第8話本性

 俺たちは駅、近くのショッピングモールに来ていた。

 「で何買うの?」

 「う~ん?いや何も決めてないよ」

 「は?じゃぁ何しに来たの?」

 「君と遊びに」

 「はぁ~そういうことじゃないだけどまぁいいや。じゃぁ、色々回っていこうか」

 「そうだね」

 何買うかも決めてもないのに人を遊びに誘えるなんてやっぱりこの人はどこか、変わってるなと思った。

 「ていうか何時の映画見るの?」

 「11時ぐらいの映画だよ」

 「じゃぁ先にチケット買った方がいいじゃない?」

 「あ~それなら大丈夫。二人分チケット予約してあるから。まぁ席は私好みの一番後ろだけど」

 「え?二人分のお金出してくれたの?ありがと。俺もなんかお礼するよ」

 「別に良いよお礼なんて私が誘ったわけだし」

 「俺は借りを作るのが嫌なだけだから」

 「そっかじゃぁ楽しみにしてる」

  

 俺たちは色々な所を回った。すると明城さんは洋服が売っている店で止まった。

 「どうしたの?」

 「この服可愛い」

 明城さんは店の前のマネキンを見ながら言った。

 「見て行く?」

 「うん!!」

 僕たちは店に入った。

 「ねぇこの服とこの服どっちがいいと思う?」

 明城さんはさっき見ていたマネキンの服装と自分が選んだ服を俺に見せてきた俺は少し考えた

 「どっちも似合うんじゃない?」

 「そうじゃなくてどっちが似合うかって聞いてるの。」

 「そんなこと言われても、着てくれないと分からないじゃん」

 「それもそっか。じゃぁちょっと待ってて」

 そういうと明城さんは試着室に向かった。そして数分経ってから明城さんは出てきた。

 「おぉ~」

 俺はそんな声を上げてしまった。とても似合っていた。明城さんはさっき見ていたマネキンの服装をしていた。首元まである白いセーターと、苔色のロングスカート。清楚っぽい感じだった。

 「すごい似合ってる。清楚っぽくていいね」

 「そう?似合ってるんならいいんだけどさ。じゃぁ次ね」

 また明城さんは試着室に入った。また数分してから試着室から出てきた。

 「おぉ~」  

 俺はまた同じ反応をしてしまった。今度はカジュアルな服装だった。

 「似合ってけるど足元寒くない?」

 上はロングティーシャツに厚めのカーディガン下はスキニーパンツだった。今は冬でこれからもっと寒くなるというのにスキニーパンツは寒いのではないかと思った。

 「う~ん確かに寒いけどオシャレするには我慢も必要だと思うしさ」

 「でも、体調崩したら意味ないでしょ。だからさっきみたいなロングスカートか裏起毛のやつにすればいいじゃん。知らんけど」

 俺はそう言いつつ、ロングスカートだとさっきと同じになるかな?と思った。明城さんを見ると少し考えていた。

 「じゃぁちょっと探してくる。ちょっと待って。」

 そう言うと明城さんは服を探しに行った。俺は近くにあった椅子に腰かけた。それから自分のスマホを取り出しフードコートに何があるか調べた。それから数分経ってから新しいパンツを持てきった。

