第13話 騎士とは

「では、やるぞ!」


 クラウスが構える。

 俺はわくわくして来た。


「こい!」


「せや!」


 俺の一撃をクラウスはスレスレでかわす。


「そや! てや!」


 俺は木剣を振り回す。

 それを、クラウスは紙一重でかわす。

 しかも涼しい顔で。


(相当な実力差だ)


 さすが。

 王宮の騎士だけだったことはある。

 当たりそうになるのをギリギリでわざとよけている。

 俺をもてあそぶかのように。


「ははは。セリス」


「何だよ!?」


「悪いが、俺は人に剣術を教えたことは無い」


「え?」


 このオッサン、今、何て言った?


 訓練の最中、まさかの告白。


 俺の驚きに構わず、俺の攻撃をよけながらクラウスは続ける。


「騎士にだって色んな奴がいる。自分は強くはないが人に教えるのがうまい奴。自ら戦わず作戦を立てるのがうまい奴。権力に媚びて逃げるのだけがうまい奴」


 俺の攻撃は激しさを増した。


 それに反比例するかのようにクラウスは余裕さを増していき、饒舌になる。


 その態度が、俺を苛立出せる。


「じゃ、パパはどんな騎士だったんだよ!?」


 俺は怒りをぶつける。

 それは父にぶつけたというよりも、一撃も攻撃を当てる事すら出来ない自分に対してだった。


「俺は、弱くて優しい騎士だ」


 え?


 どういうこと?


「あ……」



 いつの間にか俺は意識を失っていた。


「大丈夫か?」


「うん……」


 首の裏が痛い。


 どうやらクラウスの一撃で俺は伸びていた様だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る