第32話 夕食

 カノンは荷物を開け、片付けると自分のベッドに転がった。

「ああ、疲れた。ちょっと眠い……」

 カノンはいつの間にか眠ってしまっていた。


「カノン! そろそろ夕食の時間だぞ!」

 父親の声でカノンは目を覚ました。

「ごめん、父さん、母さん、僕眠っちゃって……」

「疲れが出たんでしょう。食事は食べられそう?」

 母親がカノンに尋ねる。カノンは笑って答えた。

「うん。お腹がペコペコだよ」


「さあ、好きなだけ食べなさい」

 食卓には、カノンの好きな豆と肉のスープや、豚のソテー、青菜のサラダが並んでいる。

「うわあ、美味しそう! ありがとう、母さん」

「さあ、召し上がれ」

「いただきます」


 カノンはまだ熱いスープをふうふう言いながら口に運んだ。

「美味しい」

「よかった」

 母親の嬉しそうな笑顔を見て、カノンも心が軽くなった。


「学校の生活はどうだ?」

 父親の質問にカノンは答えた。

「なんとかやってるよ。寮で同じ部屋のベンジャミンと、クラスメートのアデルとよく一緒にいるんだ」

「そうか。友達が出来たのか。よかったな、カノン」


 カノンは両親に、学校の様子を話したり授業で知ったことを話したりした。

「そうそう、エリス先生が調律魔法を教えてくれたんだ。そういえば、父さんたちはライラ・クロークって知ってる? 有名な調律魔法使いみたいなんだけど……」

 一瞬、両親の顔がこわばった。

「……ライラ・クロークのことなら皆聞いたことくらいあるんじゃないか? 有名だからな」

「ええ、そうね」

 父親と母親は、ぎこちない表情でカノンに言った。

「さあ、つまらない話はやめて、もっと食べなさい。食事が冷めてしまう」

「はい、父さん」


 カノンは両親の不自然な態度を不思議に思いながら、夕食を終えた。

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