第41話 いちご100%は諦めない

二年に進級したイザベル達のランチタイムはそれぞれ恋人同士で食べる、と決まっていた。彼氏達が強くそれはもう強く熱く二人で食べるランチタイムの重要性を語った。

一種異様な熱量に彼女達は


「お、おう・・・」


としか言えなかった。

ちなみに彼らの『あーん成功率』は三割程である。このことに対してもいかに『あーん』が仲を深めるのに重要かという阿呆な熱弁を振るったが


「あーんばっかしてたら自分が食べられないでしょ」


という至極真っ当な彼女らの返答に呆気なく撃沈した。


そんな訳である日のランチタイム──


中庭のベンチに座り食事をするのはイザベル&アルフレッドペアである。

仲良くイザベルお手製ランチを食べていると、こんなことある?と言いたくなるくらい目の前でピンク頭の少女が転んだ。オノマトペがつくなら、ずべしゃっである。ピンク頭のスカートは捲れあがりいちご柄のパンツが丸見えであった。

あれはレッタンとこの商品だわ、お買いあげありがとうございます、とイザベルは心中で頭を下げた。

ちらりと隣を見るとアルフレッドがパンツを凝視していた。

まぁ年頃だしね、と思いながら


「あなた、大丈夫?」


と声をかけるイザベル。

返事がない。屍のようだ。


「ベル!」

「見せません」

「まだなにも言ってない!」

「言わなくてもわかります」


なぜ見せてもらえると思ったのか。


「きゃあ!私ったら恥ずかしい!」


唐突にピンク頭が生き返った、が起きずにへたりこんで瞳をうるうるさせてアルフレッドを見ている。

アルフレッドは瞳をうるうるさせてイザベルを見ている。


「ベルと僕は以心伝心♡だね」


なぜこの状況でそんなことが言えるのか。



またある日の放課後──


下校の為に廊下を歩くのはヴィオレッタ&ノクトペアである。

角を曲がると同時にノクトに突撃してきたピンク頭の少女がいた。出会い頭というやつである。

ピンク頭は見事にひっくり返りスカートが捲れあがりいちご柄のパンツが丸見えになっていた。

あら、うちの商品お買い上げありがとうございますとヴィオレッタは心中で頭を下げた。


「ヴィオ・・・」

「見せません」

「なぜ?」


なんで見せてもらえると思ったのか。


「あなた、大丈夫?」

「・・・・・・・・・」

「君、大丈夫かい?」

「はい、ぶつかっちゃってごめんなさい」


ピンク頭は瞳をうるうるさせてノクトを見ている。


「そう、大丈夫なんだね」


そう言うとノクトはヴィオレッタの手を引いてその場を去った。



これまたある日の昼休憩終わり──


淑女科の教室に向かうのはエリーゼ&ハルバードペアである。

階段を昇ろうとすると踊り場から、親方!空から女の子が!という台詞が聞こえそうな勢いでピンク頭が降ってきた。

が、ハルバードがすぐさま風魔法で包みふわりと降ろしてやった。その際、風でスカートが捲り上がりいちご柄のパンツが見えた。

あら、レッタンとこのお買い上げありがとうございますとエリーゼは心中頭を下げた。


「エリー」

「見せません」

「そのうち見せてね」


そのうちとはどのうちなのか、なぜ今見せてもらえると思ったのか。

二人はピンク頭を気にも止めず階段を昇っていった。



はたまたある日の食堂──


食堂で食事をしているのはオリビア&カーティスペアである。

食事も終わり、さぁ食後のお茶でも、とその瞬間オリビアのすぐそばでピンク頭がすっ転んだ。やはり、スカートが捲れあがりいちご柄のパンツが見えていた。

あ、レッタンのパンツ!お買い上げありがとうございますとオリビアは心中頭を下げた。


「ひどいです!どうして足をひっかけたんですか?」


ピンク頭が瞳をうるうるさせて見上げている。


「君が転ぶほんの一瞬前に俺がリビィを膝に乗せたからリビィが引っかけるのは無理だよ」


ピンク頭は顔を真っ赤にして走って逃げていった。


「・・・なんなの?あれ」

「リビィ」

「見せません」


どいつもこいつもなぜ見せてもらえると思ったのか。



この一連の事件についてイザベル達は考える。

ピンク頭は一体なんなのか。

なぜ毎回パンツを見せるのか。

ラッキーすけべの世界から来た転移者なのか。

考えてもわからないので、極力関わらない方向でいこう、そう結論付けた。


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