【閑話、第55話時点】タント王立大学にて
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私は、タント王国のアシムビナッフィットだ。古代史が専門の歴史学者で、王立博物館の館長をしておる。
今日は、タント王立大学に招かれて、学生たちに考古学の講義をした。
この大学は、我が国における最高学府だけあって、皆、とても優秀じゃ。
今日は、イースの事を題材に話したが、講義を終え、いくつか質問があった。
本作を読み進める上で、参考になるやも知れんから、その時の様子をお伝えしよう。
会場には、70人程度の学生が集まっており、中には眠そうな顔をしている者もおる。私の話し方が悪いのだろうか?
少し、反省してしまう …。
このような中、最前列の、いかにも現代っ子といった感じの女子学生が手を挙げた。
「いにしえの遥か昔に、超人的な騎士や魔法使いが群雄割拠していたと言われますが、先生はそのような事を、本当に信じているのですか?」
彼女の揶揄うような顔を見て、少し腹が立ってしまった。だが、直ぐに、大人げないと思い反省した。
「遺跡から多くの魔道具が発掘されているから、私は、実際にあった事だと考えておる。 魔道士が絶えてしまい、これらの道具を使う事ができず証明できんが …。 だがな、古文書に書かれておる『魔道書』が見つかれば証明できるやも知れん。 多くの考古学者が、この書を、血眼になって、探しておるんじゃよ」
私が答えると、多くの学生から冷ややかな顔をされてしまった。いつもの事ではあるが、とても残念に思ってしまう。
「僕は、信じます! そこで、質問です。 講義の時に『感情の鎖』のお話がありましたが、古代魔道具とは、どのような物なんですか?」
今度は、中ほどの席の、黒縁メガネを掛けた、真面目そうな男子学生から、私を、励ますような質問があった。
「古代魔道具とは、いにしえの時代よりさらに遡った古い時代に、魔王が作った道具だとされておる。 古文書に載っている古代魔道具としては、『感情の鎖』が1本、『魔法のマント』が3枚、『長剣』が1本、『魔杖』が1本あった。 これらは、魔道士のジャームが、ダンジョンの奥深くで魔族から奪ったとされておる。 古代魔道具の種類や詳細は『魔道書』に書かれておる。 だから、この書が見つかれば大きな進歩に繋がるんじゃ。 実は、この『魔道書』も魔王が書いたとされておる」
私は、話した後、学生達を見渡した。
すると、最後列の金髪の美しい女子学生が質問してきた。綺麗な人だと、この歳になっても嬉しいものじゃ。
「先ほどの講義では、魔道士ジャーム以外の者が古代魔道具を所持していましたが、『魔道書』を含め、古代魔道具が、ジャームから誰に渡ったのか教えてください」
「うーむ、良い質問じゃ。 まず、2冊の『魔道書』だが、1冊はワムに、1冊はマサンに渡った。 ワムは幼馴染のメディアに渡したが、恐らくは、夫のグラン伯爵を通じて、倅のシモンへ渡ったようだ。 そして、シモンは、ビクトリアとガーラに貸し出しているだろう。 それから、マサンの分だが、イースに渡した。 『感情の鎖』だが、恐らくは、グランがジャームより盗んだようだ。 3枚の『魔法のマント』だが、マサンに1枚、ジャームからビクトリアに1枚、ジャームからベスタフを通じイースに1枚が渡っておる。 『長剣』は、ジャームからイースに渡した。 最後に、『魔杖』だが、ワムが、ジャームの死後に盗んだ」
講義の内容に興味のある学生は、しっかりと聞いているようだな …。
嬉しい限りじゃ。
この後も、いくつか質問はあったが、大した内容でなかったので、この辺で話を終える事にする。
タント王国 王立博物館
館長 アシムビナフィット
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