第49話 黄昏の空に
突然だが収穫祭である。
そう、大地の神やら天候の女神やらに今年も豊作でした、来年もひとつよろしくというアレだ。
城下では祭りが開かれミスル通りは馬車禁止になり歩行者天国となっている。
たくさんの屋台が軒を連ね、食べ物や工芸品、アクセサリーや骨董品が通りにズラリと並ぶ様は壮観であった。
イザベル&アルフレッドペアはこの通りを手を繋いで歩く。
おわかりだろうか?デートである。
あれが食べたい、これも食べたい、はんぶんこしよう、等々どこからどう見ても仲睦まじい二人であった。
「あ、オンちゃんだ」
広場のベンチにはカーティスの膝に座るオリビアがいた。
後ろから抱き抱えるようにして座るオリビアになにか食べさせている。
二人羽織かよ。
「あれはベビーカステラかしら?」
「・・・ベル」
「乗りません」
「なんで!?」
「よそはよそ、うちはうちです。だいたい二人きりの時はアルの好きにさせてるでしょうに」
「見せつけたいんだよ!」
「知らん!!」
ぐいぐいと手を引き歩くイザベル。
ったくこの男は!と思いながら行先もわからずどんどん歩く。
アルフレッドはただついて行くだけである。歩きながらふと道の向かい側を見ると見知った顔があった。
「お、ノクトだ」
え?とイザベルも足を止めて目線の先を見る。そこには、屋台のアクセサリーを見るノクトとヴィオレッタの姿があった。
ノクトはヴィオレッタの腰に手を回し、半ば後ろから抱きしめるようにしてヴィオレッタが手に持ったブレスレットを見ている。
ヴィオレッタも体を預け、耳元で何事か囁いている言葉に笑っている。
「ノッくんって意外とグイグイいくよね」
「・・・ノッくん」
「アル、私も今日の記念になるようなもの欲しい」
「ごまかしたね?」
「いいじゃない。呼びやすくしたって」
イザベルは気まずさからか口を尖らせ俯いた。
え?なんか拗ねてる?なにそれかーわーいーいー!よし、もう祭りに用はないだろう。連れて帰ろう。そして、膝に乗せたり食べさせたり、あれやこれやしよう。うんそうしようそれがいいうん。※この間0.2秒
「ベル、かえ「あー、イーちゃんじゃん」ろう」
「エリちゃん!わぁ偶然!」
両手でタッチして、そのまま手を握り小さくジャンプする二人。
なに食べた?どれが美味しかった?等々、楽しそうに話す二人・・・を見つめる男二人。
「あ、イヤリング可愛い」
「買ってもらっちゃった」
えへへと笑う耳元にはクリップ型のすみれのような花のイヤリング。一見ピアスに見えるそれはこの世界では珍しく可憐で愛らしい。
「ベルも欲しい?」
そっと歩み寄るアルフレッドを見上げ頷くイザベル。
あっちの店だよ、とエリーゼに教えてもらい別れる四人。
待っててくれてありがとう、とエリーゼはハルバードの手を握る。
見上げるエリーゼによしよしと頭を撫で、じゃあな、と去っていく二人。
教えてもらった店でイザベルは金の縁どりがある青い星型のイヤリングを買ってもらった。
「私には可愛すぎないかな」
「よく似合ってるよ」
照れるイザベルに相好を崩すアルフレッド。
陽が傾き街が橙色に染まっていく。
「そろそろ帰ろう」
四組の恋人達は頬を染め、腕を絡め手を繋ぎ見つめあい笑いながらそれぞれの家路へと向かう。
来年もまた一緒に来ようね。
思うことは皆同じである。
────────アオハルかよ
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