第9話 厄災ノ始マリ➂
降りしきる雨の中、俺は急いで家に帰った。
「ただいま……」
「おかえり」
おばあちゃんはいつものように清めの塩を用意してくれていた。
俺は今日学校で起きたことを1から話し、あのことについて聞いた。
「この塩、もしやらなかったらどうなるの?」
「厄災がおこる。よくないこと……争いが始まる。今日は疲れたろう、お湯を沸かしてあるからゆっくり入りなさい」
「……うん」
俺はお風呂に浸かり、そのまま目を閉じた。
まぶたの裏に今朝の中村くんの、地獄でも見たかのような顔が鮮明に浮かぶ。
『古臭い
殺人……なわけない。そもそも中村くんを殺す理由なんてどこにもないはずだ。剣持さんたちは委員長たちを疑っていたみたいだけど……。
俺はお風呂から上がりスマホを手に取ると、ずっと話したいと思っていた委員長から連絡が入ってることに気づき、通話ボタンを押した。
『委員長? 今大丈夫?』
『ああ、彼方くん。今日……あんなことがあって、家に帰ってからもずっと生きた心地がしなかった……けど。みんなも同じ不安な気持ちだからこそ、自分はしっかりしなきゃと思ってね』
『やっぱり委員長は優しいよ。今少しだけ安心したよ』
『? そういえば今日はあの後すぐに帰ったんだよね??』
『え……その、』
『剣持さんや白馬くんたちのところに行ったんだね?』
『うん……』
俺は旧音楽室でのことを全部委員長に話した。
『……そうか。本当にすまなかった。転校してきた時から今日まで。何も話せなかった』
『怒ってないの?』
『起きてしまったなら……もう隠せないし、彼方くんも今日からは関係のあることだ。話すよ……』
『ありがとう』
俺は自室に移動してノートとペンを用意して話を聞くことにした。
『2年3組が2つの意見に分かれているのはホント?』
『ああ……その通りだよ』
『じゃあ、安土ほたるさんのことも本当なんだね?』
『それは違うよっ! ……でも客観的に見れば、どう考えても俺たちが悪だ。そう言われる覚悟はできてた……なのに、』
『何があったの? 俺が来る前の2年3組で』
『……ああ、どこから話せば……ちょっと整理させてくれ』
委員長の声はいつになく震えていた。
俺は急かしたりせずに黙って話を待つことにした。
『――――ごめん。やっぱりみんながいるときに話したい』
電話はそのまま切れてしまった。
◇
次の日。
朝起きると、手には携帯電話が握ってあった。俺はどうやらあの後気を失ったように眠ってしまったようだ。
今日は自宅待機期間で学校はない。……委員長からの話は明日聞けるとしても、俺は少しでも早く真実が知りたいと思い、安土さんが頭から砂を被っていた、あの写真の場所に行くことにした。
警察や先生たちが来ていると思い、こっそりと校舎の裏に回った。
奥の神社に続く階段に足をかけようとした瞬間に動く影が視界に入り、咄嗟に顔を上げると安土さんが登っていくのが見えた。
「あっ、安土さん! やっぱりここに毎日来てたんだ!」
「…………」
「あっ待ってよ!」
こちらを振り向くも、無言でまた階段を登り始めたのを俺は見失わないように走って追いかけた。
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