霊獣は居るだけでお得、それが新常識!

第25話 なっちゃう? Sランク

「頼忠君。君、今後戦闘参加禁止ね?」


「え、なんでですか?」


「なんでもかんでも、こうやって毎回毎回宝物を持ってくるから周囲の目が君をどうやって搾取しようかって考えに至るんだよ。ほら、クラン宛に何度も意味不明な催促が来てる。見たまえ」


「拝見します」



 朝から蓬莱さんに呼び出しを喰らって、何事かと思ってたらお小言を食らった。

 その原因はどうやら価値を正しく理解せずに何でもかんでもあげてしまう俺が原因らしい。


 今から二ヶ月前、幼馴染の慎がもたらした案件。

 その一週間後に行われた無茶振りの応酬。

 その配信で行った『天上天下ワクワクプレゼント係』の次回配布はいつになるのか、と続いて当たり前のようなお便りが世界各国から何通も届くそうだ。

 それと言うのも俺がゴールドボックスやらレインボーボックスをバカスカ出しているのを見て居る奴がいるからで……それで期待してしまうらしい。



「で、どう思う? 私は君からの意見も聞かずに決めてしまうのはどうかと思ってるんだが、同時にこれは君の身柄を守る為の措置でもあるんだ」


「それを持ち出されると確かに。いつの間にか俺は有名人になってしまってたみたいですね」


「何を今更。世間の注目度はアイリーンを出し抜いて君がトップだよ? 早く君を戦場に寄越してくれ、なんて催促も増えてきている。でも君が戦闘に参加できない旨を提示すればどうだい? 向こうは金の鍵、虹の鍵、レインボーボックスの入手手段を失い、たちまち君から興味をなくすだろう」


「なるほど、実は俺もレベルが伸び悩んでいたんでこれ以上戦闘の介入もどうかなって思ってたんですよ」


「へぇ、バカみたいにレベル上昇速度の高い君が伸び悩むことなんてあるんだ。参考までに聞かせてくれるかい?」


「100っすねぇ。どうもここで打ち止めみたいっす」


「あっはははは!」



 笑われた。解せぬ。



「なんで笑うんすか?」


「100なんてバカみたいな数字が出てきたからだよ。人間の成長限界は80までとされてる世界で100だよ? 誰だって笑うさ。そもそも世界ランク1位のジェイムス・マッケンジーが80で、彼の為にSランクなるものが設立されるかもってダンジョンニュース速報で流れてたくらいに君は常識の外にいる」


「でも、生態チェックで100を弾き出してるんすよね。ほら、ライセンスカード」


「本当じゃん?」


「だから嘘なんて言ってませんって」


「だとしたら君、Sランクの獲得資格が発行されるよ?」


「でもそれって国からの要請に逆らえない奴ですよね?」


「それはA〜Bまでの話だね」


「Sは違うんですか?」


「私は君にジェイムスのお話をしたっけか?」


「聞いたことないっすね」


「なら話そう。彼は人間を完全に辞めてしまい化け物となった探索者なんだよ」


「ウケるwww」


「笑い事じゃないんだよ? 彼に殺された軍人は多いんだ。彼はとにかく自分より弱い奴に見下されるのが嫌いでね。だからSランクという檻を引き合いに出して国は接触禁止の御触れを出したいんだ」


「はぁ、でもそんな危険人物と俺が一緒の檻に入っちゃってもいいんすかね?」


「人々を破滅させるって意味合いでは似たようなもんだよ。特に君の場合は配信を見た者の希望と絶望を同時に与えて勝手に落ち込ませるという負のスパイラルを作り出してるんだ」


「不可抗力じゃないっすか」


「ジェイムスだって不可抗力さ。彼は本当は優しい人間なんだ。でも力を持ちすぎてしまった。最初こそはその筋力の高さに期待していた周囲の人間は彼を王として持て囃し始めた」


「あ、なんかオチが見えてきましたね」


「そう、勝手に崇拝されてそれが当たり前になった彼は傲岸不遜な態度を取るようになった。王として相応しいように周囲からの勝手な妄想を植え付けられてしまったんだ。彼としては不本意でも、心優しい彼は断るということを知らなかった」


