第22話 早速アニメを見ましょう

 次の日。

 昼飯を食べ終わると、おれは白鳥に頼み込んだ。

「なあ、もうホラーはやめようぜ~。このままだと、おれの心臓がもたないからさ~」

 我ながら、すごく情けない声。

「全く、情けないわね。……本当に無理なの?」

「ああ。今日はもう、ホラーは絶対にイヤだ!」

 白鳥は少し考え込んだ様子でどこかに行ってしまった。

 何しに行ったんだろう。

  

 数分後、白鳥は新たなDVDを持って戻ってきた。

「もう、ホラーはイヤだからな」

「これが、ホラーに見える?」

 白鳥の持ったDVDを見ると、アニメのようだった。

 そのジャケットには、かなりのイケメンが描かれていた。

「何、それ?」

「知らないの⁉」

「知らないよ」

 最近、アニメをあまり見てないからか、そのジャンルには、かなり疎かった。

「知らないのなら、教えてあげるわ! これは『フェニックス・ナイツ』というアニメで、今年の三月まで放送されていたわ。でも、原作の小説はまだ続いていて、再アニメ化も期待されているわ! ファンの間では、『フェニナイ』と呼ばれていて……私の一番好きなキャラクターが、このエドワード様で……この場面が……ここが……ここの作画が神で……それから……」

 こんな調子でかなり熱く語っていた。

 もしかして、こいつ、オタク?

「では、早速アニメを見ましょう」

 たっぷり話し終えた白鳥は、DVDを再生した。

 華やかなオープニングが始まると、白鳥のテンションはかなり上がってしまい、アニメを見ている時も隣りでずっと解説をしていた。

 DVDを二巻まで見たところで、白鳥が疲れたらしく、一旦、終わりとなった。

 あれだけ、一人で話していたのだから、疲れるのは当たり前だろう。

 でも、話せて嬉しかったのか、満足気な顔をしていた。


「高村君にも、『フェニナイ』の魅力をもっと知ってもらうために、このDVDを貸してあげるわ」

 そう言って、白鳥は半ば強引にDVDをおれに押し付けた。

「やっと、布教用を使うことができたわ」

「布教用?」

「そうよ。使用用と保存用と布教用の三つ買っているのよ」

 一つでいいんじゃないの?

 こいつ、親の遺産をこういう物に使ってんのか。

 こんなこと言ったら、怒られるから、絶対に言わないけど……。

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