 「じゃぁまた着てくるね」

 「うん」

 明城さんはまた試着室に消えた。

 それからすぐして新しいパンツをはいた明城さんが出てきた。

 「……あんまり変わってないように見えるんだけど」

 「確かに外見は変わってないけど君に言われた通り裏起毛にしたんだよ」

 そう明城さんは言いながら指でVサインをしていた。

 「うん似合ってる」

 「じゃぁ最初と今のどっちが似合ってる?」

 そう言われ俺は考え込んでしまった

 「う~~~んどっちも似合っていたけど俺は最初の方が似合ってると思う、多分」

 「そーお?じゃぁ最初の服買おうかな。でもこれだけじゃ寒いかな?」

 「どうだろ確かに寒いかも。じゃマフラーかなんか、買えばいいじゃない?」

 「そうだねでもお金が……」

 「じゃぁマフラーは俺が買ってあげる。映画のチケットのお礼と俺からのクリスマスプレゼント」

 俺そう言うと明城さんはパァァと笑顔を見せた

 「え!!え!!良いの?ホントに?ホントのホント?」

 そう明城さんは子供のように、はしゃいでいた。

 「うん良いよ」

 俺は微笑みながら言った。俺たちはレジに向かった。先に明城さんの服を買った。次に俺が買う。金額は3000円ぐらいで財布に優しかった。

 「ていうか、西川君は何か買わなくていいの?私、君のファッションセンス見てみたいなぁ~」

 「いや俺はマネキンが着ている服で自分に似合いそうなやつ買ってるだけだから」

 俺は自分のファッションセンスを信頼していないからマネキンをマネしておけば間違いないと母親が言っていたのでそれに従ってマネキンをマネしている。

 「そんなことより映画の時間大丈夫?」 

 時刻は10時半、明城さんは11時の映画を見ると言っていたのでそちらに話題をすり替えた。明城さんは自分のスマホで時間を確認した。

 「わぁホントだじゃ早く行こ」

 そう言って明城さんは、走って俺を置いて行ってしまった。俺も明城さんに追いつくために走った。映画館はショッピングモールの一番上の階にあるのでエレベーターを使わなければならない。

 「はあはぁ明城さん早すぎ」

 俺は久しぶりに全力疾走した。幸いエレベーターには二人しかいなかいなかったので俺が息を切らしている姿は明城さんにしか見られなかった。それくらい明城さんの足は速かった。

 「君、足遅すぎない?」

 「中学最後の部活の大会以来まともに運動してないからね。体が衰えたんだよ」

 中学最後のバスケの大会が終わって部活を引退してから俺はめっきり運動をしなくなった。それからは受験勉強やら漫画、ラノベなどにのめり込んでしまってもっと運動しなくなった。といっても受験勉強あまりやらなかったが

 それからエレベーターで一番上まで登り映画館に着いた。

 「で結局、何見るの?」

 「私たちといえばそう、アニメ。最近話題のアニメ映画だよ」

 「え、ホント俺も見たかったからちょうどいいや。じゃぁ飲み物買う?」

 「うん買おっか」 

 俺はコーラとキャラメルポップコーン、明城さんはオレンジジュースと俺と同じキャラメルポップコーンを買った。

 俺と明城さんは映画のパンフレットをネタバレの無いように見ていた。時間になり俺と明城さんはスクリーンに入った。

 「楽しみだね」 

 と明城さんは小声で言ってきた。

 「そうだね」 

 と俺も小声で返す。それからしばらくこれから公開する話題の映画の広告を見ていたその中には、俺の好きなアニメの映画もあり次の楽しみができた。それは明城さんも同じでまた俺に

 「これも一緒に見に行こうね」 

 と小声で言ってきた俺は

 「そうだね」

 と同じように返した。広告終わり本編に入った


 2時間後

 「うぅぅ」

 明城さんは泣いていた。映画のクライマックスで、自分の思いを伝えるのが苦手な主人公がヒロインに思いを伝えヒロインを守り抜くシーンがあり、とても感動的なシーンだった。 

 俺も泣きそうになったけど隣に明城さんがいると思うと泣けなかった。

 「いつまで泣いてるの?周りの人に滅茶苦茶見られてるんだけど」

 「うるさいな~いいじゃん別に」

 「はぁどっか座ろうか」

 「うぅん」

 俺は明城さんを連れて座れるところに連れて行った。明城さんは歩きながらも泣いていた。感受性が強いんだなと思ったしばらくして明城さんは落ち着いた。

 「落ち着いた?」

 俺は明城さんに聞いた

 「うん」

 「そっかよかったよ。俺も一人だったら泣いてたかな」

 「何それ私の前じゃ泣けないっていうの?」

 「そうだよ、俺は一人か家族じゃないと素を見せないというか見せれない」

 俺は明城さんにそういった。納得いっていないような顔をしていた。

 「まぁ良いけど。でもいつか必ず素を見てやるからな~~」

 「頑張って」

 「お腹空いた~何か食べに行こうか。感想会も兼ねて。何食べたい?」

 明城さんが聞いてきた俺はフードコートを調べておいて良かったと思った。

 「じゃぁ下のフードコートにカフェがあるからそこで食べようか」

 「良いね。ていうか用意周到だね。調べてくれたの?まぁいいやじゃぁそこに行こうか」

 俺たちは下にあるフードコートに行きカフェに着いた。俺はたらこスパゲッティ、明城さんはペペロンチーノを頼んだ。 

 「映画よかったね。特にクライマックスのシーンとか感動した。しかも作画も滅茶苦茶綺麗で映画ならでは良さ?て言うのかなホント見に来てよかったて思った」

 アニメについて熱く語っている明城さんに俺は圧倒された。

 「確かに普段のアニメの作画も綺麗だけどやっぱり映画の作画は別格だった。それに主人公が覚醒するきっかけがヒロインに思いを伝えること、とか感動的だった。覚醒してからの主人公は今までで一番強かったんじゃないかな?」

