3話 ただ言ってみただけよ

「まもなく京都です」


 車内アナウンスが目的地到着を告げる。


「おっ、着いたみたいだな」


 おれは荷物を持って立ち上がった、が、他の四人は全く立とうとしない。


「まだ、着いていないわよ」


「いや、だって京都って……」


「私が、いつ京都に行くなんて言ったの?」


「冒頭で言ってただろ? 旅行会社のCMっぽく」


「ああ、あれ? あれは、ただ言ってみただけよ」


「……は?」


 新幹線が発車した。


「だ、だったら、おれ達は今どこに向かってるんだ?」


 とんだミステリーツアーだ。泊まりってことしか聞かされていない。


「馬鹿ね、高村君。切符を見てみなさい」


 ポケットから切符を取り出す。


   『名古屋→新大阪』


「し、新大阪って……」


「兄貴、バカ過ぎだろ。気付くだろ、普通」


 優にバカにされた。


 ていうか、気付かなかったおれ、本当にバカ過ぎだろ。

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