第7話 ジアトン家


 俺は何の気なしにその剣の山を眺めていた。


「外に行きたいのか? セリス」


 クラウスが俺の頭を撫でる。


「でもな、森には絶対に行っちゃ駄目だ。この辺りのモンスターは弱いとは言え、セリスを見たら食べに来るぞ」


 クラウス、今なんて言った?


(モンスター……?)


「ま、モンスターが弱いから、村もなんとか守れてる。殺せば肉を食えるし、魔石なんかも手に入れば金になる」


(魔石!)


 魔石があれば、スキルポイントを貯めて木の魔剣より強い魔法剣が手に入る。


(魔石……ほしいなあ)


「もしかして魔物が見たいのか?」


 クラウスが俺の物欲しそうな顔に反応した。

 俺はブンブン首を縦に振る。


「よっし!」


 クラウスは俺を抱いたまま、部屋の外へ連れ出した。


 俺がはじめてみた廊下。

 使われた木材は暗い茶色をしていたが、ところどころ色が抜けて古臭い。

 壁もボロボロ。


「むむっ……この屋敷も相当なあばら家だな」


 床がミシミシいう。


「セリスもよく覚えておけよ。貧乏な元騎士には金の余裕がない」


 そうだ。

 確かセリスの父は元騎士だ。

 ゲームの設定と同じだ。


 ひと先ずまとめると、ジアトン家は辺境の騎士の家系で、現当主のクラウス・ジアトンは父から屋敷と爵位を受け継いでいた?


 爵位における騎士とは一代限りと思っていたが、この世界では違うらしい。


 それが王家の騎士を辞して、この田舎村に住んでいる。


(いい匂いがしてきた)


 セリスの鼻孔を肉が焼ける匂いがくすぐった。

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