第19話 謎ノ再開➂
次の朝。
教室に向かう途中の廊下で凪沙と白馬くんが何やら言い争っているところに出くわした。
特に気まずいわけではなかったのだが、咄嗟に身を180°回転させて隠れてしまった。
「僕や一颯くんは今もクラスに犯人がいると思ってる。いろんな角度から必死に犯人を探している……。修人くんやさくらくんの考えが揺らいでいるのは知ってるだろ? 凪沙くんと夜くん、君たちはどうなんだ? 転校生くんが来てから、口だけで何も行動してないじゃないか!」
「……それは、」
「凪沙くんは根が優しいから……完璧な悪だと分かるまでその腰の竹刀を抜こうともしないんだ。誰かを疑うことをしたくないのはよく分かるよ……。誰かを疑えば、自分が疑われる。疑われなくても、クラスは今以上に崩れてしまう。でも、それじゃあ何も進まないんだよ!」
「……何か証拠でも掴んだのか? 誰を疑ってる?」
「無藤真白くん。彼女は去年、アレが始まってから学校に来ていない……。間桐先生が、親友の死というショッキングな出来事があり、彼女は精神を病んでいると言っていた。でも! 本当にそうか?? きっと彼女は、」
「頭を冷やせ!!」
凪沙は腰の竹刀の先を仲間のはずの白馬くんの顔の前に向けていたのが見えた。いや、本当の仲間と思っているからこそ向けていたのだ。
「……すまない」
突き付けられた竹刀を手で掴んだ白馬くんは想いをぶちまけた。
「凪沙くんはいつも感情だけで突っ走っていく僕や一颯くんをそうやって止めてくれいた。クラスからはみ出さないようにって。……正直に話すと、委員長たちを半分信じていたんだよ。気に食わなかったのはほたるくんがクラスの犠牲になっていたことくらいで……! でも……真司が死んで儀式は失敗した。だから凄く焦ってるんだよ!!」
沈黙が残った。
2人の絆がこんな廊下で終わってしまうのではないかと変に危惧した俺は、いつのまにかに前に飛び出していた。
「ふ、2人とも冷静になろうよ!」
「か、彼方くん? もしかして、見てた?」
「……」
白馬くんは恥ずかしがるように頭に手を置いて、叶うなら、今までのやり取りを綺麗さっぱり忘れてほしいという表情をしていた。
一方、凪沙は第三者が来て、少しほっとしたような安堵の表情を浮かべている。
「どっちも納得できる解決策、あるよ! 白馬くん! 凪沙」
「「?」」
きょとんとした2人の顔を見て、「簡単なことだよ!」と俺は自信満々に説明を始めた。
「白馬くんは理由が不十分なんだけど、とにかくその無藤真白さんがあやしいと思っている。それに対して凪沙はそれは論を急ぎ過ぎているからやめろと思ってる。ならさ! 本人に聞きに行けばいいんだよ! 無藤真白の家の住所、知ってるでしょ?」
あまりにも強引な解決策の提示に2人はさらに混乱している。
しかし。
なんとか2人の言い争いは一時中断となり、俺の考えに耳を傾けてくれた。
放課後、大勢で無藤真白さんの家を訪問するのはさすがにナンセンスであるため、言いだしっぺである白馬くん、そして何故か「彼の見張り役を頼む!」と凪沙に言われた俺の2人で行くことになった。
◇
昼休み。
「無藤の家、行くんだって?」
横から話しかけてきたのは早瀬一颯。白馬くんに負けない、正義感と積極性を持ち合わせている、クラスでは副委員長の次にリーダーシップがありそうな女の子だ。
「白馬くんから聞いたの?」
「ああ。ちなみにだけど、ずっと前に委員長や剣持、他の奴らが行って全員追い返されてる。行っても無駄かもしれない」
「え? でも凪沙や白馬くんは俺が行こうって言っても無理だよとか何も言われなかったよ?」
「それは、出雲彼方という存在に期待しているからだな! お前だけは無藤と初対面だしワンチャンあるかも、って思ってるんだ」
考えてみればそうだ。無藤さんの顔も性格も好きなことすらも名前以外のことは何も知らない。逆に、無藤さんは俺の名前すらも知らないかもしれない。
そう思った瞬間、少し緊張してきた。
「無藤さんってどんな人?」
俺は正直に聞いてみた。
「無藤真白はゴーストだよ」
「へ……?」
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