 俺も熱く語ってしまった。それからは頼んだ料理を店員さんが持ってきてくれて、食べながら映画の感想を語っていた。そんな時に明城さんがおかしなことを言ってきた。

 「西川君今日ずっと一人称‘‘僕’’じゃなくて‘‘俺’’だよね、何で?」

 僕は首を傾げた

 「何言ってるの?僕の一人称はずっと‘‘僕’’だよ」

 「いやいや君の家からずっとだよ。今日ずっと‘‘俺’’だったよ」

 「もし僕の一人称が‘‘俺’’になってたとしたら多分、君に少し心を開いてるんじゃないかな。多分」

 僕はそんな恥ずかしいことペラペラと言ってしまった。後になってとても恥ずかしくなってきて明城さんの顔を見ることができなくなってしまった。

 「え、えぇ、そ、そうなんだね~」

 明城さんの顔が赤くなっていた。

 「何で君が照れてるの?恥ずかしいのは‘‘僕’’の方なんだけど」

 「い、いや~こんな恥ずかしいことを無表情で言うんだもん。なんか私の方がが恥ずかしくなってきちゃった」

 そんなことを言いつつも、僕たちは普段通りアニメなんかの話をしてカフェを後にした。それからも色々な店を回りショッピングモール後にし、帰路についた。時刻は5時とあまり遅くはない時間だが冬ということもあり、あたりはすっかり暗くなってしまっていた。

「じゃぁ私はこっちだから」

そう言って明城さんは手を振っていた。

 「いや外も暗いし家まで送っていくよ」

 「いやいや、いいよ別に家まで遠いわけではないし」

 「いや、女の子を夜道一人にするわけにはいかないし、僕がやりたいだけだから気にしないで」

 「そ、そういうことならお願いしようかな」

 僕はそのまま明城さんの家まで送った。

 「じゃぁ送ってくれてありがと。今日楽しかった。またね西川君」

 と明城さんは僕に手を振る

 「うん。また、もし遊ぶなら前日じゃなくて前もって連絡してね。それじゃまたね」

 僕も明城さんに手を振った。振り返って自分の家に向かった。家に向かっている間に色々と考えた。

 自分が家族以外に心を開いていたこと、自分が誰かにまた会うこと望んだこと……今までの自分が変わっていくような感じがした。でもそれが心地いいと思う自分もいる。この感情は何なのかと考えようとしたところで家に着いた。俺はここで、このことを考えるのをやめてしまった。

 

 家に着いて、母親が作ってくれたご飯を食べて自室に籠った。するとメールが来た。

 『今日は楽しかったありがと』

 『僕も楽しかったし映画のチケットありがと』

 『ううん私もマフラーありがと。また遊びに行こうね!!』

 『うん、予定が合えばね』

 『今度は初詣に行こうよ』

 『多分親と行くよ』

 『2回目でいいから私も多分親と一回行くから、大丈夫」

 何が大丈夫なのか分からないが別に予定があるわけでもないし良いかなと思った。

 『まぁ良いよ1月2日ぐらい?もしかしたら祖父母の家行く?』

 『多分行くと思う。しかも県外で毎年1月1日~1月3日まで祖父母の家に行くから1月4日でもいい?』 

 『いいよ』

 僕も多分祖父母の家に行くからちょうどよかった。

 また明城さんとの予定ができて少し嬉しいと思う自分がいた。

 それからは冬休みの課題や漫画やラノベを読んだ。

 年も明け新年、2023年になった1月1日僕は祖父母の家に来ていた。僕の祖父母の家は県内にあってしかも歩いて行ける距離にあるのであまり新鮮味はない。でもなぜか祖父母の家は心地いい。祖父母と両親と一緒に初詣に行った。神様にお祈りをして、おみくじを引いた結果は小吉と何とも言えない結果だった。祖父母の家に2泊3日泊まった。お年玉も高校生になったということで結構貰えた。去年よりも1万円ぐらい多かった。そのお年玉の多さに驚きながらも有り難くもらった。

 それから1日経ち2023年1月4日

 僕と明城さんは‘‘2回目’’の初詣に来ていた。

 

  

 

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