4話 私、フェミニストだから。

阿部が部活に戻ったので、おれ達は帰ることにした。


「お前、何か冷たくなかったか? いつも、女子には優しいのに」


 しかし、男子には厳しい。おれは慣れてるけど、慣れてない奴なら泣くかもしれないくらいの厳しさだ。


 バレンタイン、白鳥に逆チョコをあげようとした男子が聞いた辛辣な言葉は、伝説になっている程だ。


「私、フェミニストだから。でも、彼女は……」


「阿部と、何かあったの?」


 学年が違うから、接点はほとんど無いはず。


「クラスマッチの時、私、バレーボールに出ていたでしょう」


「ああ、そういえばそうだったな」


「あの時、彼女のアタックが私の顔面を直撃したのよ」


「それを根に持ってんのか。でも、あの後、阿部が謝りに来ただろ。律儀だよな。スポーツで、怪我は付き物だ、仕方ねえだろ」


「かなり痛くて、鼻血も出たわ」


「アザが残らなかっただけ、幸いだろ」


「まあ、私の広い心で許してあげたけれど」


「根に持ってたくせに」


「そんなことは置いておいて。じゃあ、明日から、烏丸君の調査スタートよ!」


 何故か楽しそうなのが、逆に怖かった。





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