第3話

 家に帰ると、弟二人(小六と小三)と妹(小一)が待ち構えていた。

 そして、「お腹すいた」の大合唱を始めた。

 両親が共働きで、妹の入学式が終わると母が仕事に戻ったため、今日もおれが昼飯を作ることになっている。

「じゃあ、今日はオムレツだな」

 それを聞いた弟妹が歓声を上げる。

 小四から料理をやっているおれにとって、オムレツぐらいは余裕だ。今では、料理のレパートリーもかなり増えてきている。


 十数分後、オムレツが完成し、食卓を囲みながら、弟たちが学校のことを話し始めた。

 小六の弟、優(すぐる)が「好きな子と同じクラスになれた」とかなり喜んでいた。

 おれなんか、初対面でいきなり暴言吐くような最悪な自称黒魔導師と同じクラスになっちゃったけどね。しかも、隣の席だし。

「なあ~、兄ちゃんはどうだった? 新しいクラス」

「ああ、おれ? えーっと……。」

 白鳥美和子のことを言うべきだろうか。

「なあ、どうだったんだよ、兄ちゃん。かわいい子、いた?」

 小三の弟、勝也がピンポイントな質問をしてきた。

 確かに、白鳥は美少女なんだけど……。

「……すっごく個性的な奴はいるけど」

「どんな人なの~?」

 小一の妹、恵美も興味津津だ。

「……自分は魔法が使えるとか言ってる奴」

 黒魔術だとは伏せておこう。

「スッゴーイッ! 魔法使いさんが同じクラスにいるなんて! 私もその人に会いたーいっ!」

 呪われるかもしれないから、会わない方がいいだろう。

「マジかよっ! 兄ちゃん、スッゲーッ!」

 おれ自身は、あんまりすごくない。

「……ったく、兄ちゃんもアホだな。魔法なんてあるわけないだろ。そいつ、目立ちたいから、そう言ってるだけなんじゃね?」

 小六の優は、こういうことには、けっこう冷静だった。

 もしかしたら、それが真実かもしれない。 

 おれは、白鳥の真意を考えながら、オムレツを食った。

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