第7話 特別に教えてあげるわ
十分程歩いたところで、目的地に着いた。
「さあ、着いたわよ」
着いた場所は普通の公園だった。
暗い路地裏でも怪しげな建物の中でもなく、真昼間の公園であった。しかも、子どもが何人か遊んでいる。
「……本当にここで儀式をするのか?」
「そうよ」
白鳥とおれが公園に入ったときだった。おれたちを見て、ジャングルジムで遊んでいた子どもの一人が叫んだ。
「うわっ、魔女がきたぞ!」
それって白鳥のことだよな。
それにつられて、他の子どもたちも叫び出す。
「あいつ、彼氏連れてるぞ!」
残念。おれは彼氏ではありません。
「いや、彼氏じゃなくて生け贄だろ⁉」
かなり怖い単語が聞こえた。それだけは違いますように。
「おいっ、とにかく逃げるぞ!」
その言葉を聞いた途端、公園で遊んでいた子どもたちが全員逃げ出し、おれたち二人だけが残った。
「……フフフ、私の魔力に恐れ戦いて、逃げ出したようね」
本当にそうだろうか。
「それよりも、彼らはさっき、あなたがこの私の彼氏だなんて、冗談にしてもひどすぎることを言ってくれたわ。……これも『黒歴史』に書いておくわ」
そう言って、白鳥はカバンから駅で読んでいた分厚い本を取り出し、ペンで何かを書き始めた。
「あっ、おい! いくらムシャクシャしてるからといって、本に落書きはダメだろ⁉」
「本? ……これは『黒歴史』といって、まあ、日記みたいな物よ」
へえ、日記を書くなんて意外だ。しかも名前までつけて……。
「ていうか、何で黒歴史⁉」
そのままの意味で、何かしらの黒歴史を日々記しているのだろうか。
「知りたいのかしら?」
「まあ、一応」
「では、特別に教えてあげるわ。……これは、私を怒らせた者を一人残らず呪ってやるために書いているのよ。彼らの愚行をここに書き記しておいて、一冊終わったときに一斉に呪うのよ」
なんて怖いこと考えてんだ。
「そういえば、さっきの子どもたちのことも黒歴史に書くって言ってたな。……お前、子どもまで呪う気かよ」
「もちろんよ。子どもだろうと何だろうと知ったこっちゃないわ」
「容赦なしだな」
「まあ、呪うといっても、バナナの皮で滑って転ばせ、打ちどころが悪くて骨折させるだけという可愛らしいものだけど」
可愛いのは最初だけだ。骨折なんて、とんでもない。
「……あっ、一冊終わったらって、今まで一冊終わらせたことあるのか?」
「あるわよ。過去に一度」
そのときは、呪われた人々が一斉に骨折したのだろうか。集団骨折……。もしそうだったら、ニュースになっている。
「もしかして、おれの名前も書いてあったりする?」
「もちろん。書いてあるに決まっているでしょう」
おれ、骨折させられるのかよ。絶対に避けたい。
「今すぐ、消してくれ!」
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