第6話 剣の山

(くそ、これじゃ、楽なレベル上げが出来ない)


 ゲームの世界と同じであるなら、効率のいいレベル上げ方法が出来たのに。

 それで楽をしてのんびり暮らしたかったのに。

 こうやって毎日、木の魔法剣を出現させてコツコツ魔力を上げるしかないのか。


「あう……」


 思うように体が動かん!

 もどかしい!

 魔力が増えたのはいい。

 早く、その剣を振り回して、実践に備えたい。

 だが、赤ん坊の身体がそれを許さない。


(今は、雌伏の時か……)


 愚直に魔力を上げる努力をしていこう。


 その時--


「セリス! おはよ!」


 部屋の扉が開かれて、体格のいい男が入って来る。


「わわ!」


 俺は慌てて魔法剣を消滅させた。


「お、今日も可愛いな」


「あう!」


「よしよし! だっこしてやる!」


 この男はセリスの父だ。

 彼の名はクラウスと言い、アイナと同い年のまだ若い男だ。


(まるで戦車の様な身体だ)


 クラウスはハッキリ言って精悍でカッコいい。

 クラウスは爽やかな笑みを浮かべ、白い歯を見せて笑う。


「今日もこの、コル村はいい感じだぞ!」


 クラウスは窓を開けた。

 パーマがかった長めの黒髪が揺れた。


(うん。今日もいい感じだ)


 美しい緑。

 優しい川のせせらぎ。

 可愛い鳥の鳴き声。

 そして、差し込む朝日。

 田舎最高!



 黒幕セリスの生まれ故郷はド田舎で、人口は三百人に満たない小さな村だ。

 コル村だ。


「あれが黒の森だぞ」


 クラウスが指さした方角には、確かに鬱蒼とした黒い森がある。


「あう」


「あの山は、剣の山だ。怖いモンスターがいるんだぞぉ」


 クラウスが大きな口を開け、俺を食べる振りをする。


「きゃううう!」


 怖がった振りをしてやると、おどけた顔で今度は笑わせようと変顔をした。


 それにしても……


 その高さはあべのハルカスくらいのだ。

 三百メートルはあるな。

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