第47話 らんらら

学園では今、まことしやかに流れている噂がある。


「王子殿下の婚約者が下級生の女生徒を苛めている」

「王子殿下の婚約者の取り巻きも一緒になって苛めている」

「嫌がる女生徒の腕を掴み廊下を引きずるようにして歩いていた」

「人気のないダンスホールに連れ込んで暴力をふるっている」



イザベル達は純粋に感心していた。

ヒロイン(っぽいなにか)を苛める悪役令嬢な自分達が出来上がっている。

これが強制力というものなら、乙女ゲーパねぇっす、と。

とはいうものの、あれにはお仕置きをしなければならない。

学園の品位を落としかねないパンツの芽は早々に摘んでおいて損はないだろう。

最初は逃げていたローラも今ではすっかり大人しくなっている。


曰く、マナー講師に初めて褒められた

曰く、小テストで良い点数がとれた


恥ずかしそうに嬉しそうに話すローラは子どものようであった。

少しずつ教養を身につけたローラはリルーシェに詫びた。


「あなたのおかげで可愛いペットを飼うことが出来たのよ。こちらこそありがとう」


謎の感謝をされローラは首を捻ったがイザベルが


「世の中には知らなくていいこともあるのよ」


と言うので、そういうものかとあっさり納得した。


イザベル達から教えを乞うてからもうすぐ二ヶ月。


「見られてるからやるんじゃないのよ。見せてやってると思って立ち居振る舞いなさい」

「自分の心を満たしたいなら、自分に自信をつけなさい」

「必要ない知識なんてない。いつか役にたつと思って蓄えなさい」

「いい女は一生を望まれるの。可愛いい女は一瞬しか望まれないの。あなたはどっちがいい?」

「可愛い女が武器という名の教養を持てばそれは最強だと思わない?」


どうしてこんな自分に良くしてくれるのか?とローラは問うた。

嫌がらせのつもりなんだけど、と笑われた。


「これからどうしたい?」


そう問われ、ローラはそんなの決まってるという顔で


「勉強します」


と、微笑んだ。そして、カーテシーをし50点と言われるのだった。


噂はローラが火消しに奔走し、下火になった。再教育の理由も明かし、迷惑をかけたであろう令嬢令息には真摯に詫びた。


そして、ローラは言うのだ。


「姫姉様と呼んでもいいですか?」


「・・・・・・(ナ〇〇カじゃねぇから)」


苛められていた令嬢が、苛めていた令嬢に懐くという前代未聞の前に下火になった噂は完全に消えた。


そして、姫姉様と呼ばれたくないイザベル達はローラへの嫌がらせもとい再教育を終えた。


季節はもう秋になろうとしていた。



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