第9話迷子の男の子

 1月4日 西川家

 家にインターフォンの音が鳴り響いた。その音を聞いて応対したのは母さんだった。自分の部屋で準備していた僕に明城さんが来たことを大声で階段、下から言ってきた。母さんは「もしかして彼女~」とかからかってきたけど、僕は「全然違う」としっかりと否定した。外に出て、年を越して初めて会った明城さんに

 「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします。」

 とありきたりな新年の挨拶をした。明城さんも

 「あけましておめでとう。今年もよろしく」

 と新年の挨拶をした。

 「じゃあ行こうか」

 明城さんがそう言って踵を返す。


 僕と明城さんは近くの大きな神社に来ていた。

 「2回目の初詣なんか意味あると思えないんだけど」

 「まぁまぁいいじゃん。ほら私の着物姿見られたんだから。」

 明城さんは着物を着ていた、僕は普通に私服で来ていた。

 「そんなに本気だとは思ってなかったけど。言ってくれれば僕も着物着てきたのに」

 僕たちはそのまま手を洗い、願い事をするために長蛇の列に並んだ。

 「あ、」 

 明城さんがそんな声を出した

 「どうしたの?」

 「ほらあそこ小さい子が泣いてる」

 「本当だ。親とはぐれたのかな?」

 「じゃぁ、あの子の親一緒に探してあげようよ」

 「え?本気で言ってるまたこの列に並ばなきゃいけなくなるよ」

 「いいよ別に今日これから予定ないし」

 明城さんはこうなったら絶対に折れないということを僕はこの数か月で知った。僕は観念して明城さんに着いていった。

 「ね僕どうしたの?お母さんとはぐれたの?」

 明城さんは小さな男の子に優しく声をかけた。するとその男の子は

 「う、うん。お母さんとはぐれちゃって。」

 「じゃあお姉さん達とお母さん、探そっか」

 そう、明城さんが言うと、男の子は目を輝かせた。

 「え!!いいの!?」

 「うん良いよ。一緒に探そうか。お母さんの服装とか覚えてる?」

 「う~んと黒色のジャンパーに白色のなんか長いの」

 「分かったよ。じゃあ探していこうか。ほら西川君も行くよ。」

 僕はそう言って男の子の手をつなぐ明城さんを追いかけた。

 「そういえば君、名前は?」

 「健太、谷村健太」

 「そっか。健太君か~私は美桜よろしく。でこっちは隼人君」

 そう明城さんは僕も含めて自己紹介をした。僕は健太君に

 「よろしく」

 と短く言った。それでも健太君は元気よく

 「うん!!よろしく美桜お姉ちゃんに隼人お兄ちゃん」

 「うん。よろしく健太君」

  明城さんも元気よく健太君に返した。

 それから僕たちは健太君の母親を探しに鳥居の方へ向かった。

 「う~んいないね~。もうちょっとこの辺探してみようか」

 鳥居をくぐって屋台のある方へ行った。すると

 ぐうぅぅぅ~

 と音がした。

 「あはは、お腹減ったね。何か食べる?」

 と明城さんが健太君に聞いた。健太君は

 「うん。お腹減ったけどお金がないから……」

 「お金なら私たちが出してあげるから、好きなの食べていいよ」

 「で、でも」

 「いいから、いいから。ほら何食べたい?」

 明城さんは健太君に言った。

 「じゃ、じゃあ、唐揚げとりんご飴」

 「いいよ。じゃあ買いに行こう」

 そう明城さんは言って。健太君の手を引いて買いに行こうとした。

 「唐揚げは僕が買ってくるよ」

 「え?西川君も一緒に買いに行こうよ」

 「いやあれ見てよ」

 僕は唐揚げを買おうとしている長蛇の列を指さした

 「た、確かに」

 明城さんは顔を引きつっていた。

 「じゃあ私たちはりんご飴買ってくね。買ったらまた連絡するよ。」

 「うん。気を付けて」

 そう言って明城さんと健太君はりんご飴を買いに行った。

 「はぁ、僕も並ぶか~」

 それから僕は唐揚げを買うために、長蛇の列に並んだ。

 それから20~30分待ってからようやく唐揚げを買えた。待っている間に明城さんから屋台近くの休憩所にいると連絡が来ていた。僕はそこに行った。

 僕が休憩所に着くと明城さんが手を振って僕を呼んでいた。

 「おーーい。西川くーーんこっちだよ」

 僕は聞こえた声の方に行った。

 「はいこれ唐揚げ」

 「わあぁぁありがとお兄ちゃん食べてもいい?」

 「良いよ落ち着いて食べね」 

 健太君は唐揚げを勢い良く唐揚げを食べていた。

 「この子の親早く探してあげないとね」

 明城さんは心配そうに言った。

 「そうだね」