「あれ、なんか微妙に俺と似てますね、ジェイムス氏。親近感湧くなぁ」


「似てるというよりは生き別れの兄弟かってくらいそっくりだよ。なんせ彼のスキル【パワー!】は筋力を100にする代わり他のステータスを1にするというとんでもないスキルだったんだ」



 あー、俺のスキルの筋力版か。じゃあそっくりでも仕方ないわ。

 だってあれ、レベル上がる度になんもしなくても勝手に100づつ上がってくし。ムキムキマンになるのもしゃあないわ。

 


「じゃあジェイムス氏の筋力は8000越えですか?」


「装備の充実で10000は超えているんじゃないかって言われてるよ。Sランクへの加入条件はどこかのステータスが10000を超えてることが条件になるそうだよ」


「あ、じゃあ俺はとっくに満たしてますね」


「まあレベル100なら……って何これ!?」



 生態チェックのステータス部分を渡すと、面白いくらいに驚かれた。俺のステータスは今こうなっている!



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 飯狗頼忠

 レベル:100【上限】

 称号 :死に抗う者、クレイジープレゼンター

 探索ランク:C

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 筋  力:  100  【+120】  220

 知  識:   90  【+108】  198

 耐  久:  110  【+132】  242

 精  神:  140  【+168】  308

 器  用:  150  【+180】  330

 敏  捷:  120  【+144】  262

 幸  運:10000【+12000】22000

 

 H  P耐久×1.5:  363

 M  P知識×1.5:  297

 物理攻撃筋力+器用÷2:  105

 物理防御耐久+筋力÷2:  231

 魔法攻撃知識+精神÷2:  253

 魔法防御精神+耐久÷2:  275

 投  擲器用+幸運÷2:11165

 回  避敏捷+幸運÷2:11131

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 <スキル>

【+1】発動確率50%×幸運補正

【+2】発動確率25%×幸運補正

【+3】発動確率10%×幸運補正

【+5】発動確率0.1%×幸運補正

◎行動回数、ドロップ再抽選に大きく影響する/パッシブ

 

【レベル+1】発動率1%×幸運補正

【レベル+2】発動率0.01%×幸運補正

◎レベル上昇時、確率でレベルアップ/パッシブ

 

【霊獣枠+1】

◎霊獣の最大所持枠を2に増加させる/パッシブ

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 

 <霊獣:ラッキーラビット>

 ピョン吉、ピョン次、ピョン美、ピョン子、ピョン奈、ピョン太

 位階:壱

 ◎主人のステータスを参照し、20%を主人に還元【個体別】

 ◎一日一回、即死判定を無効化してくれる【個体別】

 <霊獣:ーー>

 位階:ーー

 ◎ーー

 ◎ーー

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「なんでこんなことになってるの!? 元の数値の倍以上あるじゃない! 装備は……今つけてないし。なんなのこれ!?」


「配信の時獲得したラッキーラビット、いるじゃないですか」


「ああ、あの君の側にだけやたら群れてた」


「どうやらあの子達の影響っぽいです。個体ごとの性能が、主人のステータスを反映させて20%を主人に還元が本来の性能っぽいんですけど……」


「6匹いるから120%に膨れ上がっちゃってる?」


「そんな感じです。あとこの子達、俺が死にそうになったら個体ごとに一回だけ身代わりになってくれるらしいんす」


「減ってしまうの?」


「アストラル体に戻るだけで、翌日には復活しますね」


「じゃあ君の周りにうさぎちゃんがいる限り無敵というわけね?」


「それと周囲の動きが止まって見えるほどの反応+回避力と投擲力を併せ持つんで」


「まずダメージを与えられないと?」


「死ぬ未来が見えないんすよね」


「普通に化け物なのよね。なんでまだ高校に通ってんの?」


「いやぁ、アイリーンさんや蓬莱さん見てると俺くらいは学生生活を満喫しとかないとって気になるじゃないですか? それに彼女もできたし、今人生最高潮なんですよ」


「お金目当てじゃないといいわね? モテたって頼忠君の稼いだお金目当てなら、渡した瞬間逃げるわよ?」


「その心配はないですね。俺の彼女要石さんなんで」


「あぁ、洗浄の子ね、なら大丈夫か。あの子食欲しかないから」


「それはそれで失礼ですね?」



 確かに食い意地張ってるけど。

 いちおう清い関係だかんな?



