第2話

 入学式後の自己紹介コーナー。

 ここでも、彼女はかなりのインパクトをクラスメートと担任に与えた。

 彼女は、先程、おれに対しての暴言で、周りからドン引きされている。

 彼女のヤバさをクラスメート全員と担任が把握したのだ。


 彼女の名前は「白鳥 美和子」。青山東中出身で、おれとは意外と校区が近いことが判明した。てか、隣の校区だし。

 ここまでは、普通だ。……ここまでは。

 職業、黒魔導師。学生はただの副業。 

 祖母は、本場イギリスの黒魔導師で、そのクォーターである自分にも魔力はあるとのこと。

 そして、とどめにこう言い放った。

「呪われたくなかったら、私に近づかないで頂戴」

 普通、「これから仲良くして下さい」とかだろうに。真逆のことを言っている。

 これが、クラスメートをビビらせる決定打となった。 

 クラスメートどころか、担任も引いてしまったようだ。さっきから、白鳥に目を背け続けている。個人懇談の時とか、どうするのだろうか。



 その後、一通りの連絡などが終わり、下校となった。

 白鳥は、サッサと教室を出て行く。

 白鳥がサッサと出て行けるのは、クラスメートたちが白鳥を避けているからだ。……怖くて。

 特に教室に用もなかったおれもサッサと出て行った。

 まあ、結果的に、白鳥の後ろを歩くことになってしまった。

 校門を出て、数十メートル進んだところで、白鳥が突然振り向いた。

 そして、おれの顔を見ると言った。

「私の後を付いて来ないで頂戴。……あなた、ド阿呆なナンパ野郎に加え、変態ストーカーも新たな肩書きになるわよ」

 ひどい言われよう。おれは、変態でもストーカーでも、ナンパ野郎でもない。潔白なただの高校生だ。……もちろん、ドが付く程のアホでもない。

「しょうがないだろ。進む方向が同じなんだから。……てか、お前も電車通学なんだな。黒魔導師っつーから、魔法で家までビューンかと思ったぜ」

 どうだ、言い返してやった。

「優秀な黒魔導師は、そんな簡単なことに、いちいち魔力を使わないのよ。……それよりも、『お前』呼びは失礼でしょう」

 あまりにも、ひどい言われようだったので、ついムッとなって「お前」と言ってしまったのだろう。まあ、一応謝っといてやるか。

「ああ、ゴメン。……でも、君だって、おれに対してかなりひどいこと言ってない?」

 できれば、彼女にも謝ってほしい。

「あら、事実ではないの?」

 事実であるわけない。

 これ以上、話しても無駄だと思った。

「まあ、とにかく、おれは潔白だから。変態ストーカーでも、何でもなし。……それじゃ……」

 おれは、そう言うと、スタスタと白鳥を追い抜いて行った。


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