第16話変わらない日常

 学校に着き校門の前はたくさんの生徒で溢れ返っていた。

「クラス発表もあるから人いっぱいだね」

「そうだね。手分けして名前探そうか。俺は右から美桜は左から3組の掲示板前に集合しようか」

「うん分かった」

 それから俺たちは手分けして自分の名前を探しに行った。俺の学年は全部で5クラスあり俺は5組から順に名簿を見に行った。だが、5組の名簿にも4組の名簿にも俺と美桜の名前はなかった。1組2組のどちらかにあるのかとも思ったが美桜も同じようになかったという。ということは二人そろって3組ということになる。

「見落としがない限り3組ということは確定してるけど一応確認しておこうか」

「そうだね」

 3組の名簿を上から下へ目を皿のようにして見る。下の方に行くと最初に俺の名前が書いてあった。それからもう少し下に美桜の名前があった。

「あった、あったよ隼人くんまた一緒だよ」

「よかった。めっちゃ嬉しい」

 俺たちは二人そろって笑い合った。

 俺はこれからも美桜と一緒にたくさんの思い出を作れることに期待を膨らませていた。

「また一年間よろしくお願いします」

 そう言って美桜はお辞儀した。それを見た俺も慌てて応えた。

「こちらこそよろしくお願いします」

 俺も深々とお辞儀した。

 校舎に入り靴を履き替え新しいクラスに美桜と一緒に向かった。教室の中に入り、次は座席表を見て自分の座席を確認した。

 俺は真ん中の列の一番後ろの席になった。

 少しして俺たちは始業式に向かった。校長の長い話に欠伸をしながら聞き自己紹介や提出物を提出し今日は下校した。帰り道にで少し美桜と一緒に河川敷に行き桜の下を歩て帰った。

 それからは休み明けの実力テストを受けたり遠足に行ったりそんな何気ない日常が続き春が過ぎ梅雨を過ぎ夏休み前になった。この間美桜は何度か体調を崩したが入院するほど病状が悪化したりすることなく日々を過ごしていた。

「もうすっかり夏だね」

「そうだね」

 俺たちは二人でパピコを咥え肌を焼きながら帰宅した。

 今日も何気ない日常だったな…と思っていた矢先また美桜は入院することになった。

 夏休みを1週間後控えたある日、俺はいつもと同じように美桜を迎えに行った。でも美桜はいつも自分の家の前で俺を待ってくれているが、今日はそこに美桜はいなかった。俺は美桜の家のインターフォンを押したが反応はなかった。時間もそろそろやばくなってきたから俺は美桜にメールをして学校に向かった。久しぶに一人で学校に向かうことに違和感と寂しさを覚えながら歩いた。

 昼休み一人でいた俺に悟と南さんが声を掛けてくれた。一緒に昼食をとることになった。

「最近美桜休むこと多いね」

 南さんが心配そうに言ってきた。悟も「確かにな~気温差かな?」とパンを咥えながら言っていた。二人は美桜が病気なことを知らない。

「どうだろう。でもこうも頻繁に体調崩されるとちょっと心配だな」

「そうよ。なんか美桜から連絡来てないの?」

「今のところは何も…」

「そっか」と南さんがさらに心配していた悟も「何かあったら力になる」と言ってくれた。

「ありがとう」

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り俺たちは教室へと戻る。俺はふと自分のスマホを見ると美桜から一件の連絡があった。

『隼人くん今日一緒に学校行けなくてごめんね。また入院することになっちゃた。でも病状が悪化したとかじゃなくて検査入院みたいなものだからすぐ退院できると思う」

 俺はメールを読み安堵する。帰りに見舞いに行くことを美桜に伝え午後の授業を受けた。

 学校も終わり俺は美桜のいる病院に向かっていた。春休み以来の来院で少し緊張したが美桜のいる病室に着きノックをしてから病室に入る。

「あ、隼人くんきてくれたんだ!」

 と、美桜が嬉しそうにはしゃいでいる。

「うん心配だったから。体調は?最近学校も休みがちだったけど大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。むしろちょっと熱いくらい」

 そういう美桜を見て俺は胸を撫で下ろした。

「いつ頃に退院できるの?」

「2,3日後ってお医者さんが言ってた」

「そっかじゃあ学校も最後の日は出れるんだ」

「うんまた一緒に行こうね」

 美桜がそう言ってくれたことに俺は少し照れくさくて顔を背けてしまった。

 それからは今日あったことや最近話題のアニメや漫画なんかの話で盛り上がった。久しぶりに美桜と趣味について語れて俺は大満足だった。

 3日が経ち

 今日は美桜が退院して久しぶりに一緒に登校できる。足取りが軽くなる。美桜の家の前まで行くとそこには美桜が立っていた。美桜が俺に気づいた。

「おはよ隼人くん」

「おはよ美桜」

 俺たちは変わらない挨拶を交わし変わらない通学路を手をつなぎながら二人で歩き出した。

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