第12話 助けてあげるしかないじゃない

「もしかしてだけど、お前が寝惚けてて無意識に書いたってことは?」

 寝惚けてるときって、字が乱雑になるもんだよな。

 白鳥に、あれだけ霊についての説明をされても、おれはまだ心霊現象ではないと思いたかった。

「それはないわね。私を夢遊病者みたいに言わないでほしいわ」

 結局、ユーレイの仕業になっちゃうのか。

「それに、私と霊の字では筆圧も字形も全然違うでしょう」

「ああ、わかった、わかったよ。……それで、そのユーレイはそこに何て書いてんの?」

「ああ、そうね。まず、一番初めは、エイプリルフールの日ね。……えっと『助けて』」

「ありがちなメッセージだな」

「そうね。次は……、その二日後『お願い、誰か』……また二日後『寂しい』」

「つらそうだな。……次は?」

「また二日後ね。入学式の日よ『彼なら、私を』」

「『彼』って?」

「きっと、この霊が大切に思っていた人でしょうね。……それから、これが最後のメッセージね。昨日書かれていたわ。『彼は私にとっての希望』」

「で、ええっと……、つまり、どういう意味?」

 おれは文をまとめるのが苦手だ。

「多分こうじゃないかしら。……きっとこの霊は何かの事件に巻き込まれて、どこかに閉じ込められていた」

「いたってことは過去形……、つまり、その人はもう……」

 ユーレイだから、そうなのだろうけど。

「ええ、もう多分亡くなっている可能性が高いわ。……でも生霊ってことも有り得るかもしれないわね。可能性は低いけど。それで、『彼』の助けを今もずっと待っている」

 生霊ってことは、まだ生きてるかもしれないってことか。そうであってほしいけど……。

「あっ、でも何でその霊は『彼』じゃなくて、お前にそのメッセージを伝えたんだよ?」

『彼』に伝えれば、一発じゃないか。

「それは多分、私とこの霊の波長が合ってしまったからだと思うわ」

「でも、波長が合ったからって、白鳥がその霊がどこの誰かなんて分からないだろ」

「それはそうだけれど、この霊は私たちを頼ってきたのよ」

 たちって、おれも含まれるの?

「だったら、助けてあげるしかないじゃない」

 かなりカッコイイ。……でも、黒魔導師ではなく、正義の味方が言う言葉なのでは……。

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