「そもそも彼女、聖女の素質があるみたいだからそっち系の留学するって乗り気で」


「あー、じゃあまだ手をつけてないんだ?」


「向こうも俺にそっち関連は期待してないっすね」


「メッシー君なんだよなぁ。彼女はどんどんすごくなっていくと思うんだよ、私は。上位聖女くらいまでなっちゃうんじゃないの?」


「だから俺もこのまま一般探索者でいいものか迷ってるんすよ。まぁ彼女が俺にべったりくっついてくれるおかげで美人局つつもたせ被害はめっきり減りましたね」


「君、学校でそんな被害受けてたの? 言ってよ。校長に威圧かけるなりなんなりするのに」


「女の子に言い寄られるのって、非モテの俺からしたら嘘でも嬉しいんすよ。たとえ裏があっても逆らえないんす」


「君はもっとこう、自分に自信を持ちなさい。謙虚すぎる君は見ていて辛いな。で、話を戻すんだけどSランク認定試験は受けるかい? もし受けるんなら今週中にランクをAまで上げておきなさい。なぁに、君ならすぐさ。ワイバーンのドロップ品くらい余裕で回収可能だろう?」


「あー、悩みますね。これ以上親にも迷惑をかけたくないんで箔付程度に取っておこうかな?」


「むしろ取ることで迷惑かけまくりだと思うけど……」


「えっ、そうなんですか!」


「トンビが鷹を産んだ、なんて自分が息子より劣るみたいな被虐精神を持つ親世代は少なくないよ。君のお父さんは現役の探索者だろう? だったら尚更さ。確かランクは……」


「現役のAランクっすね」


「そう、Aなら特に……ってAランク!?」


「ゴールドボックスから装備二式、レインボーボックスから霊獣を引いて今日も元気にパーティメンバーとBランクダンジョン行ってますよ」


「君、ご家族にそんな優遇しちゃダメじゃないか。だから美人局が横行するんだよ?」


「いや、俺親父にそんなプレゼントしてないっすよ?」


「じゃあどうしてそんな高級装備を!?」


「普通に蓬莱オークションから落札してますね、俺の金で」


「そっちか!」



 オークションで支払われた金は一部手数料が引かれて俺の下に転がり込んでくる。それを家族であり、大黒柱でお金の管理もしてる親父が勝手に使い込んだのだ。

 後で返すから、といまだに返済されることなく借金を罪を重ね続けている。

 ちなみに有る度に使う事からもう親父に通帳の管理を任せるのは辞める! と母さん預かりとなったのは親父がユニーク装備を粗方揃え終わった後だった。


 親父が俺にした借金は総額7000億。

 踏み倒すのが目に見えているが、俺としては親に長生きしてほしいので、利息はつけずに見守っている。


 それでも母さんからの取り立てが厳しく、今日もお宝目当てでワイバーンのドロップを当てに行くのだ。

 ちなみにこのドロップ品に限っては金で買って数を揃えてもいいとされている。

 その代わりアホみたいに高いので、その金額を稼げるのもAランクに上がれる資質とされた。



「じゃあ息子にひと足先に上に行かれた程度で済むか」


「ですねー。でもうちの親父のステータス、言っちゃなんですけどユニークアイテム頼りのところがあるんで他のAランクに比べてステータスが平均より低いんですよね。俺よりは高いんですけど」


「そりゃ、レベルと霊獣の暴力で底上げした君より高いのはザラさ。それでもCからB、BからAの境界線は果てしなく遠い。君が思ってる以上にね」


「俺、Aまで登れるんでしょうか?」


「登れるさ。納品数においては君に勝る相手は居ないくらいにダンジョンセンターは儲けさせてもらってると思うよ? 政府だってさっさと君を顎で使いたいのに、なんでまだCなのかって疑問視してるんだよ?」


「そりゃ顎で使われるのが嫌だからに決まってんでしょ?」



 当たり前だよなぁ?

 俺の回答に蓬莱さんは大きなため息を吐いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る