第33話 疑問

 席を立つ直前に、カノンは父親と母親に尋ねた。


「ねえ、僕のお母さんって、お母さんしかいないよね?」

「なに? どういう意味かしら、カノン?」

 母親は緊張した面持ちでカノンに聞き返した。



「アデルの……学校の友達のお母さんが、僕に『本当の母親』のことを知ってるのかって言ったから……。僕の目の色は、お父さんともお母さんとも違うし……何かあるのかと思って」


 カノンはうつむいたまま、自分の疑問を両親へと投げかけた。


「カノン、お前は俺たちの子どもだ。……詳しい話は明日しよう」

「……ええ、今日はもう疲れたでしょう?」

 両親の戸惑った表情を見て、カノンはそれ以上何も言えなかった。静かに二人の言葉に頷き、自分の部屋へと戻っていった。



 カノンが着替えを終えてベッドに入ると、両親の話し声が部屋の外から断片的に聞こえてきた。

「もう、話した方が……」

「でも、カノンがどう思うか……」


 カノンは不安を抱きながら、布団の中にもぐりこみ、ぎゅっと目をつむった。

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