第28話 ただの想像だよ

「白鳥……、黒歴史に落書きした奴が分かったよ」

「だから、霊でしょう」

 今までそう思って、張り込みまでした。

「……違うよ。霊じゃなくて、人間だ」

「じゃあ、誰だっていうのよ」

 それは――――。

「……それは、お前だよ、……白鳥」

 白鳥の顔が驚愕の色を見せた。

「な、何を言っているの? なぜ、私がそんな一人芝居のようなことをしなければならないの?」

 この反応は、当然だ。 

 なぜなら、この白鳥は知らないのだから。

「これは、立派な推理なんかじゃない。……ただの想像だよ」

「想像?」

「ああ、そうだ。落ち着いて聞いてほしい」

 白鳥が無言で頷いた。

「お前は、二重人格なんだ」

「……そんなこと、私は知らない」

 白鳥は、かなり動揺していた。

「知らなくて当たり前なんだ。……だって、お前にその自覚はないんだからな」

「それって……」

「お前の好きなエドワードがヒントになったんだ。……それに、おれはお前のもう一つの人格と実際に話したんだ」

「つまり、もう一人の私が犯人……」

「そうだ」

「じゃあ、私たちが今までやってきたことは、全て間違いだったというの?」

「……ああ、そうなるな。……でも、おれはお前といろいろ話せて、楽しかった」

 おれは、今、多分、泣きながら笑ってる。

「……え?」

「こんなに、話すことが楽しいって思ったのも、お前が初めてなんだぜ。……それに、お前はもう寂しくなんかない。……おれが、お前を助けてやったから」

『彼』ってのは、おれのことだったんだな。

「寂しくなんか……」

 白鳥も泣いていた。

 これから先は、二人とも泣いていて、何言ってるのか全然分からなかった。




 でも、どこかでこう聞こえたことだけは覚えている。

「ありがとう」


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