第2話 生まれてしばらく

さらに時間が流れた。

両親の話してる内容や、周りの俺への扱いで分かって来た。


(疑いようがない。俺は転生して、セリスになったんだ)


セリスというのは主人公の友人にして『RE:ゼロ・ブレード・アーティスト・オンライン』で騒動を巻き起こし、魔王と結託までした黒幕だ。

そして最後には主人公に倒される。

極めつけは聖女を殺してしまう。


(冗談じゃないぞ。なんで俺が嫌われポジションなんだ?それはもう死亡フラグが成立のキャラだ)


「やだ!」


その日、俺は初めて言葉を発することができた。

生まれて初めての発声は両親の涙腺を刺激したようで、二人とも大泣きしていた。


「あなた、しゃべったよ。セリスがしゃべった!」

「おおそうだな!パパとかママじゃないのが残念だが……」


俺は両親を泣かすために叫んだわけじゃない。

そして、第一声がこの世界と自分を嫌悪する言葉だなんて知ったら両親は悲しむだろう。


俺はこれが現実であることを疑わぬと同時に、セリスとしてこの世界で生きていかなければならないのだ、と覚悟した。


(とにかく波風立てずに生きよう。魔王に討伐に行くなんて絶対嫌だ)


さて、それじゃあ今後のことを考えるとするか。

俺は大きく頷く。

自分がセリスなら、ゲームの彼と違う道を歩もう。


「おなかすきまちたか?」


授乳の時間だった。


母の名はアイナ。

セリスの母親だ。

アイナの顔立ちは整っていて、セリスと同じ黒髪が特徴的な女性だ。

セリスのがこの三ヶ月の間に得た情報によると、彼女はに二十歳になった。


俺は乳首に吸い付きながら考える。


アイナは良い母親だ。

優しくて温かくて。

だけど……だからこそ、彼女もいつかは死んでしまう。

ゲームでも彼女が死ぬルートはある。

確かゲーム内での彼女の死因は病死。


(身体も満足に動かせない。今はどうすることも出来ない)


赤ん坊であるこの身体がもどかしい。


今の自分にできることといえば、ただ泣くことだけ。

それが悔しくて仕方ない。


俺にはは幸いにも前世の経験と記憶がある。

この数カ月での成長は、他の赤ん坊よりも速いはずだ。

ハイハイやお座りなどをやってのけて両親を驚かせている。

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