第1話 初めまして

2022年 10月

 時刻はとっくに16時を過ぎ放課後の誰もいないクラスで一人黙々と、秋の涼しさを肌で感じつつ家から持参してきたラノベを読んでいる。家に帰ってから読めばいいのだが読んでいるラノベが良い所だったりすると、ラノベを読みたい欲が抑えきれずにこうして放課後の誰もいな教室の窓際の席に座り、廊下を通り過ぎる人になど目もくれずラノベにふけっているのだ。

 すると急に教室の扉が開く音がした。でも気にしない。なぜなら今読んでいる所は良い所なのだから、クラスメートごときに構っていられないのだ。

「あ~そのラノベ、続き出てたんだ」

 とふいに誰かが言う。ラノベを読んでいるのを邪魔されて腹が立ちつつも顔を上げる。

「え?」

 驚いた、顔を上げた瞬間クラスでも中心的で発言力のある陽キャ女子が立っていたからだ。

「え?明城さんもこのラノベ読むの?」

まさかクラスの陽キャ女子の明城さんがラノベに興味を示したことが、意外だった。

「うん。アニメ化もしててアニメ見て面白いかったから続き気になって買ったんだ。」

「へぇ~ていうかラノベ読んだんだり、アニメ見たりするんだ。」

「うん。意外?」

「どちらかといえば。インスタとかtiktokとか好きそうだから。」

 しまった、つい思っていることを言ってしまった。

「なにその偏見。でもまぁ意外とはよく言われる。それよりもそのラノベって最新刊?」

怒っていないようでよかったと思う。

「うん。昨日発売されたよ。あれなんで教室戻ってきたの?」

「あ~宿題、教室の机の中に忘れたんだ。」

「そっか」

「それじゃまた明日ね。」

と明城さんが言う。

「うん。また明日。」

 と僕が言う。まったく人が本読んでるのに話しかけないで欲しい。せっかく良い所だったのにと思いつつまた視線を本に落とす。


 昨日、明城さんと話したからって何か変わるわけでもなく変わらない日々に充実感を感じていたのだが。

 数日後、また放課後の教室に残ってラノベを読んでいると声が聞こえた。

「君・・・川君・・・西川君!!」

 驚いて急いで顔を上げた。

「なんだ明城さんか」

 内心また邪魔しやがってと思った。それでも明城さんは

「なんだとはなんだ!!私が何度も何度も名前を呼んでも無視するしちょっと傷ついちゃったよ。」

と笑いながら言ってきた。僕は

「そっか」

と冷たく返す

「・・・・・・え?それだけ冷たくない?冷たいよー-私本当に傷ついちゃうかもー-」

 と顔を掌で隠しながら指の間から僕の顔をちらちら見ながら言ってくる。

「・・・・・・はぁどうしたの?僕になんか用?」

「ほら西川君ってラノベとかアニメとか漫画詳しそうだったから。おすすめの作品聞きたいなぁって~」

 はぁこの人はなんて自分勝手なんだと思う。人がラノベを読んでいるというのに。

「はぁ~ちょっと待ってあと3ページで読み終わるから。」

「うん。待ってる。」

ラノベを読み終えた僕は明城さんにおすすめの作品を教えたり、好きな作品について語り合った。

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