第7話初めての休日
2学期最後の雨が降ったり止んだりする放課後
クラスメートたちは各々帰り支度をしていた。僕の隣で帰り支度をしていた明城さんはとても落ち着かない様子だった。
「何そわそわしてるの?」
「べべべ、別にそわそわなんてしてないし」
「そう。南さんのことはメールで送った通りだから、。あとは自分で何とかしてね。僕は先に帰るから。」
「う、うん分かった。色々ありがと。私、頑張る。」
僕はそれから帰り支度を終え帰路に着いた。久しぶりの一人の時間に少しの悲しさと喜びを感じながら帰った。
〈美桜side〉
私は今、人生で一番緊張している。私は一番の友達を傷つけてしまった。何も知らずにひどいこと言ってしまった。それを今から謝りに行くところだ。
さぁ行け私、動け、と思っても中々動けない。私はずっとこうだ……これじゃだめだと思っても変わらない、いや変われない。私はずっと臆病だ。でも私は、西川君が鏡佳と話してくれたおかげで鏡佳の過去も少しは理解した、つもりだ。鏡佳が帰ってしまう今動かなければずっと私は臆病なままだ。あと少しの命だとしても少しでも後悔なく死ねるように、鏡佳とまた友達に戻れるように―――
「き、鏡佳、ちょ、ちょっといい?」
鏡佳が目を見開いた。そして戸惑っていた。
「何?なんか用?西川君と帰らなくていいの?」
鏡佳が皮肉の混じったことを言ってきた。
「う、うん。今日は先に帰ってもらった」
「何で?」
「鏡佳と仲直りしたいから。」
私は思っていることを言った。
「仲直りって別に私たちケンカなんてしてないじゃん。」
「そ、そうだけど。私ひどいこと言っちゃし、謝りたいなって。」
「そ、そっか」
鏡佳と目が合わない。でもそんなことでは立ち止まれない。
「この前はひどいこと言っちゃってごめんなさい」
私は鏡佳に深々と頭を下げた。
「な、何で美桜が謝るの?美桜何も悪くないじゃん。悪いのは勝手に西川君との仲を引き裂こうとした私じゃん。」
「私だって鏡佳のこと何も知らないでひどいこと言ったし」
「え、美桜、私の過去、西川君から聞いたの?」
鏡佳が驚いた様子で聞いてきた。
「うん、ごめん勝手に聞いちゃった。」
「そっか。じゃぁ私が中学時代いじめられてたことも聞いたんだ。あんまり知られたくなかっただけどなぁ」
「ごめん」
「ううん、私も西川君に口止めしてなかったから。私のほうこそ美桜のこと何も考えずに、自分の感情押し付けて、ほんとごめん。」
「私も、急に冷たくしたりしてごめん。」
謝らなければならないことを上げるとキリがないくらい私は鏡佳にひどいことをしてきた。それでも鏡佳は
「もう謝らなくていいよ」
と言ってくれた。でも
「で、でも私鏡佳にたくさんひどいことしてきたから。これくらいのことで許されるなんて私の気が済まないよ。」
「だから良いんだってば。私も悪かったからお互い様てことでさ、‘‘仲直り’’しよ。それに男子と付き合ったことなんて恥ずかしくて人には伝えられないよね」
「うん。ありがと」
「でも、たまには西川君とじゃだけじゃなくてさ、私とも遊んでよね」
鏡佳が笑顔で言ってくれた。それに私は
「うん、いっぱい遊ぼ」
と笑顔で返す
「じゃ私たちも帰ろ」
と鏡佳が言ってくれた。久しぶりに鏡佳の笑顔が見れたことに泣きそうになった。
「うん帰ろ」
私たちは玄関まで、最近できたカフェの話や好きな人の話や最近楽しかったこと、何気ない話をしていた。そんな何気ない会話に私は心の底から楽しんでいた。そんなことを思っていると、何で冷たくしてしまったのだろうと心底自分を責めたくなる。
「あ、雨また降って来たね。私、今日傘忘れたんだよね。美桜、傘持ってる?」
鏡佳が聞いてきた。
「え、私も持ってない。」
「え~どうしよ親呼ぼうかな。バスって何時ぐらいに来るか知ってる?」
私はバスの時間を調べる。
「う~んバスは1時間後ぐらいで親は今日いないんだよね」
どうしようかな。どうやって帰ろうかなと考えていると
「そっかじゃ私は歩いて帰ろっかな」
鏡佳がそんなことを言った。
「え、濡れて帰るの?」
「うんたまには良いかなって」