 「お兄ちゃん達も食べる?」

 健太君はそう言って串に刺さっている唐揚げを二本差し出してきた。

 「うん食べる食べる。」

 明城さんは嬉しそうに唐揚げを受けっとって一つを僕に手渡した。僕はそれを受け取った。

 「ありがと。健太君」

 僕は受け取った唐揚げを食べた。明城さんも健太君にお礼を言って唐揚げを食べた。健太君は美味しそうに唐揚げを食べ続けていた。

 「美味しいね健太君」

 「うん!!」

 それから僕たち三人は唐揚げを食べ終え、健太君の親を探しに行った。

 「ていうか、迷子センター的なのないのかな?」

 僕はそんなことを言った。

 「確かに、これだけ人が多いと人ひとり探すのも苦労するね一回お賽銭のところに戻って巫女さんに聞くしかないね」

 明城さんも僕の考えに賛成してくれた。

 僕たちはお賽銭のところに行った。巫女さんに事情を話し、アナウンスしてもらえることになった。

 「迷子のお知らせをいたします。名前は谷島健太君。年は5歳。服装は黒い長靴に青いジャンパー。お心当たりのある方は、おみくじ売り場横の迷子センターまでお越しください。」

 それから10分ぐらい経ってから健太君のお母さんがやって来た。

 「あ、お母さん!!」

 健太君は大きく手を振った。

 「健太!!もうどこに行ってたの!!心配したじゃない」

 「ごめんなさい」

 健太君がしょんぼりした。健太君のお母さんが振り返って僕たちを見た。

 「ありがとうございます。本当にお世話になりました。」

 健太君のお母さんが僕たちにお礼をしてきた。

 「いえいえ気にしないでください。楽しかったので」

 明城さんが言った。

 「それにりんご飴まで本当になんとお詫びすればいいのか。あ、お金を……」

 「いえいえ、本当に気にしないでください」

 明城さんは健太君のお母さんの言葉を遮るように言った。

 「それじゃあ無事にお母さんも見つかったことだし、私たちもお祈りしに行こうか」

 「そうだね。またあの長蛇の列に並ぶのは時間がかかりそうだしね。それじゃあ僕らはこれで。」

 「健太君も、もうお母さんとはぐれちゃだめだよ」

 「うん。お姉ちゃん達ありがと~~!!」

 そう言って健太君たちと別れた。健太君のお母さんは、僕たちが見えなくなるまでお辞儀をしていた。

 僕たち達は健太君と別れてからまたあの長蛇の列に並んだ。時間が経ったからかさっきよりも人は少なかった。

 僕たちは20分ぐらい並んでようやく順番が回ってきた。

 「はぁあぁ~やっと私たちの番が回ってきたね~」

 「そうだね結構待ったね。早く終わらそう。後ろが待ってる。」

 明城さんは後ろ見た。

 「そうだね。早くしようか」

 僕たちは二人一緒にお金を投げ入れた。それから僕たちは二礼二拍手をした後に願い事してから一礼した。

 「何お願いしたの?」

 明城さんが聞いてきた

 「願い事言ったら叶わなくなるて聞いたことあるから言わない。」

 「え~別にいいじゃん、教えてよ」

 「言わない」 

 「はぁ、いいよもう。おみくじ買おうよ。私今まで大吉以外出した来ないんだよね」

 「へぇそうなんだ。すごいね、今年はどうだったの?」

 「もちろん大吉」

 「じゃぁ今回も大吉が出るといいね」

 僕たちはおみくじが売っている場所に向かった。

 それからお金を払いおみくじを引いた。

 「せーーの」

 明城さんがそう言って僕たちは一斉におみくじを見せ合った。

 「やったーーまた大吉、西川君は」

 「小吉」 

 「はい私の勝ち~」

 明城さんは意味の分からないことを言ってきた

 「おみくじって勝ち負けあるの?まぁいいけどじゃあ結びに行こうか」

 僕たちはおみくじを結びに行った。それから僕たちは神社を後にした。

 僕はいつも通り明城さんを家まで送った。

 「いつも送ってくれありがとね」

 「いやいいよ。何かあったら寝覚めが悪いからね」

 「そっか。それでもいつもありがと」

 「じゃあまたね明城さん」

 「うん、またね。西川君」


 冬休みも明けて1月7日

 クラスは冬休みに何をしていたのかなどを話していた。正月何していたのか、お年玉をどれだけもらったとか、クリスマスに誰と過ごしたのかとか、どこに行ったのかとかいろいろ話していた。

 僕も新学期になったことを憂鬱になりながらも今日もまた明城さんと登校した。

 始業式で校長の長ったらしい言葉に眠くなりながらも聞いていた。大掃除もして宿題やら提出物を出して今日は帰れた。明日は冬休み明けのテストがあるので勉強しなくてはならい。

