第14話 魔石光合

 訓練は続いた。


 クラウスの訓練はスパルタそのものだった。

 俺は何度も打ち据えられて、足も腕もガタガタだ。

 そんな俺を爽やかな笑顔のクラウスはこう言う。


「俺も死んだ親父に鍛えられたもんだ」


 くそっ!


 こいつに俺は一撃も与えられてない。

 そろそろ一発喰らわせてやりてぇ!


ギリリっ!


 思わず歯ぎしり。

 木剣を握る手にも力が入る。


(魔石を手に入れて魔法剣が使えるようになれば……)


 俺は叶いもしない願望を胸に宿す。


「さすがセリスだ。これだけやられても負けん気の強い目だ」


 クラウスはボコボコになった俺を見て嬉しそうだ。

 てか、あんた親なのに子供を殺す気か!


「ほら、遠慮しなくていいぞ」


(くそ)


 俺はやられてばかりだ。

 悔しい。

 汗が滴り落ちる。


(あれ?)

 

 汗が落ちた。

 地面に染み込む。


 その横に怪しく光る宝石。


(魔石!)


 クラウスが知らず知らずの内に落としたものなのか。

 どちらにしても、これは使える。


 俺は木剣を握る手に力を込めると、腰を低くした。


「せい!」


 身体を前に押し出すように踏み込む。


 地面を切り上げると同時に地面に落ちていた魔石を巻き上げる。


「いい踏み込みだ!」


 砂とともに天高く舞い上がる魔石。

 太陽に反射し怪しくきらめく。

 俺の目の前まで落ちてくる。


「来いっ……!」


 俺の呼びかけに応えるように魔石が輝いた。

 そして、魔石引き寄せられるように俺に向かってくる。

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