に並んで座った。
このままではまずい。
俺はそう思いながらもゲームスタートボタンを押した。
どうにかして、厄災に関する情報を聞きだしたい。俺は何度もそれに関することで話しかけたが、応えてくれなかった。
そして。30分が経過。
もう10回目のゲームなのだが、一度も勝てない。無藤真白はさすがプロゲーマーか……あれからずっと1位を獲っていた。
「俺が勝ったら、何でも質問に応えてくれないか?」
思い切った提案をした。プロゲーマーなら今始めた俺なんかに負けるはずない。そう思ってこの条件を吞むと俺は賭けに出た。案の定、真白は「いいよ」とテキトーそうに返事をしてくれた。
明日は土曜日で学校はない。たとえ遅い時間になったとしても大丈夫だ。それに奇跡で一勝くらいはいつかできるだろうと甘く考えていた。
…………………………。
――あれから12時間が経った。
時々、レイさんが作ったと思われる食事に感謝しながら食べつつ、一睡もせずに真白とゲームに没頭したのだが、奇跡は1度も起こらなかった。
「勝てそう? 彼方くん」
「……手加減してくれま……せん?」
「手加減して勝って、それ嬉しいの?」
「、う……」
土日は友達の家に泊まると、あばあちゃんに電話を入れ、俺は再びコントローラーをとった。
俺の平均順位は始めた頃は断トツ最下位であったが、今は10位くらいになっている。少しずつだが上達しているようだ。少し悲しい気がするが、前の学校の時に、1人でゲームを長い時間していたことが今まさに活きている。
味方次第ではあるが、あと少しで勝てる……はず。
みんな……俺に力を分けてくれー!
俺は眠気を覚ますように顔を叩き、自分を励ました。
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