私は“あ”と思った。鏡佳はたまに変なことをする。好奇心のようなものが人一倍強いというのか、とにかくたまに変なことをしようとする。でも私も大抵その変なことに付き合ってしまう。
「じゃぁ私も歩いて帰ろ~」
「そう。じゃぁ一緒に帰ろ。」
「うん!!」
私たちは雨の降る中歩き出した。髪も制服も鞄も靴も全部濡らしながら、朝頑張ってしてきたメイクが雨で濡れ、崩れても私たちは笑いながら帰った。冬休みどこに行くか、何をするかなんかを話しながら帰った。
帰ってすぐにお風呂に入り私は今日のことを西川君にメールで報告した。
『放課後、鏡佳と仲直りできたよー--!!!』
『よかったね』
といつも通りの冷たい返信が返ってきた。
『ホント、西川君のおかげだよありがと。』
『いや、仲直りできてよかった。』
『それから明日、遊ぶことになったよ』
『そっかよかったね、楽しんでね』
『うん!!』
それから夜が明け私は鏡佳と遊んだ。久しぶりに鏡佳と遊べてとても楽しかった。
鏡佳と遊んだ次の日12月25日
今日私は西川君と遊ぶことになった。きかっけは昨日鏡佳に
「え~付き合いたてのカップルがクリスマスに予定がないなんてやばいよ~。明日遊びに誘いなよ」
と言われたからだ。
私は鏡佳に結局自分の秘密と偽彼氏だということは、話さなかった。いや話せなかった、もし話して鏡佳とまた話せなくなると思うと怖かった。私は鏡佳といることが楽しい、だからその楽しい時間が無くなってほしくなかった。
〈隼人side〉
はぁ~今日は急遽、昨日決まった予定のために早起きをさせられる羽目になった。休日だというのに偽の彼女と遊びに行くのだ。プランは明城さんが決めてくれるらしいが女性物のお店に入るのは少し抵抗がある。
僕は重い足取りで玄関に向かうすると、インターフォンがなった。
「はぁーい、って明城さんか。どうしたの集合場所、駅じゃなかったけ?」
「そうだよでも西川君来ないかもしれないし家、教えてもらったから迎えに行ってあげようと思って。」
まったくこの人は僕を何だと思ってるだ。
「はぁ~僕ってそんな風に思われてたんだ。まぁ確かにさっきまで渋ってたけど」
本当に女の子と遊びに行くというのは疲れる。なぜなら、まともな恰好をしなけらば失礼だとネットで見かけたのでそれなりにまともな恰好をしなければならないからだ。僕は、まともな恰好をしているつもりなのだが大丈夫だろうか。そんなことを考えていると
「西川君って結構オシャレに気を遣うタイプなんだ」
明城さんが僕の服装を褒めてくれた。
「え、そう?ありがと、じゃぁ行こうか」
そう僕が言うと明城さんはキョトンとしていた
「え?私の服装については何もないの?」
明城さんが服装について意見を求めてきた。はっきり言って僕は可愛いというものがよく分からない。だから僕は
「良いんじゃない?」
としか言えない。普通の高校生男子ならここで女の子の服装に‘‘可愛い’’といえるのだろうが、あいにく僕にはそれが理解できない。
「そっか。悪くなくてよかったよ。じゃぁ行こうか。」
「ていうかどこ行くの?」
僕はプランを決めていないのでどこに行くか知らない。
「駅の近くにあるショッピングモールに言って買い物してから映画を見ます。」
「駅なら尚更、僕の家に来た意味が分からないんだけど」
「だ~か~ら君と遊ぶためだよ。しかも今日はクリスマスだよ。女の子一人が駅の近くのショッピングモールで一人とか寂しじゃん。周りはカップルだらけだよ。」
「確かに君が駅の近くで一人のところ想像したら面白いかも。」
というと明城さんは
「何が面白いの?君ってホントは性格悪い?」
「じゃぁ逆に君は‘‘俺”が性格いいと思ってたの?」
「そりゃぁ鏡佳との仲直りも手伝ってくれたし、私が廊下で苦しんでるときに助けてくれたし、少しは性格いいのかなぁて思ってたよ」
ふいに明城さんがそんなことを言ってきて俺は戸惑ってしまう。
「まぁどう思おうが勝手だけど俺の性格は決して良い方ではないから。勘違いはしないでね。じゃぁ行こうか」
俺たちは駅の近くのショッピングモールに向かった。
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