第6話 もういいや、テキトーに焼いて喰っちまえ。

 

 

 今夜の寝床を確保したら、改めて凍らせといたデカ・キバネズミ(仮)の解体と下処理だぁね。集めたら13体もあったんで、とりあえず試しに1体をカッ捌いてやりやす。もちろん魔法で。


 まず魔法的に凍ってるネズちゃんを解凍しマウス。元々こういうノリだから許してちょーだい。


 でろーんと横たわるヌートリアサイズのネズを前にどうすっかと考える。血抜きしないと生臭くて喰えたもんじゃないらしいから、それはマストとして。どうやって抜き取るかだわね。


 血管を巡ってる血液を想像して……あと内蔵関係も怪しいからついでに全部取っちまえ。


「……うし。いらんもん全部、出てこいや!」


 ガッ! と気合を入れて引きずり出すような動きをすればアラ不思議、横たわるネズの上空に血の球体カタマリと臓物一式が……おげ~。


「さすがにダイレクトはエグぅ……」


 ちょいと遠くへ念力で移動させて、指パッチンで空中焼却処分。音は鳴んなかったけども魔法は発動したからヨシ! としとこう。


 寒かったら防寒に使えんじゃね? と毛皮は残す方向でひっぺがし、爪とかキバとかシッポとか目ん玉とかいらんモンはポポイしてファイアーファイアー。毛皮の処理はお高そうなコートなんかを思い出して、あんな感じで上手いことやってくれたまへと念じたら、なんかくすんでた毛並みがピッカピカでフワッフワになってましたとさ。形はネズミーから剥いだそのまんまだけどな!


 これが思いのほか触り心地がいいでやんの。そういや戦前には軍服の素材にしたくてヌートリアを日本へ持ってきてたハズ。戦後のドサクサで野放しにされて害獣扱いされてんのがなんとも。自分勝手の極み案件だわなぁ。


 つなげて敷くのと上から被る用にじゃんじゃん魔法でカッ捌いて、足りない分は探し回ったら追加で生きてるやつ9体をゲット。気づいたら目の前に積み上がるネズ肉ピラミッドとネズ毛皮の敷物と毛布もどき。こんなモンどうやって喰うんじゃ~と誰かさんのボイスで再生されつつ、楽しかったからもうどうでもいいやとネズ肉を瞬間冷凍。その辺の雑草から分解して作ったショボ紙にくるんで、変なのが寄ってこないように土のブロックから成形したフタ付き冷凍ボックスに突っ込んで隔離しておく。


 くり抜いた中身の土で大きなツボをひっくり返したような形のなんちゃってタンドールを作成。草の繊維をバーベキュー用のぶっとい焼串に加工して、熱対策に土から取り出したシリコーン樹脂をコーティング。もはやフェンシングの剣みたいな超ロング焼串にぶつ切りしたネズ肉をブッ刺してタンドールの中に立てて並べ、真ん中に魔力で温度を調節できるようにしたマグマ石を置いて、レッツグリル!


 土ブロックの台に自分で生み出したマグマプレートを直接置いて発熱させたほうが設置も解体も楽なんだけどさ。今回は遠赤外線と密閉効果で確実に火を通すのを重視してみた。しょっぱなから腹痛ハライタでのたうち回んのはカンベンな。病気したら一発アウトになりかねんし。


 雑草ばっかでハーブっぽいのは無さそうだから、ネズ肉を焼いてる間に土から塩分だけ抜けんかなと土砂1トンで試してみたら、200グラムぐらい採れるでやんの。思ったよりは多いな。


 こんだけあんならそれなりに使えそう。雑草の繊維で紙皿と厚めの紙袋を用意して、使わない分は袋に入れておく。ハチでもいたらハチミツとか蜜蝋が使えて色々できんだけど。まあゼイタクは言わんよ。


 焦げる手前ぐらいしっかり焼いて、土から作ったセラミックナイフもどきで適当に切って断面を確認。虫はパッと見、いないっぽい。効くか分からんけどヤバい菌とか絶対コロスビーム、略して絶コロビームを焼けたネズ肉に照射しときました。手のひらから特撮みたいなムラサキ光線出てやんの。我ながらどんなイメージしてんだコレ。紫外線? とにかくこういうのは気分で半分ぐらいどうにかなる。もう半分は知らん。


 焼けたやつから雑草厚紙の大皿トレーに乗せてって、絶コロビームしたら適当に塩をパラっとしてイタダキマス。誰も見てないし手づかみじゃい。


 骨の感じからしてパッと見はトリみたい。味は……普通に肉。そりゃクッサいけどネズ系なんだしこんなモンでしょ。南米のスパイス効かせた豆煮込みとか似合いそう。トマトみたいなのあんのかね、この世界。


 肉だけ1キロ近くなんて初めて喰ったかも。どっかの三代目ばりに消耗してたらしい。水魔法で出した水をガブ飲みして、ついでにベッタベタの手とか洗うべと宇宙ステーションの映像で見たような球体の水に洗浄作用を足したら超スッキリ。


 顔もいけるやろと水球に頭ごと突っ込んだらビタッと張り付いて死ぬかと思った。おかげで大してやってない化粧までバッチリ取れてオモテ出らんないツラだこと。もう寝るぐらいしか無いし良いけどさ。


 肉のニオイなんかは残ってると厄介そうだし消臭。なんちゃってタンドールの周囲をすっぽりと土のドームでフタしておいて、半地下の寝床スペースの入り口に土ブロックのバリケードを置いたら、空気穴を残して塞いじゃおうね~。


 ブロックを並べた土ベッドの上に、雑草繊維を太めの縮れ麺みたいにして網目状に絡めたマットレスとピロ―……ぶっちゃけあの商品だわね。それらを置いてネズ毛皮の敷物をしいたら、毛布もどきを被ってオヤスミナサイ。一応何かが来たら防げるようにシールドは張っておく。


 うむ、ネズ毛皮が思いのほか快適。これホントに防寒にも使えるわ。あのマットも気になっててサイトで構造を見てたのが役に立つとは。おかげで一帯の草原がハゲ散らかしちゃったぜ。テヘペロ。


 よく分からんまんまに一日が終わった。とりあえずどうすんだかは寝て朝になったらだ。流石に疲れた……。


「あ~化粧どうしよ。スキンケアも……なんか魔法で出来るか」



 保湿とかなんやら、キレイになーれ。ちちんぷいぷい。ぐう。

 

 

 

 

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