第12話 愛

 午後になり、クラウスが帰宅した。

 ワイルドブルを十匹も担いで。


(かっこいい!)


 俺はその野性的な姿に、思わず鳥肌が立った。


 これが一流の戦士って奴かってね。

 クラウスはワイルドブルを荒々しく土間に、ドサリと置くとナタやナイフを使って解体し始めた。

 その手際はほれぼれするほどで、あっという間に十体のワイルドブルは、毛皮と肉と内臓に分かれていた。

 そして--


「ほれ。セリス。綺麗だろう。このワイルドブルが持ってた魔石」


 クラウスはまだ血の付いた魔石を俺に見せてくれた。

 妖しく輝くそれに、俺はまたも魅入られる。


「さて、あとはアイナに任せて、訓練しよう」


「う、うん!」


「あれ? そんな木剣どこで見つけた?」


「えっと、蔵の奥にあったよ」


 俺は嘘を付く。

 本当は魔法剣レベル0で召喚した木の剣だ。


「おお、そうなんだな。ま、お前の身体の大きさにはピッタリな感じだな」


 良かった。

 クラウスが大雑把で細かいこと気にしない人で。

 そういう大らかなところは、好きなところでもあるし。


「じゃ、これを着ろ」


 渡されたのは子供サイズの革の鎧。

 着用の仕方を教わりながら、ぎこちなく装着。

 この辺はゲームだとボタン一つだから、現実世界と言うのは厄介だ。


「似合な。さすが俺の息子」


 クラウスが川の鎧を着た俺を抱きしめる。

 父の愛を感じる。


「まぁ、お似合いね。セリス」


 喜びに満ちた甲高い声。

 母も俺の晴れ姿に喜んでいる。


「これ、パパが作ったの?」


「ああ。防具屋で買うと高いからな。自分でモンスターを狩り、その素材から作ってる」


 すごいな。

 何でもできる頼れる父さん。


「パパ」


「何だ?」


「ありがとう」

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