第8話 厄災ノ始マリ➁
「あっ、連れて来たんだ~凪沙」
「下手に向こう側に付かれても困るだろ」
いったいどういう集まりなのだろう。
白馬くん、美和くん、早瀬さん、花笠さん、守屋さん。
「他のみんなは?」
「これで全員だ」
全員の疑いの視線が俺に集まっているのが分かる。あの日の自己紹介の時とは全然違う雰囲気だ。まるでこれからクーデターでも起こそうとしているチーム……そんな何かを覚悟した雰囲気だった。
「ちょっと彼方くんに聞きたいことがあるんだけどさ、2年3組のことどう思ってる? ……真司が突然死んだ2年3組のことを」
白馬くんの充血している目が鋭くこちらを向いていて、声もいつもよりワントーン低い。
「委員長たちは入学から今もずっと、何かを隠している。それを委員長はルールと言っていた。俺はおそらくそれが……安土ほたるという女子に関係があるんじゃないかと思ってるんだ。それが中村くんの件と繋がってるかはわからないけど……」
「安土ほたる……か。彼女に関すること全てがタブーってそう思ったのかい?」
「うん」
「それは正解だよ。彼女は半年前から……委員長たちの犠牲者だ」
「犠牲者……? いじめられてるのか?」
彼女の肩にかかっていた土のことを思い出した。
やっぱり……そういうことなのか?
でも……。
「そんなわけないだろ? 委員長たちは何かを隠していた、けどいつも優しかったのは事実だし、きっと何か理由が……」
「じゃあ、これを見ろ」
白馬くんの後ろから勢いよく出てきた美和くんがスマホを画面を俺の顔の前に近くに見えるように出して見せた。
それは、校舎奥にある神社の鳥居に座り込んでいる安土ほたるが自ら頭に砂をかけている写真だった。いたずらで安土さんに似た人がやってるわけでもなく、手の凝った合成写真でもない。
「ど、どういうこと?! 安土さんは何をやってるんだよこれは!」
「イカレた伝承……言い伝え……安土村の悪しき文化だ。それを委員長たちは信じ込み、去年にクラスで始まった謎の死を止めようとしてる」
「ごめん、剣持さん。俺はこの村のことはほとんど知らなくて……その伝承? ってのはどういうものなの?」
「簡単に言うと死者の蘇生話だ。安土村には、外から家に入る前に清めの塩を体にかける文化があるのは知ってるか?」
「それおばあちゃんが言ってたやつだ……死んだ者の魂が自分が死んだことに気づかずに、間違えて家に入ってきてしまうとか、なんとかって……」
「そう。塩をかける、ってのがこの話の大事なとこだ。じゃあ、塩をかけなかったどうなる?」
「まさか! 学校は……教室は関係ないだろ??」
「委員長たちはそれが関係あると思って、安土ほたるを利用している。そしてもう、わかるだろ? 2年3組には2つの派閥が今できてる」
…………。
死者の蘇生話? とやらを信じ、それを安土ほたるが写真で行っていたような謎の儀式で止めようとしていた委員長たち。
反対に、その蘇生話を信じず、他に原因(犯人)がいると疑っている剣持さんたち。
……というわけか。
「……ここに居るみんなはじゃあ、クラスの誰かが犯人だと思ってるの? いったい誰を疑って、」
「それを私たちは探しているとこ。
「俺は……まだわからない。ごめん……少し疲れてるみたいで、……」
…………
「あ~あ、帰っちゃったね」
「俺たちのやることは変わらない。あいつらを殺したヤツを必ず探し出す」
「でもさぁ~? 美和くんさぁ。委員長たちに加担する気はないんだけどさぁ……ホントに安土さんのヤツで止まってたよね……。どうしてまた今になって……」
「ったく……。花笠! お前どっちの味方だよ。昔話なんてもう信じることないだろ? 今日の中村のはその伝承が間違ってたって証明だろ?」
「違う! 違う! その伝承ってたしかこんな話だったでしょ? ……」
…………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます