第51話 レッツ☆パーリィ
かの有名な卒業パーティである。
学園系乙女ゲームのベタすぎるテンプレ断罪スポット。
断罪ダメ☆絶対!の合言葉も今はどこ吹く風。
それぞれの婚約者から贈られた独占欲の塊のようなドレスに身を包み、ついでに本人もガッチリ腰を抱かれ身動き出来ない状態でいた。
1ミリも心配してなかったけどこれもう絶対断罪ねぇな
とは、イザベル達四人の見解である。
「ベル、踊ろうか」
「ええ」
楽団が音楽を奏で始め、ワルツを踊る。
「ベル、綺麗だよ」
「何回目よ、それ」
「何回でも言いたい。これからも言うよ、ずっとずっとベルを見てる」
「ストーカー?」
「見守りって言って」
クスクス笑いながらくるりと回される。
「アル、誰よりも大好きよ。アルの隣に立つのはこの私。この先もずっとね。覚悟を決めさせたのはアルなんだから責任とってもらうわ」
「・・・喜んで」
ふわりと笑う微笑みの貴公子アルフレッド。
「ベル、二曲目も僕と・・・」
「イーちゃーん!!」
イザベルの背後に小さくジャンプしてしがみつくオリビア。
「踊ろう!!」
オリビアとイザベルは手を繋ぎ飛び跳ねたり回ったりとめちゃくちゃに踊る。
エリーゼもヴィオレッタも同じように踊る。
それを呆気にとられる会場。
沈黙は一瞬、ヴァイオリンがいち早く軽快な音楽を奏で始める。
それにつられ他の楽器も合わせて軽快に。
「みんなも踊るよ!!」
そう言って、パートナーがおらずダンスを見ているだけの子女たちに声をかけまくるイザベル達。
戸惑い遠慮する彼女たちを中央に引っ張り出しデタラメに踊る。
二人で、三人で、人数なんて適当に近くの人の手を取りくるくる回る。
相手も人数も適当にかえながら踊る。
男も女も爵位も何も関係ない。
今、ここで踊るのはただの18歳の同級生。
紳士?淑女?それは今はもうどっかにやっちゃって。
だってもうこんなめちゃくちゃなパーティはないよ。
今だけ、許されるのは今だけ。
だから、大きな声で笑っても大丈夫。
扇子なんて今は捨ておきなさい。
はしたなくドレスを大きくまくって大股のステップふんでも誰も何も言わない。
無礼で無秩序でやりたい放題、好き放題。
こんなパーティは多分もう一生ない。
こんなに底抜けに明るくて楽しくて、笑い声が絶えないパーティなんてない。
明日からまたそれぞれの物語に帰る。
今、この時だけはどの物語にも同じ思いを記そう。
これまでも、これからも関係ない。
この1ページだけはここで笑い踊り抱き合い飛び跳ねる皆んなのもの。
いつか、あぁそんなこともあったね、と思い出して。
辛いこともあるでしょう。
悲しいこともあるでしょう。
楽しいこともあるでしょう。
嬉しいこともあるでしょう。
この先も色んな思いをすることでしょう。
泣いて笑ってまた泣いて、悩んで落ち込んで諦めて、歩いて立ち止まって振り返ってまた歩く。たまに走って疲れて座り込む。それでも立ってまた歩む。
夜が更けていく。
そしてまた陽が昇る。
« おしまい »
読んでくださりありがとうございました。
もっと色々(レオナルドのストーカー被害とか)あったのですが、蛇足になるなぁと削りまくりました。
乙女ゲームのエンディングといえばこういうパーティなのかな?と思い、ゲームと同じようにここでおしまいにしました。
少しでも気に入る場面があったならとても嬉しいです。
本当にありがとうございました^^*
悪役令嬢の猫かぶり 谷絵 ちぐり @rakssf5886
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