 「西川君~これから鏡佳と勉強会するんだけど一緒にしない?」

 「……」

 「そんなに嫌な顔しなくてもいいじゃん」

 「普通に一人の方が集中できるから……」

 「勉強会来てくれたら好きな本1冊買ってあげるから」

 明城さんは僕に耳打ちしてきた。

 「それは興味深い。なぜか急に誰かと勉強したくなって来たなぁ~」

 「はぁまったく調子いいんだから」 

 僕たち三人は学校近くのファミレスに向かった。

 「じゃあ先に何か食べよっか。何にする?」

 「僕はハンバーグにしようかな」

 「私はオムライスにしようかな」

 南さんが言った

 「じゃあ私もオムライスにしようかな」

 僕たちは店員さんに頼んで、注文した品が来るのを待っている間にドリンクを取りに行った。僕はファンタ、南さんは紅茶、明城さんはオレンジジュースを取ってきた。

 それからすぐして頼んだ品が運ばれてい来た。僕たちは頼んだ品を食べた。食べている間は冬休みにどんなことをしたのかとかを話していた。食べ終えてから、お皿を端に寄せ勉強道具を取り出した。僕は国語、南さんは英語、明城さんは数学を出した。各々勉強を始めた。勉強を始めて30分ぐらい経った頃

 「あ~も、つまんない」

 と明城さんが言った。

 「集中力なさすぎない?」

 僕が明城さんにそう言った

 「う、うるさい。そういう西川君はどうなの?」

 「国語は毎回学年1位」

 「……じゃ、じゃあ数学はどうなの?」

 僕は明城さんから目を逸らしながら

 「……あ、赤点に近い」

 「ほ、ほら数学は低いんじゃん、私は数学は高いもん」

 「数学‘‘は’’高いんだ」

 僕たちがそんなやり取りをしていると南さんがニヤニヤしながら

 「仲いいねお二人さん?」

 「う、うるさい鏡佳」

 僕たちそんなやり取りをしながらも明日のテストに向けて勉強をした。

 

 翌日 午前7時30分 明城家

 僕は習慣化しつつある朝に明城さんを迎えに行くというミッションを実直にこなしていた。

 「おはよ」

 目をこすりながら歩いてきた。

 「おはよ、どうしたの?寝不足?」

 「うん昨日遅くまで勉強してて寝れてないいんだよね」

 「そっか。じゃぁ結構自信ある感じ?」

 「う~んどうだろまぁ、そこそこってところかな」

 僕たちはそのまま学校に向かった。それから学校で最終確認してテストに臨んだ。

 まぁ僕はいつも通り文系科目は100点に近いだろうけど理数科目は悪くて30点良くて60点ぐらいだろう。

 明城さんは

 「ねぇねぇ今回のテスト結構いいかも」

 と嬉しそうに言ってきた。返却日まで2~3日かかると先生が言っていたので帰ってくるのが楽しみだ。

 僕と明城さんはテストが終わったということで昨日の勉強会の報酬を買いに行った。

 「本当にこれでいいの?」

 「うん良いよ。ていうか別に買わなくてもいいだよ?」

 「いや私が言い出したことだから買うの」

 「女の子に買ってもらうというのはちょっと抵抗があるというかなんというか……」

 「良いよそんなこと気にしなくて」 

 「そ、そこまで言うなら……」

 僕は少し抵抗しながらも明城さんに本を一冊買ってもらった。僕は明城さんに好きなラノベの新刊を買ってもらった。

 それから何をしようか話し合っていると明城さんがゲームをやりたいと言った。ゲームセンターに行こうと言ったのだが、やりたいゲームはテレビゲームらしくそれにそのやりたいソフトを持っていと言ってきた。でも僕が持っていると言ったら僕の家でやりたいと言ってきた。明城さんが僕の家でゲームをしたいと言ってきたので僕の家に行くことになった。

 僕はあまり気乗りしなかった。何もしないとは言え流石に若い男と女が一緒の空間に居たら何か誤解されるかもしれない。だから他に楽しいそうなことを提案したが明城さんの意志は固く僕の家に行くことを譲らなかった。僕は根負けし自分の家に招くことになってしまった。

 それから僕は自分の家に明城さんを招いた。

 「汚くても引かないでね」

 「引かないよ。ていうか引くレベルで汚いの?」

 「自分なりには綺麗にしているつもりなんだけど……」

 僕は明城さんを自室に招いた。

 「別に汚くないじゃん。ていうか本当に本多いねまるで図書館じゃん」

 僕の部屋はほとんどが本棚だ四方の壁は本棚で埋め尽くされている。

 「じゃあちょっとお茶用意するから待ててね」

 「あ、気にしなくていいよ」

 そう言って僕はキッチンに向かった。それからオレンジジュースをコップに注いでお菓子をお皿に乗せて運んだ。

 「じゃあゲームしよっか」

 「うん」

 そう言って僕と明城さんはゲームをすることになった。

 それから僕たちはゲームに熱中した。

 「あ、そっち行ったらやられるよ」

 「あ~あやれちゃった」

 「明城さんってあんまりゲームうまくないよね。ずっと同じ場所でやられてるじゃん」

 明城さんのゲームスキルを一言で言うと下手くそだ。

 「ちょっとひどくない?これでも結構楽しんだよ?」

 「そうなの?それならいいんだけど」

 僕たちはそれから3時間ほどゲームをやってからお開きになった。

 僕はまた明城さんを家まで送った。





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る