第50話 過ぎたる日々は走馬灯の如し

例えばそう、日めくりカレンダーが一枚一枚ちぎれて飛んでいく様を想像してほしい。

その背景には各々思い描く春夏秋冬を思い浮かべてほしい。


そうそこには、

同盟国で起きた婚約破棄事件に巻き込まれに突進したイザベル。

初夜を待てずに押せ押せのノクトに負けたヴィオレッタ。

夕方の湖畔で魔術の蝶をハルバードにたくさん飛ばしてもらって嬉しそうなエリーゼ。

剣術大会で準優勝して落ち込むカーティスを慰めるオリビア。

ジェフリーをハイヒールで踏みながら恍惚の表情のリルーシェ。

友人ができて嬉しそうにお茶を楽しむピンク。

赤ちゃんの産着を縫うお姉ちゃん先生、の隣で名前を考えるシム。

学園でイザベルに膝枕をしてもらい見せつけるのに成功したアルフレッド。

オリビアを子供のように抱き上げ見つめあい笑い合うカーティス。

ソファで眠ってしまったヴィオレッタに肩を貸すノクト。

ミスル広場でホットチョコレートを飲みヒゲが出来たエリーゼを見て笑うハルバード。


なんでもない日常が積み重なっていく。

積み重なったそれを人は幸せというのだろう。


そして──


「ベル、綺麗だよ」

アルフレッドはイザベルの頬にそっと手のひらを寄せる。

「アル・・・今はあっち見ろ!!」


タミン村の小さな教会。

幸せそうな二人。

新郎は新婦を横抱きに抱える。

花道には子供たち。

フラワーシャワー。

魔術で出来た美しい蝶たち。


「アーリン!!おめでとう!!」

「おめでとう!!」

「まさかアーリンが一番に結婚するとは・・・」

「ジャンやるジャン」

「レッタンそれ言いたいだけやろ」


空は快晴。

風はささやかに。

足元の野花は満開に。


「アーリン幸せそう」

「そうじゃなくて幸せでしょ」

「あの顔そのうち溶けるんちゃう」

「溶けるのはジャンもでしょ」


みんな笑顔。

とびっきりの笑顔。

寄り添う二人に最高の祝福を!



それは見たこともないくらいキラキラのスチル。

最高の一枚。


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