5話 クソイケメン

「では、ここで烏丸君について語りましょう」


「いきなりだな……」


「では、高村君に質問よ。……烏丸君の第一印象は?」


 おれが烏丸を初めて知ったのは、一年後期の生徒会役員選挙の演説会だ。


 それまでも、烏丸という名前だけは、女子の噂話(盗み聞きじゃないよ)で聞いたり、成績優秀者が発表される紙に毎回載っていたから、知ってはいた。


 顔と名前が完全に一致したのは、演説会でだ。


 その時の第一印象は……


「クソイケメン」


 完全にひがみである。


「そうね、高村君がそこら辺の石ころだとしたら、烏丸君はダイヤモンドだものね」


「その通り。否定は全く出来ないぜ」


「彼の魅力は、あの中性的な顔ね。色白で、綺麗な肌だし、歌舞伎の女形とかに居そうね」 


「凛」という女っぽい名前だが、烏丸はれっきとした男だ。


「お前と並んだら、ちょうどいいくらいだよな。美男美女でお似合いだ」


「そうかもしれないけれど。烏丸君って、誰かと付き合うとか、全く興味がないらしいわよ。……彼、ストイックなのよね、恋愛以外も。生徒会に立候補したのも、学級委員長も、誰かが彼を推薦したから、快く引き受けたらしいわ」


「実際、クラスを上手くまとめてくれてるよな」


「自分から進んでやろうとはしていないのよね。でも、頼まれたら嫌な顔一つせず、引き受ける。……それに、紳士的よね。ささやかな心配りは、そこらの英国紳士でも敵わないと思うわ」


「ジェントルマン、烏丸」


「それに、成績優秀、スポーツ万能って、出来過ぎよね。出来過ぎて、逆に怖いわ」


「だよな。どこの漫画のキャラだよって感じだもんな」


 成績は、常に上から三つには入っている。


 スポーツでも、部の勧誘が後を絶たないらしい。


 部活には所属してないけれど、助っ人で出たサッカー部の練習試合で、一人でハットトリックを決めたらしい。


「数学と英語が赤点スレスレ。中学時代のサッカー部ではベンチだった高村君とは、大違いね」


「……言うな、悲しくなってくる」


 絶対、アイツの方がサッカー上手いし。

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